2007年07月

2007年07月24日

(お知らせ)
本シリーズは「中東と石油」の「A-15 サウジアラビア・サウド家」で全文をごらんいただけます。

(第9回)要職を独占するサウド家の王族(その3):世襲化する高級官僚のポスト

閣僚或いは知事に次ぐ高級官僚のポストにもサウド家の王族が数多くひしめいている。アブダッラー国王など初代国王の子息である第二世代36人のうち存命者は21人であるが、彼らの息子達、即ち第三世代の男子王族は2百人を超えている。アブドルアジズ初代国王の直系男子王族は既に第六世代まで誕生しており、男子王族の総数は8百人を下らない(Abdul Rahman bin Sulaiman Al-Ruwaishid著のサウド家系図による)。その多くは二十歳を超えており、彼ら王子達の望みは王族に相応しい名誉と報酬が保証される社会的地位を得ることである。

世界的な大富豪として知られるワーリド王子のようにビジネスの才覚がある王族は稀であり、多くの王族は結局そのポストを官界に求めることになる。従って王族内部では高級官僚のポストを巡り熾烈な争いが繰り広げられる。そこでは本人自身の能力よりもむしろサウド家内部での「コネ」が大きくものを言う。下記のリストは高級官僚ポストに就いている王族達(現職以外も一部含む)であるが、「親の七光り」こそ高級官僚ポストを獲得する最良の手段であることは一目瞭然である。

なおリストの先頭の数字は世代(第二、第三または第四世代のいずれか)を、*印はスデイリ・セブン及びその子息・孫であることを示している。カッコ内は父親(又は祖父)の名前である。

(国防・治安部門)
③ムテーブ国家警備隊副司令官(アブダッラー国王3男)
③マシャリ国家警備隊東部地区副司令官(サウド第二代国王32男)
④ハーリド国家警備隊西部地区副司令官(初代国王長男トルキ王子の孫)
④ミシャル国家警備隊顧問(サウド第二代国王の孫)

②アブドルラハマン国防副大臣(初代国王16男)
③*ハーリド国防省副大臣(スルタン皇太子兼国防相長男)
③バンダル国防省顧問(ファイサル第三代国王7男)
③トルキ・アブドルアジズ空軍基地司令官(初代国王7男ナセル王子7男)
③マンスール・アブダッラー空軍基地司令官(初代国王10男バンダル王子2男)

②ムクリン中央情報局長官(初代国王35男)
②マムドーフ戦略研究所所長(初代国王28男)
③*バンダル国家安全委員会事務局長(元駐米大使)(スルタン皇太子3男)
③*トルキ情報省次官(スルタン皇太子5男)
③アブドルアジズ中央情報局局長(初代国王10男バンダル王子4男)

②アハマド内務省副大臣(初代国王31男)
③*ムハンマド内相補(ナイフ内相2男)
③ムハンマド内相顧問(初代国王6男サアド王子2男)

(外交部門)
③ムハンマド駐英大使(ナッワーフ前中央情報局長官長男)
③トルキ前駐米大使(ファイサル第三代国王8男)

(石油省)
③ファイサル石油省顧問(初代国王21男トルキ王子3男)
③*アブドルアジズ石油省顧問(サルマン・リヤド州知事4男)

(その他の中央官庁)
③*ファイサル企画省副大臣(スルタン皇太子4男)
③*スルタン青年福祉庁長官(ファハド前国王4男)
④*ナワーフ青年福祉庁副長官(ファハド前国王長男故ファイサル王子長男)
③ファイサル教育省次官補(サウド第二代国王7男)


(副知事、市長)
③*サウド東部州副知事(ナイフ内相長男)
③ミシャル・ジェッダ市長(故マジド・マッカ州知事長男)
④ファイサル・バーハ州副知事(ムハンマド・バーハ州知事2男)

(参考家系図)「サウド家王族の閣僚・政府要人」

世代別では第三世代(アブドルアジズ初代国王の孫達)が大半を占めているが、年齢の若い第二世代も数名いる一方、初代国王の曾孫である第四世代も登用されており、世代のバラエティに富んでいる。

国防治安部門の要職に数多くの王族が名を連ねているのは、サウジアラビア王国つまりはサウド家の体制を守るためであることは論を待たない。このうち国家警備隊はアブダッラー国王が隊長を兼務する軍事組織である。これはサウド家に忠誠を誓う部族で編成されており、いわばサウド家の近衛部隊である。アブダッラーが国家警備隊長となったのは半世紀近く前、彼が未だ40歳前の1963年のことである。従って国家警備隊はアブダッラー国王の親衛隊と言える。

これに対して国防省はスルタン皇太子が国防大臣を兼務し国家の正規軍を統括している。正規軍は米英の最新鋭戦闘機・戦車などの近代兵器を保有し、防空・防衛レーダーシステムなどのハイテク設備を駆使している。スルタンが国防大臣に就任したのはアブダッラーとほぼ同じ1962年である。こうしてアブダッラーとスルタンはそれぞれ国家警備隊と正規軍と言う国防の二大勢力を半世紀近く率いており、しかも自分達の子息ムテーブとハーリドをNo.2に据えているのである。正規軍と国家警備隊はサウド家内部におけるスデイリ派(スルタン皇太子を頂点とするスデイリ・セブン一族)と非スデイリ派(アブダッラー国王他のスデイリ・セブンに対抗する一派)のバランス・オブ・パワーとなっている。

スデイリ一族にはスルタン皇太子兼国防相、ナイフ内務相、アブドルラハマン国防副大臣、アハメド内務副大臣、ハーリド国防副大臣などの閣僚クラスがいる(前章参照)。更にバンダル国家安全委員会事務局長(スルタン皇太子3男、元駐米大使)、ムハンマド内相補(ナイフ内相次男)、トルキ情報省次官(スルタン皇太子5男)などもおり、一族は国防・治安のポストをがっちり握っている。このほかファハド前国王の4男スルタン及び長男の息子ナワーフが青年福祉庁の長官・副長官であり、スデイリ一族の勢力は今も強い(上記リスト*印参照)。

王族が自分の息子をNo.2に据える例は、ムハンマド・バーハ州知事が2男のファイサルを副知事とするなど地方行政組織にも見られる。サウド家の王族が増え続ける一方、行政組織の高級ポストは限られている。このため第二世代の王族がそのポストを息子や孫など直系一族に継がせようとする強い動機付けがある。しかし世襲化はその反動としてポストを得られない他の王族の不満を招くであろう。またこれまでは血の繋がった兄弟として強い結束力を誇ってきたスデイリ・セブンもその息子達の時代になった時に従来のような関係を維持できるかどうか疑わしい。例えば従兄弟同士の関係であるスルタン皇太子とナイフ内相の息子達が、父親同士と同じような強い信頼関係を発揮できるとは思えないからである。

サウド家王族内部のポスト争いは、従来の単なる直系血族による縁故主義だけではなく、本人の能力、人望或いはカリスマ性などの属人的要素としての実力主義が加味される時代に移りつつあるのかもしれない。

(第9回完)

(これまでの内容)
(第8回)要職を独占するサウド家の王族(その2):官選知事の顔ぶれ
((第7回)要職を独占するサウド家の王族(その1):中央政府閣僚
(第6回)アブドルアジズの息子達に受け継がれる王位
(第5回)アブドルアジズの治世後期:石油の発見と第二次世界大戦
(第4回)サウド家安泰のために:26人の王妃と36人の王子達
(第3回)アラビア半島国盗り物語―「サウジアラビア王国」の樹立
(第2回)サウド家のクウェイト亡命生活と19世紀末の中東情勢
(第1回)サウド家のはじまり

(前田 高行)

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