2007年03月

2007年03月30日

第1回:「リヤド宣言」がサウジアラビア、イスラエル及び米国にもたらすもの

arabsummit.jpg 3月28, 29の二日間にわたりサウジアラビアの首都リヤドでアラブ連盟加盟国の首脳会議(アラブ・サミット)が開催された。アラブ連盟は第二次大戦直後の1945年にエジプト、サウジアラビアなど6カ国により結成されたが、現在の加盟国は中東・北アフリカの22カ国に及んでいる。

 今回の第19回アラブ・サミットはリビアを除く(*)21カ国が参加、ムバラク・エジプト大統領、アサド・シリア大統領、タラバーニ・イラク大統領、アブダッラー・ヨルダン国王、アッバース・パレスチナPA議長を初め22か国中の18カ国は国家元首自身が出席した。また潘国連事務総長、パキスタン大統領、ソラナ・EU上級代表などが来賓として参加し、議長は主催国サウジアラビアのアブダッラー国王が務めた。

 現在アラブ連盟が域内に抱えている問題としては次の四つを上げることができる。
(1)1967年の第三次中東戦争(いわゆる6日戦争)以降解決の兆しが見えない中東和平問題、
(2)米軍の駐留が長期化し、シーア派・スンニ派間の宗教抗争も激化して混迷を深めるイラク問題、
(3)レバノンにおけるハリリ大統領暗殺事件以後の内紛及びヒズボッラー・イスラエル間の戦闘問題
(4)スーダン・ダルフール地方におけるイスラーム教部族とキリスト教部族の対立及び難民問題

 今回のアラブ・サミットでは上記のほか、社会・教育・経済・女性問題等についても幅広い意見交換が行われ、その結果は会議閉幕後「リヤド宣言」として発表された。その最大のポイントは、中東和平問題について包括的和平提案を行ったことであるが、この提案は2002年のアラブ・サミットで当時のアブダッラー皇太子(現国王)が主導した和平案(いわゆるSaudi Initiative)を復活させたものである。
 この包括和平案は概略以下のようなものである。
(1)イスラエルは1967年の第3次中東戦争で占領した地域から撤退すること
(2)イスラエルはパレスチナ国家の独立を承認すること
(3)イスラエルはパレスチナ難民の帰還を認めること
(4)以上の条件が満たされればアラブ各国はイスラエルとの関係を正常化する

 これまで公式見解としてイスラエル国家を否定してきたアラブ諸国にとって、イスラエルの承認を前提とした和平提案は画期的なものである。そこには第3次中東戦争から40年を経て、漸く現実を受け入れ、将来への展望を切り開こうとするアラブ諸国の現状認識があり、それをリードしようとしているのがサウジアラビアである。それに対し中東和平のもう一方の当事者であるイスラエルはアラブの結束を畏怖し始めたかに見える。そして両者の仲介役と称しながら実際にはユダヤ・ロビーに押されて常にイスラエル寄りの立場で問題解決を図ろうとした米国は、そのためにアラブ諸国の全てを敵に回し、同国の中東政策は行き詰まりを見せている。
 
本稿ではアラブ・サミットがサウジアラビア、イスラエル、米国の3カ国にもたらす影響を3回にわたって論じることとする。

(*)リビアが会議をボイコットしたのは、かつてアブダッラー国王の皇太子時代に同国による皇太子暗殺の陰謀が発覚し、それ以来両国関係が冷却状態にあるためと思われる。

(今後の予定)
第2回 サウジアラビア:エジプトに替わり中東和平の主役に
第3回 イスラエル:米国の後ろ盾を失って狼狽
第4回 米国:早くもレームダック状態のブッシュ政権


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