2009年12月

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2009年12月25日

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2009年12月24日

その4:アブ・ダビとドバイは主従関係に?
 ドバイ・ショックは11月下旬、Dubai Worldが債権者に傘下のナヒール社の借入金返済猶予を申し入れたことから始まったのであるが、その予兆はすでに1年前にあった。リーマン・ショックの影響でこのころドバイの不動産市場は急速に冷え込み、ナヒールをはじめとする不動産デベロッパーが人員整理を開始 、バブル崩壊による販売不振で資金繰りは行き詰まりの様相を呈した。

 今年2月、ドバイ政府は200億ドルの起債を計画、そのうち100億ドルをUAE中央銀行が引き受けた 。UAE中央銀行の資金源は言うまでもなくアブ・ダビの石油収入であり、この事実はアブ・ダビがドバイ支援に乗り出したことを意味した。そしてドバイ・ショック発生直前にはアブ・ダビの二つの銀行が50億ドルのドバイ政府債を引き受けているが、これもアブ・ダビ政府の後押しによるものである。

 そして今月14日には同日償還期限が到来したナヒール社の債務不履行を回避するため、アブ・ダビ政府がドバイに100億ドルを貸し付けた 。こうしてアブ・ダビが直接ドバイを救済する道が開かれた。なぜアブ・ダビが直接救済に踏み込んだのか?同じUAEの連邦構成国としてアブ・ダビがドバイを見捨てることできなかった根本的な理由は、共にアラブ民族であり同一部族であるという血のつながりであり、また国家としての国際的な信用問題ではUAEを構成するアブ・ダビもドバイも一蓮托生だからであろう。

 筆者は講演などでわかりやすいたとえとして、ドバイは大阪であり、アブ・ダビは霞が関だと説明している。大阪は第3セクターへの過大な投資で財政再建団体に転落する寸前である。大阪は外国でも起債しており、万一債務不履行になれば国際問題化するが、霞が関は決してそのようなことを黙過しないであろう。つまりアブ・ダビはUAEの国際的信用を維持するためドバイをデフォルト(債務不履行)させるはずはないと考えている。

 さらにアブ・ダビの救済理由をあげるとすれば、ナヒール社の債権がSukuk債つまりイスラム債権であったこと、及び直近にGCC首脳会議が控えていたこともある。イスラム金融は急速な広がりを見せている。ドバイは地域の金融センターとして欧米流の金融(conventional finance)ではバハレーンを蹴落とし、現在はイスラム金融の覇権を競っている。ナヒールのイスラム債が返済遅延(あるいは最悪償還不能)になれば、せっかく築き上げたドバイの名声は地に墜ちる。アブ・ダビ自身にとってもそれは大きなマイナスである。

 GCC首脳会議については通貨統合の問題がある。実はGCC通貨本部をアブ・ダビに置くか、サウジアラビアのリヤドに置くかをめぐり、UAEはサウジアラビア及び他の3カ国と対立し、挙句の果てにGCC通貨統合から離脱している 。アブ・ダビがドバイの金融危機に有効な対策を取らなければ、UAEの一体性を疑われることになり、GCC内部での立場が弱くなる。

 ハリーファ・アブ・ダビ首長は今年の春、ムハンマド・ドバイ首長の案内でドバイの現状を視察している。ハリーファがドバイを公式に視察するのは(地元の英字新聞を見る限りではあるが)過去にほとんど例が無かった。西欧のメディアはこの事実に二つの意味付けをしている。一つはアブ・ダビがドバイを見捨てないことを内外にアピールしたということであり、これは金融機関を含めた国際社会に対するアピールであったと考えられる。

 ただしアブ・ダビがどこまでもドバイを救済するというわけではなかろう。メトロ(地下鉄)建設資金などドバイ政府の直接借入金のほかドバイ・ワールドなど政府関連企業(Government Related Entities, GRE)を含めた借入金の総額がわからないまま無制限に救済すればアブ・ダビ自身がドバイの借金地獄に引きずり込まれる恐れがある。そもそも今回のドバイ・ショックは借入金の全体像が分からず、債権者たちが疑心暗義に陥ったこともその一因である。アブ・ダビ政府の高官も救済は「ケース・バイ・ケース」と釘を刺している 。

 ドバイの借入金の全体像については種々の報道があるが、今月7日にMorgan Stanleyがインターネットで公表したレポート’A closer look at Dubai’s Debt’ によると以下のとおりである。まず開示された借入金の総額は902億ドルで、内訳はドバイ政府187億ドル、政府関連企業(GRE)715億ドルである。そしてその他の借入金の推定額はGRE180億ドル。これらを合計するとドバイ政府自身の借金は187億ドル、GRE895億ドルで総計1,082億ドルとなる。

 今年の経常黒字が550億ドルと言われ(IMF World Economic Outlook推定)、アブダビ投資庁(ADIA)の資産残高だけでも3,280億ドル(UNCTAD推定、2008年末)を抱えるアブ・ダビにとってドバイの借金総額1千億ドルは耐えられない額ではない。従って今後もかなりの面倒をみることはまちがいないであろう。

 しかしドバイ支援についてアブ・ダビのナヒヤーン首長家内部で相当な異論が出ることも間違いない。これまでのようなムハンマド皇太子の一存だけでは無理があり、今後ハリーファ首長がイニシアティブをとる場面が多くなると考えられる。上述したハリーファ首長のドバイ視察は、首長が主導権を発揮し始めた、というメッセージと見ることもできる。

 アブ・ダビのドバイ支援が無償の行為だと思う者は誰もいないであろう。アブ・ダビは何らかの見返りをドバイに要求するはずである。その見返りとは何か?サウジ・フランス銀行のアナリストJohn Sfakianakis氏は、ドバイがこれまでの自治権の一部をアブ・ダビに返上する可能性を推測している 。そのような事態がいつ、どのような形で起こるのかは予測し難い。しかし筆者もSfakianakis氏と同じで意見ある。一時的にせよアブ・ダビとドバイの関係が主従の関係になることは間違いなさそうだ。

(完)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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