2010年06月

2010年06月29日

2.米国のLNG輸入半減の怪
 米国は世界の天然ガスの22%を消費している(BP統計2009年数値、以下数値は全てBP統計による)。国内産で不足する分は隣国カナダからのパイプライン或いは世界各国からのLNG輸入でまかなっている。そのLNG輸入量は2008年99億㎥、2009年は128億㎥であった。実はこれは2007年の輸入量218億㎥に比べると08年は1/2以下、09年も6割程度にとどまっており、その減少幅は尋常ではないのである。07年のサブプライムショックに続き08年にはリーマンショックが発生、米国の景気は急速に冷え込み天然ガスの需要も落ち込んだ影響と考えがちだが、07年から09年までの同国の天然ガス消費量は6,500億㎥、6,600億㎥、6,500億㎥と殆ど横ばい状態である。米国のLNG市場に何が起こっているのか?その理由を理解するため1980年代からの米国における天然ガスの生産と消費の状況を見てみよう。(図「米国の天然ガスの生産量と消費量 1980~2009年」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-95cUsaGasProdVsCons19.gif参照)

 1980年代前半まで米国内の天然ガスは生産と消費がほぼ均衡しており輸入の必要はなかった。しかし1987年以降は消費の伸びが生産を上回りそのギャップは年々大きくなって、1995年以降は毎年1千億㎥以上の天然ガスを輸入しなければならない状況が続いている。当初はほぼ全量をカナダからパイプラインで輸入していたが、カナダの輸出余力にも限度があり不足分はLNGとして輸入されるようになった。

 2000年を例にとると同年の国内生産量5,432億㎥に対し消費量は6,607億㎥であり、差し引き1,175億㎥を輸入しなければならなかった。このギャップを埋めるため62億㎥のLNGがトリニダード・トバゴ、アルジェリアなどから輸入されている。輸入の殆どはカナダからのパイプラインによるものであり、LNGは輸入全体の5%程度にとどまっている。

 しかし2007年にはLNG輸入量は218億㎥に増加、2000年に比べ3.5倍に増え輸入全体の12%を占めるようになった。国別ではトリニダード・トバゴが6割を占め、その他エジプト32億㎥、ナイジェリア27億㎥、アルジェリア21億㎥などであった。因みに同年のカタールからのLNG輸入は5億㎥であり、3カ国に比べ輸入量が一桁少ない。3カ国からの輸入は長期契約によるものであり、カタールからの輸入はスポットであったと考えられる。そして冒頭に触れたとおり08年及び09年のLNG輸入量は急減している。

 08年と09年にはLNGを含む天然ガスの輸入全体が減っている。09年には消費量6,500億㎥に対し国内生産量は5,900億㎥と過去最大を記録しており、従来1千億㎥前後あった需給ギャップが500億㎥強に縮まったからである。米国内の天然ガスの生産は1980年代半ばから2005年まで5千万㎥を前後していたが、2006年以降急激に増加し2009年には6千万㎥近くに達している。米国の天然ガスの自給率は2005年の82%から2009年には92%と10ポイントも改善しているのである。

 さらに米国の確認埋蔵量と可採年数(R/P、当年末の確認埋蔵量を同年の生産量で割った数値)を見ると一層興味深い(図「米国の天然ガスの埋蔵量と可採年数(1980~2009年)」 http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-93cUsaGasResVsRp1980-.gif参照)。米国内の埋蔵量は1993年を底に毎年増加しており2004年には1980年の埋蔵量を超えるとともに2005年以降2008年までは顕著な増加を示している。この結果可採年数も1998年の8.6年を底に2007年には1980年代前半と同じ水準の12.3年に達しているのである(08年、09年は生産量が急増したためR/Pは若干短くなっている)。

 世界全体を見ると天然ガスの消費が増加するのに対して新たなガス田の開発や既存ガス田の生産増強が追い付かず、埋蔵量が横ばいのためR/Pは年々低下する傾向にあり、特に2001年以降はその動きに拍車がかかっている(図「天然ガスの埋蔵量と可採年数」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-93aGasReserve&RP.gif参照)。このような中でR/Pが伸びている米国は異彩を放っているのである。

 米国で近年天然ガスの埋蔵量が増加し、また生産量が急激に増加している理由―それは「シェールガス」と呼ばれこれまでその存在は知られていたものの開発が難しかったガス源が商業ベースに乗るようになったからなのである。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 



drecom_ocin_japan at 11:05コメント(0)トラックバック(0)Qatar 

1.低迷する天然ガス価格
 天然ガスの国際価格が低迷している。しかも歴史的な低水準である。天然ガスには石油におけるWTI、Brent或いはDubaiのような世界的な指標となる価格体系はないが、NYMEX(ニューヨーク商品取引所)の先物取引である「ヘンリー・ハブ渡し価格 」は過去1年半近く百万BTU当たり5ドルを割ったままである。これは原油に換算するとバレル当たり30ドル以下であり、現在のWTI価格(70ドル強)と比べ半値以下の水準である(JOGMEC野神氏作成図参照 )。

 天然ガスはパイプラインで生産者と需要家が直結され、またLNGの場合は巨額の初期投資が必要なため生産者と需要家が長期契約を結ぶなどエネルギー商品として石油ほど流通性があるとは言い難い。しかしヘンリー・ハブ価格だけでなく世界的に見て天然ガスの価格が低迷していることは事実である。そのため天然ガスを有力な外貨の稼ぎ手とするカタールやロシア、アルジェリアなどには焦りの色が見られる。

 天然ガスは環境に優しいエネルギーとして近年脚光を浴びている。同じ化石燃料である石炭、石油及び天然ガスを比べると、炭酸ガスの排出量は石炭1に対し石油は0.8であり、天然ガスは0.6と言われている。このため日本など先進国では石油から天然ガスに切り替える動きがある。世界の天然ガス消費量は過去40年以上一貫して増えており、BP統計によれば2008年の年間消費量は三兆立法米に達した 。

 しかし2009年以降天然ガスの輸出入が急速にしぼんでいる。その最大の理由は世界同時不況によるエネルギー消費の落ち込みであるが、もう一つの理由は米国内の天然ガスの生産が回復から増加に転じたことである。そして米国の天然ガスの可採埋蔵量は1997年を境に上昇に転じ、今や1970年代前半のレベルに回復しているが、その主役となっているのはシェールガスの開発及び生産である 。これにより米国の天然ガス輸入は大幅に減少している。特に影響を受けたのがLNGであり、LNG受入ターミナルの稼働率は今や10%に落ち込んでいると言われる  

 このことで最も影響を受けたのが世界最大のLNG輸出国カタールである。カタールの対米輸出はさほど多くないが、米国のLNG輸入減によりLNGのスポット市場は殆ど壊滅的と言ってよいほどの惨状である。カタールが誇るLNG船団も今や8隻がオマーン湾でガス価格の回復を待って係留状態にあると報道されている 。カタールはLNGの年産能力7,700万トン体制を標榜、今年から来年にかけて生産積み出し設備が次々と完成する予定である。今後しばらく天然ガスは供給過剰の状態が続くことは間違いない。現在カタールは躍起になってLNGの売り込み先を開拓中である。

 本稿では米国の天然ガス輸入が急減した背景及びその最大の要因であるシェールガスの開発と生産の躍進について述べ、次いで世界の天然ガス輸出の盟主を目指すカタールの動き、そして背後に見え隠れする天然ガス生産国による「ガスOPEC」結成の動向を探ることとする。

(続く)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 



drecom_ocin_japan at 11:02コメント(0)トラックバック(0)Qatar 

2010年06月28日

drecom_ocin_japan at 14:01コメント(0)トラックバック(0)今日のニュース 

2010年06月27日

drecom_ocin_japan at 10:44コメント(0)トラックバック(0)今日のニュース 

2010年06月24日

drecom_ocin_japan at 11:05コメント(0)トラックバック(0)今日のニュース 
記事検索
月別アーカイブ
タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ