2009年07月
MENA(中東・北アフリカ)22カ国の平和指数(2009年版)
東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。
第12回のランキングは、NGOグループVision of HumanityがThe Economist Intelligence Unit (EIU、英国の経済誌エコノミストの一部門)のデータをもとに取りまとめた「The Global Peace Index」からMENA諸国をとりあげて比較しました。
1.「The Global Peace Index」について
Global Peace Index 2009は、世界144カ国を対象に、各国の平和の程度およびそれを維持するための機能を指数化し、ランク付けしたものである。一昨年の第1回調査の対象は121カ国であったが、昨年は140カ国そして今回は144カ国であり、対象国の数は毎年着実に増えている。MENA諸国についても今年はアフガニスタンが加わり、全22カ国がランク付けされている。
なお平和指数はEIU社の国別調査員と外部ネットワークの協力を得て作成されている。指数は小型破壊兵器(銃、小型爆発物など)の入手の容易さ、国防費、汚職、人権に対する尊重の度合いなど24項目をベースにして作成されたものである。
「世界平和指数」の査定結果には以下のような特徴が見られる。
・ 平和の度合いは収入、教育制度、地域一体化のレベル等の指標に関連している。
・ 平和な国の多くは政府の透明性が高く、汚職が少ない。
・ 小さいが安定した国は平和のランクが高い。
*Vision of Humanityのホームページ:http://www.visionofhumanity.org/gpi/home.php
2. MENA諸国の2009年「世界平和指数」
(詳細はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-12GlobalPeaceIndex2009.htm参照)
MENA22カ国の中で最も平和度が高いのはカタールであり、同国は世界144カ国のなかで16位である。これはドイツと並びスイス(17位)よりも高いランクであり、カタールは世界的にもかなり高い評価を受けている。因みに世界で最も平和度が高い国はニュージーランドで、日本は第5位である。
MENA諸国でカタールに続くのがオマーン(世界ランク21位)であるが、両国は昨年の1位と2位が入れ替わっている。MENAの3位から6位までは昨年と変わりが無く、UAE(世界ランク40位)、クウェイト(同42位)、チュニジア(44位)、リビア(同46位)と続いている。MENAの中でもGCC4カ国が上位を独占している。GCCの残る2カ国バハレーンとサウジアラビアは、MENA中位グループである(後述)。このことからGCC地域はMENAの中で比較的平和度は高いと言えよう。平和指数が世界50位以内に入っている国の大半はヨーロッパ、アジア・大洋州の国々であり、中南米、アフリカ諸国は殆ど50位以下である。中東は紛争の多い危険な地域と見られているが、その中でMENA6カ国が上位50カ国に入っていることは評価されて良いであろう。
このほか10位までには、エジプト(世界ランク54位)、モロッコ(同63位)、ヨルダン(同64位)バハレーン(同69位)、がある。これらMENA上位10カ国は、世界144カ国の中では上位グループに入っている。11位以下には、シリア、イラン、サウジアラビア、アルジェリア、イエメン、トルコ、モーリタニア、レバノンと続いている。
そしてMENAの中でも平和度が最も低いのはスーダン(世界ランク140位)、イスラエル(同141位)、アフガニスタン(143位)、イラク(144位)である。これら4カ国はイラク、アフガニスタンが世界最下位とそのすぐ上を占めており、スーダン、イスラエルも世界144カ国の中で平和度の評価が非常に低い。4カ国のうちイスラエルはMENA諸国の中でも近代的な政治・経済・社会制度の整備された国である。それにもかかわらず平和度が極めて低いとされている。パレスチナ問題、シリア、イランとの緊張関係など不安定な問題を抱えていることが平和に対する評価を低めているようである。
3.2007年~2009年の比較
平和指数は2007年に始めて公表されたものであり、今回で3回目であるが、過去3ヵ年の順位を比較するといくつかの大きな変動が見られる。調査対象国の数が3ヵ年で異なるので単純な比較はできないが、それでも大まかに見ると以下のような特徴が見られる。
まずMENA上位5カ国のカタール、オマーン、UAE、クウェイト及びチュニジアは3ヵ年を通して変わらず、これらの国の平和度が安定していることを示している。ただ世界ランクで見た場合、カタールが昨年の33位から今年は16位と飛躍的に向上していることは注目される。その他の上位グループではリビアが昨年に比べ順位を大幅に上げており(61位→46位)、イランも105位から99位へと上がっている。特にエジプトは3年連続して順位を上げている(73位→69位→54位)。
一方昨年に比べて順位を大幅に下げたのは、シリア(75位→92位)及びイエメン(106位→119位)である。そしてトルコ及びイスラエルは3年連続して順位を落としており、イスラエルの場合は119位(07年)→136位(08年)→141位(09年)と平和度が毎年悪化している。調査対象国が増えたことを考慮すればイスラエルの場合、大きな変化ではないと言えなくも無いが、いずれにしても同国の平和度は世界でも最低クラスなのである。
以上
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp
東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。
第12回のランキングは、NGOグループVision of HumanityがThe Economist Intelligence Unit (EIU、英国の経済誌エコノミストの一部門)のデータをもとに取りまとめた「The Global Peace Index」からMENA諸国をとりあげて比較しました。
1.「The Global Peace Index」について
Global Peace Index 2009は、世界144カ国を対象に、各国の平和の程度およびそれを維持するための機能を指数化し、ランク付けしたものである。一昨年の第1回調査の対象は121カ国であったが、昨年は140カ国そして今回は144カ国であり、対象国の数は毎年着実に増えている。MENA諸国についても今年はアフガニスタンが加わり、全22カ国がランク付けされている。
なお平和指数はEIU社の国別調査員と外部ネットワークの協力を得て作成されている。指数は小型破壊兵器(銃、小型爆発物など)の入手の容易さ、国防費、汚職、人権に対する尊重の度合いなど24項目をベースにして作成されたものである。
「世界平和指数」の査定結果には以下のような特徴が見られる。
・ 平和の度合いは収入、教育制度、地域一体化のレベル等の指標に関連している。
・ 平和な国の多くは政府の透明性が高く、汚職が少ない。
・ 小さいが安定した国は平和のランクが高い。
*Vision of Humanityのホームページ:http://www.visionofhumanity.org/gpi/home.php
2. MENA諸国の2009年「世界平和指数」
(詳細はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-12GlobalPeaceIndex2009.htm参照)

MENA諸国でカタールに続くのがオマーン(世界ランク21位)であるが、両国は昨年の1位と2位が入れ替わっている。MENAの3位から6位までは昨年と変わりが無く、UAE(世界ランク40位)、クウェイト(同42位)、チュニジア(44位)、リビア(同46位)と続いている。MENAの中でもGCC4カ国が上位を独占している。GCCの残る2カ国バハレーンとサウジアラビアは、MENA中位グループである(後述)。このことからGCC地域はMENAの中で比較的平和度は高いと言えよう。平和指数が世界50位以内に入っている国の大半はヨーロッパ、アジア・大洋州の国々であり、中南米、アフリカ諸国は殆ど50位以下である。中東は紛争の多い危険な地域と見られているが、その中でMENA6カ国が上位50カ国に入っていることは評価されて良いであろう。
このほか10位までには、エジプト(世界ランク54位)、モロッコ(同63位)、ヨルダン(同64位)バハレーン(同69位)、がある。これらMENA上位10カ国は、世界144カ国の中では上位グループに入っている。11位以下には、シリア、イラン、サウジアラビア、アルジェリア、イエメン、トルコ、モーリタニア、レバノンと続いている。
そしてMENAの中でも平和度が最も低いのはスーダン(世界ランク140位)、イスラエル(同141位)、アフガニスタン(143位)、イラク(144位)である。これら4カ国はイラク、アフガニスタンが世界最下位とそのすぐ上を占めており、スーダン、イスラエルも世界144カ国の中で平和度の評価が非常に低い。4カ国のうちイスラエルはMENA諸国の中でも近代的な政治・経済・社会制度の整備された国である。それにもかかわらず平和度が極めて低いとされている。パレスチナ問題、シリア、イランとの緊張関係など不安定な問題を抱えていることが平和に対する評価を低めているようである。
3.2007年~2009年の比較
平和指数は2007年に始めて公表されたものであり、今回で3回目であるが、過去3ヵ年の順位を比較するといくつかの大きな変動が見られる。調査対象国の数が3ヵ年で異なるので単純な比較はできないが、それでも大まかに見ると以下のような特徴が見られる。
まずMENA上位5カ国のカタール、オマーン、UAE、クウェイト及びチュニジアは3ヵ年を通して変わらず、これらの国の平和度が安定していることを示している。ただ世界ランクで見た場合、カタールが昨年の33位から今年は16位と飛躍的に向上していることは注目される。その他の上位グループではリビアが昨年に比べ順位を大幅に上げており(61位→46位)、イランも105位から99位へと上がっている。特にエジプトは3年連続して順位を上げている(73位→69位→54位)。
一方昨年に比べて順位を大幅に下げたのは、シリア(75位→92位)及びイエメン(106位→119位)である。そしてトルコ及びイスラエルは3年連続して順位を落としており、イスラエルの場合は119位(07年)→136位(08年)→141位(09年)と平和度が毎年悪化している。調査対象国が増えたことを考慮すればイスラエルの場合、大きな変化ではないと言えなくも無いが、いずれにしても同国の平和度は世界でも最低クラスなのである。
以上
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