2018年10月26日
2018年10月25日
(世界の大半の地域と国で下方修正された成長率!)
2.前回(2018年4月)と今回(2018年10月)の比較
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)
(1) 世界および主要地域・国
上述のとおり今回(WEO2018Oct)の全世界の成長率見通しは今年(2018年)、来年(2019年)共に3.7%である。これに対して前回(WEO2018Apr)の見通しでは両年の成長率は共に3.9%であり、両年とも前回より0.2%下方修正されている。
2018年の見通しについて国・地域毎に前回と比較すると、国別では日本が0.1%下方修正され1.1%の成長率が達成されると見ている。このほかドイツ、インド、韓国の各国もいずれも下方修正されている。特にドイツは2.5%→1.9%と大幅にダウンすると見られている。米国、中国及びロシアは4月の見通しを踏襲している。
来年2019年の予測については全世界の成長率は4月の予測から0.3%下方修正して3.7%とされており、日本の場合は0.9%で変わりがない。中国は6.4%→6.2%と成長率の鈍化を予測している。インド、韓国も前回の予測より0.3%下方修正している。米国経済は先進国の中で例外的に高い経済成長率を保っているが、来年の見通しについては4月の+2.7%が今回は+2.5%に下方修正している。
(2)MENA諸国
MENA地域の今年の成長率は前回(4月)の3.2%に対し、今回は2.4%とIMFでは減速するとみなしている。国別に見ると今年の成長率を前回より下方修正した国が多くを占めている。下方修正した主な国はリビア(16.4%→10.9%)、イラン(3.1%→▲1.5%)である。リビアは内戦で経済が疲弊しており、毎年4月の予想では年内の回復を見込、高めの成長率を想定しているが、10月には混乱状態が収束しない実態を考慮して成長率を下方修正するサイクルが繰り返されている。イランは米国の経済制裁が強化されたため4月の段階ですでに成長率が低めに抑えられていたが、米国が11月から石油輸出の全面禁輸を打ち出し、日本を含めほとんどすべての国がイランからの原油輸入を手控える様相であり、イランの命運を握る原油輸出が急減、経済の低迷が避けられない情勢である。そのため成長率は4月のプラス3.1%から今回はマイナス1.5%に大きく悪化している。またリビアと同様国内経済が混乱しているイラク(4.0%→1.5%)、イエメン(▲0.5%→▲2.6%)なども今年度の成長率が下方修正されている。
来年(2019年)の成長率予測を今回と前回で比較すると、上方修正された国と下方修正された国がほぼ同数である。但し下方修正された国々には下げ幅の大きな国が多く、従ってMENA平均では来年の成長率予測は前回4月の3.6%から今回10月は2.7%に低下している。成長率が大きく下方修正されたのはイラン(4.9%→▲3.6%)トルコ(4.0%→0.4%)などがある。
(続く)
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前田 高行 〒183-0027
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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2018年10月24日
2018年10月22日
IMF(国際通貨基金)では毎年4月および10月に世界各国の経済見通し「World Economic Outlook Database (WEO)」を発表しており、今年10月版(以下WEO2018Oct)がインターネット上に公開された。
*URL:
https://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2018/02/weodata/index.aspx
この中にはGDP成長率、ドル建て・各国通貨建てのGDP金額、一人当たりGDP、貿易額、財政収支など数多くのデータがあり、特に当年度或いは次年度の経済成長率は官庁、メディア等々で広く引用されている。
ここでは2016年から2020年(予測)までのGDP総額及び一人当たりGDP(いずれもcurrent price, ドル建て)を取り上げ、また成長率については前回の2018年4月版(以下WEO2018Apr)と比較して世界主要国およびMENA諸国の経済状況の変化を検証する。
(世界平均を下回るMENAの成長率!)
1.2018/19年の経済成長率
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)
(1) 世界および主要地域・国の経済成長率
IMFは今年(2018年)の世界の経済成長率を3.7%と見ており、来年(2019年)も今年と同じ3.7%と予測している。地域別に見るとASEAN5か国は今年の5.3%から来年は5.2%とやや下向く見通しであり、EUも同じく今年の2.2%が来年は2.0%に低下する見通しである。
国別に見ると今年より来年の成長率の低い国が多く、日本は1.1%→0.9%、米国は2.9%→2.5%といずれも0.2~0.4%低下し、中国は6%台の高い成長率を維持するものの今年の6.6%に対し来年は6.2%に低下する見通しである。これに対してインドは今年の成長率は7.3%であるが、来年はさらに高い7.4%と予測している。
(2)MENA諸国の経済成長率
IMFによればMENA(中東北アフリカ地域)の成長率は今年の2.4%に対し来年は2.7%に上昇すると見込まれているが、両年とも世界平均の成長率を1%以上下回っている。国別にみると今年はイラン(-1.5%)とイエメン(-2.6%)がマイナス成長率であるが、それ以外の国はいずれもプラス成長と見込まれている(シリアはデータなし)。
各国の中でリビアの今年の成長率は10.9%と際立って高い。但し同国の経済成長見通しは毎回大きく上下に振れ、同国のGDPを左右する石油の生産量が内戦状況で大きく低下しているため、二桁成長が可能か否かは疑問である。
MENAの大国であるトルコ、イランおよびエジプトの今年・来年の成長率はトルコが3.5%→0.4%と大きく低下し、またイランは-1.5%→-3.6%とマイナス成長がさらに悪化する見通しである。これに対してエジプトは5.3%→5.5%とかなり高い成長が持続すると見込まれている。トルコとエジプトの今年の成長率はMENA平均(2.4%)を上回っており、来年はトルコが減速、エジプトは好調を続けるものと見込んでいる。
歳入のほとんどを石油・天然ガスに依存しているGCC諸国は今年の成長率がUAE 2.9%、カタール2.7%、クウェイト2.3%、サウジアラビア2.2%といずれも2%台の成長率である(オマーンは1.9%、バハレーンは3.2%)。GCC6カ国の平均2.5%でありMENA平均(2.4%)とほぼ同じ水準である。2019年についてバハレーンを除く5カ国は今年を上回る成長率が見込まれており、6カ国平均は2.5%→3.4%に改善する見込みである。
(続く)
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