2010年10月

2010年10月31日

(MENAなんでもランキング・シリーズ その9)

3.主要国の2004年~2010年のランクの推移

図は7カ国(レバノン、イスラエル、UAE、エジプト、トルコ、サウジアラビア及びイラン)の過去7年間の世界順位の推移を見たものである(拡大図は「MENA主要国の報道の自由度」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-9bPressFreedom2004-2010.gif 参照)。
2004年に世界36位であったイスラエルはその後2008年までは世界50位以内を維持し、MENAの中では傑出して高い自由度を誇っていた。しかし2009年、2010年は急激に順位を落とし、レバノンに追い抜かれ、またUAEとほぼ同じ順位となっている。同国はヨルダン川西岸への入植地拡大強行や今年発生したトルコのガザ支援船拿捕事件などで自由な取材を制約する傾向が見られ、外国メディアの同国に対する評価は厳しさを増している。

これに対して中東和平の一方の主役でもあるレバノン及びエジプトは2007年以降世界ランクが上昇傾向にある。レバノンは2005年、06年には100位以下であったが、2008年に世界66位に上昇、09年にはイスラエルを抜いて世界61位となっている。今年は若干順位をさげて世界78位であるが、それでもMENA22カ国の中ではトップである。またエジプトは2004年以降120~140位を前後しており自由度が高いとは言えなかったが、08年の146位を底に、昨年以降順位を上げている。

2004年に137位にとどまっていたUAEは、その後急激に順位を上げ、2007年には65位まで上昇した。その後は3年連続して下がり続け、現在は87位である。同国は2000年以降オイルブームに沸き、08年のドバイショックにより経済は後退気味である。「報道の自由度」と経済の盛衰にどの程度の関係があるのかは不明であるが、興味ある現象と言えよう。このような傾向はトルコにも見られ、同国は2005年から08年にかけては世界100位前後であったが、09年122位、10年138位と大幅にランクを落としている。トルコの経済の悪化は西欧の影響を受けた結果であり、政府が統制色を強め或いは一般国民にイスラム回帰の兆候が見られる。このことが西欧的評価基準で見た場合の報道の自由度の評価を下げていると考えられる。

サウジアラビア及びイランは従来から西欧ジャーナリストに対して閉鎖的であり、報道の自由度の世界ランクも2004年以降150位以下の最低ランクに張り付いたままである。特にイランは昨年175カ国中の172位、今年は178カ国中の175位と最低ランクである。

その他のMENA諸国について見ると(「MENAランクその9:報道の自由度」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-9aPressFreedom2010.xps 参照)、カタールは世界ランクの浮き沈みが激しい。同国の2004年の世界ランクは104位であったが、毎年順位を上げ08年には一時74位になったが、その後の2年間で94位(09年)、121位(10年)と急落し、同国としては過去最低の順位である。実はカタールは07年に「報道の自由のためのドーハ・センター」を設立しており、08年9月にRSFの創設者であるロベール・メナール氏がRSF事務局長を辞任して同センターの責任者に転身している。

同センターはカタール首長夫人モーザ王妃の資金的なバックアップにより世界中で拘束されている報道記者の救済活動費用に充てている。かつて北京オリンピックの聖火リレーで実力行使を行ったことで有名なメナール氏がこのように権力者の支援に頼る組織に転身したことに対して一部のジャーナリストからは疑問の声が上がった。実際、メナール氏は活動に大きな制約を受けている模様で昨年3月には公開質問状を出し「対応に納得できなければセンターを離れる覚悟である」と言明している 。

ジャジーラTVのイメージを利用して報道の自由を標榜するカタールであるが、現状を見る限り同国の姿勢が表面的なものであることは明らかであり、報道の自由度のランクが急落したのも上記のような背景があるためと考えられる。

(完)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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2010年10月30日

(MENAなんでもランキング・シリーズ その9)


 東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。

 第9回のランキングは、ジャーナリストのNGO団体「国境なきレポーター(Reporters Without Borders)」(略称:RSF)が発表した「報道の自由の指標2010(Press Freedom Index 2010)」からMENA諸国をとりあげて比較しました。
 
RSFホームページ:http://en.rsf.org/ 
Press Freedom Index 2010:http://en.rsf.org/press-freedom-index-2010,1034.html

1.「Press Freedom Index」について
 「国境なきレポーター(Reporters Without Borders)」は、1948年の世界人権宣言、及びこれに続く1950年の「人権と基本的自由の保護に関する会議」などで採択されたいくつかの憲章や宣言に触発され、各国の報道関係者が自発的に結成した非政府組織(NGO)である。フランスのジャーナリストが中心となって設立されたため、正式の組織名はReporters Sans Frontieresであり、その頭文字をとってRSFと略称され、本部はパリにある。

 RSFは、世界各国で取材妨害を受け、時には生命の危険に晒されているジャーナリストを保護し、その障害を取り除く活動を行っており、その一環として2002年から毎年、報道の自由度に関する各国のランク「報道の自由の指標(Press Freedom Index)」を公表している。この指標はRSFが作成した50項目のアンケートに対して、世界各地の表現の自由のための擁護組織団体及び多数のジャーナリストが回答した結果を集計したものである。

 2010年版(Press Freedom Index 2010)は世界178カ国の報道の自由度を指標化し、各国をランク付けしたものである。過去1年間のジャーナリストに対する各国の対応ぶりを評価したものであるため、報道の規制または記者の逮捕などの政府の取材妨害があった国、或いはジャーナリストが誘拐・殺害に遭った国についてはその年のランクが低くなる傾向がある。なお、RSF自身は、このランクは「報道の質」の良否を示すものではない、と断っている。

「Press Freedom Index 2010」は、前年(2009年)の175カ国から3カ国増え178カ国が対象になっている。MENAについては22カ国及びパレスチナ自治政府全てが評価対象となっている。

2.2010年のMENA22ヶ国の「報道の自由度」ランク
(「MENAランクその9:報道の自由度」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-9aPressFreedom2010.xps 参照)
MENA諸国で最もランクが高いのはレバノンであり、同国の世界ランクは78位である。レバノンに次いでランクが高いのはイスラエル(世界順位86位)、クウェイト、UAE(共に世界87位)、モーリタニア(95位)となっている。MENAではこれら5カ国が世界100位以内であるが、その他の17カ国及びパレスチナは全て世界120位以下である。このことから世界のジャーナリストはMENA地域の報道の自由度に対して厳しい評価を下していることがわかる。

主な国を列挙するとエジプト(世界127位)、イラク(同130位)、トルコ(同138位)、サウジアラビア(157位)、イラン(同175位)などであり、イランはエリトリア、北朝鮮と並び世界で最も報道の自由度が低い国とされている。サウジアラビア、イランは比較的治安が良好であるにもかかわらず報道の自由度はイラクやアフガニスタン(147位)よりも悪い。これはジャーナリストたちが単に治安の良否だけでなく、当局による取材制限に対して厳しい評価を下していることがうかがえる。

ちなみに世界で報道の自由度が最も高いとされたのは、フィンランド、アイスランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデン及びスイスであり殆どが北欧の国々である。また日本は世界11位であり、世界的にも非常に高く評価されている。米国のランクは日本より低い20位である。また中国は世界171位であり、MENAではイエメン(170位)より低い。

(続く)

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2010年10月29日

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