2007年03月

2007年03月27日

アハマド・サバーハ保健相に対する不信任問題に端を発し、3月4日に総辞職したナーセル内閣は、閣僚の人選に難航し、これまでに例を見ない3週間以上と言う空白期間の後、26日に漸く組閣を完了した。

閣僚の人数はこれまでと同様の16人であるが6名が交代した。首相、国防相、内相、外相などの主要ポストはサバーハ家王族閣僚が留任したが、保健相が閣外に去ったため、王族閣僚の人数はこれまでの6人から1人減り5人となった。なお前エネルギー相のアリ・ジャラーラはエネルギー省が石油省と水・電力省に分割され、石油相に就任した。

通信相から保健相に横滑りしたマスーマ女史に加え、教育・高等教育相にヌリヤ女史が就任したことにより、クウェイトの女性閣僚は2名となった。また現職国会議員の閣僚は、憲法の規定で最低1名が任命されることになっているが、ファラーハ商工業相が留任したほか、住宅問題担当相にアブドルワーヘド議員が新たに指名されたため、国会議員からの閣僚登用も2名となっている。

16名の閣僚は以下の通りである。

首相:ナーセル・アル・サバーハ(留任)
第一副首相兼内相兼国防相:ジャービル・アル・サバーハ(留任)
副首相兼官房長官:ファイサル・アル・ハッジ(新任)
副首相兼外相:モハンマド・アル・サバーハ(留任)
保健相:マスーマ・アル・ムバラク(留任、通信相より横滑り)
石油相:アリ・ジャラーラ・アル・サバーハ(留任、前エネルギー相)
社会問題・労働相:サバーハ・アル・サバーハ(留任)
通信相兼国会担当国務相:シャリーダ・アル・モシェルジ(新任)
住宅問題担当国務相:アブドルワーヘド・アル・アワディ(新任)
教育・高等教育相:ヌリヤ・アル・セビ(新任)
商工業相:ファラーハ・アル・ハジュリ(留任)
司法相兼イスラム問題担当相:アブダッラー・アル・マートク(留任)
情報相:アブダッラー・アル・ムハイブリ(留任、自治担当国務相より横滑り)
財務相・バデル・アル・フマイディ(留任)
公共事業相兼自治相:ムーサ・アル・サラフ(新任)
電気・水相:ムハンマド・アル・オライム(新任)

以上


at 15:57Kuwait 

2007年03月26日

at 10:37Today's News 

2007年03月25日

at 09:59Today's News 

2007年03月23日

at 09:36Today's News 

2007年03月22日

第2回:イラン核疑惑問題の最中に敢えて打ち出した真意

 昨年12月のGCCサミットで核の共同研究構想が打ち出されたが、それまでGCCで核問題が討議されたことは無い。今回、平和目的とは言え核利用に言及したことはいかにも唐突な感を免れない。しかも現在イランは2005年夏のアハマドネジャド大統領就任以来、ウラン濃縮を強行する姿勢を鮮明にし、そのため国連を舞台に米国とイランは鋭く対立している。そのような中で、中東地域で政治的或いは軍事的に非力な湾岸君主制6カ国のGCCが、核というデリケートな問題を取り上げたのは何故であろうか。

 GCCの共同研究という体裁をとっているが、核利用はサウジアラビアが他のメンバー国を道連れに打ち出したものと考えて間違いないであろう。サウジアラビア以外の他のGCC各国は、核利用には殆ど興味が無いものと思われる。中にはアブ・ダビ やクウェイト のように関心を示す国が無くはないが、これとてどこまで本気かは疑わしく、政治的意味合いが強い。

 サウジアラビアの核利用は、核エネルギーを利用した原子力発電及び海水淡水化を組み合わせた発電・造水プロジェクトであるが、それには内政及び外交の両面の目的があると考えられる。欧米ではGCCの核利用構想をイランに対抗するためとする見方が殆どであるが、これは現在の中東の全ての問題を、シーア派のイランとそれ以外のスンニ派アラブ諸国という宗教の対立軸で説明しようとするためである。

 勿論サウジアラビアにはイランに対する強い対抗心があり、それが核利用を推進する理由の一つであることも事実であろうが、それよりも大きな理由が二つある。その第一は、爆発的に増加する人口に対して電力及び水の不足が深刻化しており、原発建設による発電・造水プロジェクトが必要と考えられることである。そして第二の理由は、原発建設という核利用問題を米国に突きつけることにより、イランとイスラエルに対する米国のいわゆる「ダブル・スタンダード」をあぶりだそうとしているのである。

 第一の理由である発電・造水プロジェクトについては、電気及び水の不足がもたらす社会不安を回避するためにも発電所及び淡水化装置の新増設がサウジ政府の最重要課題である。しかし同国には豊富な石油と天然ガスがあり、発電及び淡水化の燃料として核を使う必然性に乏しいのも事実である。従って核利用はサウジアラビアの国威発揚の手段と考えるべきであろう。国内でのサウド王家の威信を維持し、対外的にはGCCの盟主としての座を保ち、同時に地域におけるGCCの存在感を高めることによってサウジアラビア自身の地位を強化するためにも核利用の原発建設は格好の材料となる。

 さらに米国に対する牽制としてのしたたかな計算も伺える。サウジアラビアはかねがね、イスラエルの核兵器保有疑惑とイランの核濃縮疑惑に対する米国の対応はダブル・スタンダードである、と非難している。サウジアラビアは核の利用を平和目的に限ると明言しており、また現在の同国の技術水準ではイスラエルやイランのようにウラン濃縮及びそれによる核兵器開発まで進めることはまず不可能である。サウジアラビアの場合、原発建設そのものに米、仏、ロシアなど原発先進国の技術支援が必須である。これは米、仏、ロシア側から見れば大きなビジネスチャンスと言える。米国がサウジアラビアに核技術を移転するか否かは、米国の中東政策の踏み絵とも言える性格を有している。親米派を自認するサウジアラビアは、米国が自国に核技術を供与する、と踏んでいるのであろう。万一、米国内のイスラエルロビーが反対したとしても、仏の技術を導入する、と言う選択肢がある。中東での足がかりを必死に求めている仏が、サウジアラビアの原発商談に飛びついてくることは目に見えているからである。

 先にも書いたとおりサウジアラビアはGCCの盟主としての指導力が低下している。GCCの結束力を保つためにこれまでにも湾岸パイプライン、湾岸鉄道計画などアラビア湾最深部のクウェイトからオマーンまで、ホルムズ海峡を越えて外洋に至る種々のプロジェクトが華々しく打ち上げられた。しかし湾岸電力網を除いてはいずれも頓挫している。そしてEUを手本としたGCCの経済一体化についても通貨統合に足並みの乱れが見られ、2010年の目標達成は困難な状況である。

 サウジアラビアは石油の富を最大の武器として対外的には地域外交のイニシアティブを発揮して大国としての存在感を高め、また国内のインフラ整備、失業問題を解決しようとしている。原発建設はサウジアラビアにとって内政、外交の両面で大きな意味を持っていると言えよう。


(これまでの内容)
第1回:核の共同研究を打ち出したGCCサミット

(今後の予定)
第3回:最終目標は原発による発電・海水淡水化プラント建設
第4回:原発実現に横たわる数々の障害
第5回:サウジ政府が考える原発建設の意義―欲しい名声
第6回:もしサウジに原発を造るなら―紅海沿岸に仏の技術協力で



at 11:24Saudi Arabia 
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