2018年07月06日

 

2018.7.6

前田 高行

 

1.ソブリン格付けについて

ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。

 

このようなリスク情報を提供しているのが格付け会社であり、全世界には多数の格付け会社があるが、その代表的なものはStandard & Poors(S&P)Moody’s 及びFitchRatingの3社である。格付け3社はそれぞれ独自の格付け記号を用いており、S&Pでは最上位のAAAから最下位のCまで9つのカテゴリーに分けている。これら9段階のうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」と呼ばれている。なおAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている。カテゴリーごとに詳細な定義が定められているが、S&Pの定義では最上位のAAAは「債務を履行する能力が極めて高い」とされ、一方最も低いCは「債務者は現時点で脆弱であり、その債務の履行は良好な事業環境、財務状況、及び経済状況に依存している」である。

S&Pの格付け定義については下記参照:

http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-02.pdf

 

本レポートは3社の中で最もよく知られているS&Pのソブリン格付けに基づき、日米欧の先進国の他、中国、ブラジル、ロシアなどの新興国並びにMENA諸国および主要な発展途上国を取り上げた。レポートは毎年1月1日または71日時点の格付け状況について前回の格付けと比較しており、今回は2018年7月1日現在の格付けを取り上げて各国を横並びで比較し、同時に各国ごとに前回(2018年1月1日)の格付けと比較して半年の間のソブリン格付けの変化の状況を解説する。またGCC6か国及び日本、米国、英、独、ロシアなど世界9か国について2015年7月以降の3年間にわたる格付けの推移を比較している。

 

*これまでのレポートは下記ホームページ参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/SovereignRating.html 

 

(続く)

 

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        前田 高行         183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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2018年07月05日

MENAなんでもランキング・シリーズ その4)

 

2018.7.5

前田 高行

 

2.FDIアウトバウンド(FDI Outflows, 対外直接投資)

(1)2017年のFDI outflows(FDIアウトバウンド) 

(前年に比べ大幅に減少したMENAからの投資!)

a)MENA各国の対外直接投資

(http://menarank.maeda1.jp/4-T03.pdf 参照)

 2017年のMENA各国のFDIアウトバウンド(FDI outflows)の総額は409億ドルであり、同年の全世界の合計額1兆4,300億ドルに占める割合は2.9%であった。これはFDIインバウンド(FDI Inflows、第1項参照)の世界全体に占める割合4.3%よりかなり低い。因みに日本、米国、中国の投資額はそれぞれ1,605億ドル、3,423億ドル及び1,246億ドルであり、米国一国でMENA投資額の8倍、日本は4倍、中国は3倍である。

 

 国別では、UAEが140億ドルと最も多く、UAE1カ国でMENA全体の3分のⅠを占めている。次いでクウェイト81億ドル、イスラエル63億ドル、サウジアラビア56億ドルであり、以上の国々は対外投資が50億ドルを超えている。これら4カ国のうちイスラエルとサウジアラビアは前年に比し大幅に減少しており、イスラエルの場合は2016年の131億ドルから半減している。同国はFDIインバウンドが大幅に伸びており(前記1-()参照)対照的である。これに対してサウジアラビアはインバウンド、アウトバウンドともに大きく減少しており、2017年はFDIが極めて低調であったことを示している。

 

第5位以下の各国は上位4カ国と大きな開きがありトルコが26億ドル、カタールは17億ドルでありその他のエジプトなどはいずれも10億ドル未満である。各国の投資額は以下の通り。

モロッコ(9.6億ドル)、レバノン(5.7億ドル)、オマーン(4.0億ドル)、バハレーン(2.3億ドル)、エジプト(2.0億ドル)、リビア(1.1憶ドル)。 イラク、チュニジア、ヨルダン、イエメン、イラン各国はいずれも1億ドル未満である。シリアはデータが示されていない。

 

(続く)

 

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2018年07月04日

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2018年07月03日

MENAなんでもランキング・シリーズ その4)

 

2018.7.3.

前田 高行

 

 () 2012-2017年のFDIインバウンドの推移(続き)

(急増するイスラエル、急落するサウジアラビア!)

b)主要6カ国の動向

(http://menarank.maeda1.jp/4-G01.pdf 参照)

2012年から2017年までの過去6年間のFDIインバウンドについてサウジアラビア、トルコ、イスラエル、イラン、エジプト及びイラク6カ国の推移を見ると以下のような特徴を指摘することが出来る。

 

2012年のFDIインバウンドはそれぞれトルコ(137億ドル)、サウジアラビア(122億ドル)、イスラエル(90億ドル)、エジプト(60億ドル)、イラン(47億ドル)、イラク(34億ドル)であり、サウジアラビアとトルコが100億ドルを超え、エジプト、イラン、イラクが50億ドル前後で競い合う状況であった。その後トルコは6年間を通じてコンスタントに100億ドル台のFDIインバウンドがあったが、サウジアラビアは2012年をピークに長期低落傾向にあり、特に2017年は14億ドルにとどまり2012年の1割強にまで急落している。同国は石油依存経済からの脱却を目指しビジョン2030政策を掲げて外国の資本と技術の導入を促しているが、掛け声とは裏腹にFDIインバウンドが急減している。

 

これに対してイスラエルは2014年の60億ドルを底にその後は113億ドル(2015年)→119億ドル(2016年)→190億ドル(2017年)と3年連続して増加、トルコを抜いてMENAのトップに立っている。エジプトは「アラブの春」騒乱を切り抜け2015年以降は70~80億ドルの外国からの直接投資が流入している。

 

 2012年に47億ドルであったイランのFDIインバウンド額は2014年、15年は21億ドルにとどまった。しかしその後は緩やかに増加しており2017年には50億ドルと過去6年間でもっとも高い流入額を記録している。欧米諸国との核合意による経済制裁解除の成果と考えられる。但し最近米国が核合意から離脱し、イラン原油の輸入停止を各国に求める強硬姿勢に転じたため当面の見通しはかなり暗そうである。

 

イラクの場合は、2013年以降昨年までの5年間のFDIインバウンドは外国投資の還流が止まず、2014年の、マイナス100億ドルを筆頭に毎年多額の外国投資が引き上げる状況が続いている。ただ2014年を底に金額幅は縮小しており、国内の治安回復というプラス要因もあるためイラクへのFDIインバウンドは近い将来プラスに転じるものと予測される。

 

(続く)

 

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