2017年03月10日

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0402MenaRank14.pdf

MENAなんでもランキング・シリーズ その14)

 

 

2.MENA諸国のCPI指数と順位

(表http://menarank.maeda1.jp/14-T01.pdf 参照)

 2016年度の腐敗認識指数はMENA諸国ではパレスチナ自治政府を除く19カ国が評価対象となっている。最も腐敗度が低いと評価されたのはUAEであり、同国のCPI指数は66、世界順位は24位である。これは日本(CPI指数72、世界順位20位)、米国(同、74、18位)より若干低いランクである。

 

UAEに次ぐMENA第2位はイスラエル(CPI指数64、世界順位28位)、3位はカタール(同61、31位)である。これら3か国より少し順位が下がるのは、ヨルダン(同48、57位)、サウジアラビア(同46、62位)及びオマーン(同45、64位)の国々である。その他CPI指数が40台前半で世界順位の70位台にバハレーン、クウェイト、チュニジア、トルコの4カ国があり、これら10カ国が世界の上位グループに入っている。

 

MENA11位はモロッコでCPI指数37、世界順位90位、MENA12位以下の8カ国は世界100位以下である。特にリビア、イエメン(CPI指数14、世界170位)及びシリア(同13、173位)は世界176カ国中の最下位グループに位置している。

 

MENA1位のUAEを含めMENA上位8カ国のうちイスラエル(MENA2位)を除く7カ国はいずれも絶対君主制(王制、首長制あるいはスルタン制)国家である。さらに7か国中ヨルダンを除く6か国はGCC(湾岸協力機構)を構成するアラビア湾岸諸国である。このことからMENAでは絶対君主制国家が清潔であり、共和制国家が腐敗しているということが言えよう。CPIレポートは「貧困と腐敗の間には強い相関関係がある」と指摘しており、上位にUAE、カタールなどのGCC産油国或いは経済力の強いイスラエルが並んでいることはレポートの指摘を裏付けている。

 

CPI指数及び世界順位を昨年のそれと比較すると、指数がアップした国は5カ国(イスラエル、チュニジア、イラン、イラク及びモロッコ)であり、オマーンおよびレバノンは昨年と変化はなかった。しかしこれら7か国を除く12カ国のCPI指数は下落しており、特にカタールは10ポイントも下がり、クウェイト及びバハレーンも8ポイント低下するなどGCC諸国は軒並み指数が下がり腐敗度が上がっていると評価されている。

 

更に世界順位を昨年と比較すると順位が上昇したのはイスラエル(32位→28位)及びチュニジア(76位→75位)の2カ国にとどまり、他の17カ国は昨年より順位が下がっている。特に大きく順位を下げたのはバハレーン、クウェイト、アルジェリア及びエジプトの4カ国であり、これらの国々はいずれも前年より20位も下落している。またシリア、イエメン、サウジアラビアなども順位が二桁以上下落している。

 

MENAの平均値で見るとCPI指数は40から38に、また世界順位は85位から95位に落ちている。このことからMENA諸国は腐敗度が昨年より高まっていることがわかる。そして世界順位の下落幅が大きいことは、MENAの腐敗の度合いが世界の他の地域に比べて大きくなっていることを示している。

 

 因みに世界でCPI指数が最も高い国(即ち腐敗度が最も低いとされた国)はデンマークでそのCPI指数は90である。また日本(CPI指数72、世界20位)及び米国(同74、18位)は既に述べたとおりMENAトップのUAEよりも高い。そして中国はCPI指数40、世界順位79位であり、トルコ、チュニジアあるいはクウェイトとほぼ同じレベルである。

 

(続く)

 

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201738

荒葉 一也


SaudiAramco

 サウジアラビア国営石油会社サウジ・アラムコ社のIPO(株式公開)が山場を迎えている。サウジ政府は来年2018年後半の上場を目指してアドバイザーの選任、海外証券市場の選定、上場に必要な資料作成などに忙殺されているようである。しかしながら最近になって上場の条件をクリアすることの難しさが浮き彫りにされつつある。また株式の5%上場により1千億ドルが得られると目論んだ皮算用に対して、サウジが見積もるアラムコの企業価値2兆ドルは高すぎるとする欧米金融機関も現れた。さらにアラムコと政府との特殊な関係を清算し、欧米における通常の企業上場基準を満たすことは容易なことではない、との懸念も表明され、アラムコの上場に黄信号が灯り始めた。

 

企業価値2兆ドル説の根拠

 そもそもアラムコの企業価値を2兆ドルと言い出したのはムハンマド副皇太子(サルマン国王の息子)であり、2016年1月の英Economistのインタビューにおいてであった。サウジアラビアの石油可採埋蔵量は2,666億バレルであり[1]、これに埋蔵量評価の指標価格とされるバレル当たりの8ドルを掛けると2兆ドル強になることが計算根拠とされる。アラムコはサウジアラビア唯一の石油開発企業であることから、同国にある埋蔵石油の評価額は即ちアラムコの企業価値になるという理屈である。埋蔵量については現在米国のBaker Hughes社に評価を委託中と伝えられている[2]

 

上場石油企業としては世界最大のExxonMobilの時価総額は約3,400億ドルであり(今年2月現在)、2兆ドルの6分の1にすぎない。企業価値と時価総額は意味が異なるにしても市場関係者はアラムコ2兆ドル説に疑問を呈しており、Wood Mackenzie社はアラムコの中核ビジネスの価値は概算4千億ドルとの見解を示している。サウジ政府内の関係者ですらアラムコの企業価値は5千億ドル程度と考える者もいるのである[3]

 

国営企業なるが故の不透明な財務内容と高い税率

 アラムコは米国の石油企業によって1933年に設立され、その後1980年に完全国有化された。油田管理技術或いは人事などの事務管理は米国の流儀が浸透し透明性が高く外国からも高い評価を受けている。しかし経理面では不透明な部分が多く財務内容もほとんど明らかにされていない。また石油がサウジアラビアの唯一最大の収入源であることもあり、アラムコの税率は85%という高率である。さらにアラムコが有能な人材と効率的な経営ノウハウ及び豊富な資金力を抱えていることに目をつけ、政府は同社に対して石油の開発生産・精製以外の分野への関与を求めている。それは石油化学のような下流部門にとどまらず、アブダッラー前国王の時代にはサッカースタジアムの建設まで押し付けられている。また石油の歳入の一部が密かにサウド家の王室費或いは王族の費用に回されているという噂も絶えない。

 

 このような財務の不透明性或いは民間企業とかけ離れた税制はアラムコ上場前に投資家に対して説明責任を果たさなければならない。海外の株式市場に上場することを念頭に置いているだけになおさらである。

 

 サウジ政府もこれら海外金融機関・投資家の疑問に答える姿勢を示しており、今年中に同社初の四半期決算財務報告書を作成、来年のIPO実施時に公表するとしている[4]。またアラムコの内部アドバイザーとしてすでに選定済みのJPMorgan及びMichael Kleinに加えニューヨークの投資顧問会社Moelis & Co.を指名している。そしてGoldman Sachs, Morgan Stanley, HSBC()及びCredit Suisseの4行にIPOのアドバイザー役を求めている。IPOの引受銀行団は近く固まる見通しである[5]

 

いつ、どこで?-IPOの時期と上場証券市場

 IPOの時期は今のところ2018年後半とされているが、投資家の疑問解消にはなお数多くの問題が残されている。特に現在の税制ではキャッシュフローに問題が残るとの懸念は強く、来年中のIPOは無理ではないかとも言われている。

 

 またIPOはサウジ国内市場(Tadawul)のほか、海外の有力証券市場にも同時に上場されることになっているが、その対象としてはニューヨーク、ロンドンの他、カナダのトロント、さらにはアジアの市場として香港、シンガポール、上海及び東京が取沙汰されている。すでに東京証券取引所を傘下に置く日本取引所グループの幹部は上場誘致のためサウジアラビアを訪問している。

 

 しかしサウジ政府は欧米3市場のいずれか、中でもニューヨークでの上場を本命とし、アジア市場はあくまで当て馬と考えている模様で、しかもアジア4市場の中でも国際企業の少ない東京市場は可能性が薄いようである[6]。ただ昨年米国議会は911テロ事件に関して米国民が直接サウジアラビア政府を訴えることができるとするいわゆるJASTA法を可決しており、これに対抗してサウジアラビアは大量に保有している米国政府債の売却をちらつかせるなど、両国は緊張関係にあるため、アラムコのニューヨーク上場も紆余曲折がありそうである。

 

東証上場問題はさておきサウジ政府は日本の豊富な投資資金には魅力があり、昨年6月に北京で開かれたG20エネルギー大臣会合でFalihエネルギー相はアラムコIPOに日本からの投資を期待していると語っている[7]。一方日本側も低金利政策で海外での有利な運用先を物色中の個人や機関投資家はアラムコのIPOを注視している。

 

これに対して欧米の金融機関はアラムコIPOを冷めた目で見ておりExxonMobil等の石油株を保有するAllianz Global Investorsは、政府に近すぎる企業への投資は魅力が乏しい、としてIPOでの株式購入に消極的である。なお日本政府関係者も日本はサウジと合弁事業などの経済技術協力に重点を置いており、公的資金によるアラムコへの投資は考えていないと語っている[8]

 

 

 今月14日から3日間の予定でサルマン国王が来日するが、国王がアラムコIPOへの投資に言及するのか、さらには随行する要人が金融機関に直接働きかけるのか、その成り行きが注目される。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

       荒葉一也

       E-mail; areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

       携帯; 090-9157-3642



[1] BP Statistical Review of World Energy 2016年版による。

http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-T01.pdf 

[2] ‘Saudi Aramco selects US firms to audit reserves for IPO’ by The Peninsula on 2017/1/26

http://www.thepeninsulaqatar.com/article/26/01/2017/Saudi-Aramco-selects-US-firms-to-audit-reserves-for-IPO

[3] ‘$2tr Aramco vision runs into market reality’ by Gulf News on 2017/2/26

http://gulfnews.com/business/economy/saudi-arabia-2tr-aramco-vision-runs-into-market-reality-1.1984671

[4] ‘A giant IPO on track’ by Arab News on 2017/2/19

http://www.arabnews.com/node/1056341/business-economy

[6] 同上



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