2011年09月

2011年09月28日

(注)本レポートは「前田高行論稿集:マイ・ライブラリー」に一括掲載されています。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0201GccSwfPart6.pdf

2.活発に動き始めたカタール
 湾岸SWFの内情は厚いベールに覆われており資産総額や投資先などの具体的な情報は殆ど開示されていない。SWFの国際的な調査機関「SWF Institute」(本部:米国ラスベガス)が公表した7/1日現在のSWFランク表によれば、主な湾岸SWFの資産はADIA(アブダビ)6,270億ドル、SAMA(サウジアラビア)4,725億ドル、KIA(クウェイト)2,960億ドル、QIA(カタール)850億ドル、IPIC(アブダビ)580億ドルとなっている。ADIAは世界のトップであり、SAMAはADIA、ノルウェー年金ファンド、SAFE Investment Co.(中国)に次ぐ世界第4位のSWFとされている。因みにKIAは世界6位、QIAは世界12位、IPICは世界15位である 。


 これらの湾岸SWFの中で現在最も活発な投資活動を行っているのはQIAであり、特に眼を引くのがスペイン及びギリシャの銀行に対する投資である。3月始めカタールとスペインはスペインの銀行に総額3億ユーロの資金を注入することに合意した。スペインはその見返りにカタール産LNGの輸入を増量するとのことである。スペイン国内銀行の資本不足額は全体で1,200億ユーロと言われカタールの注入額は小さいが銀行にとっては干天の慈雨であろう。一方のカタールにとってもLNG7,700万トン体制を築いたばかりであり世界的に天然ガスの供給過剰感が強まる中、長期の安定した顧客としてスペインを囲い込むことの意味は大きい。この取引は双方にメリットがあると言える。


 スペインに続いてQIAはギリシャの銀行二行の合併に対して5億ユーロの転換社債を引き受けた。格付け会社からデフォルト同然の評価をされているギリシャの銀行への融資が如何にリスクの高いものであるかは明らかであり、通常の金融機関なら尻込みする案件である。ハマド首長が君臨し国民に口をはさませないカタールだからこそできることである。この取引はスペインのケースと異なりギリシャだけが一方的に恩恵を受ける取引である。それでもハマド首長が融資に踏み切ったのはフランスに恩を売るためだと考えられる。もしギリシャが破綻すればフランスの銀行は莫大な損失を蒙る。カタールとギリシャの取引の背後にはフランスの信用失墜を恐れるサルコジ大統領の意図が垣間見える。ハマド首長とサルコジ大統領の関係はリビアのカダフィ時代にブルガリア医師エイズ問題の舞台裏で見せた二人の連携プレー、或いは今回のリビア紛争でカタールが仏製の自国戦闘機をNATO軍のリビア空爆に提供するなど両者には深い信頼関係があることを忘れてはならない 。


 このカタールとフランスの特別な関係はQIAの投資行動に反映しているようである。世界的水企業Veoliaの株取得(昨年4月) 、仏原子力企業Areva社の株取得(昨年11月) 、或いは仏サッカークラブParis St Germainの買収(今年6月) の他、最近ではBNP Paribasを含む複数の銀行への出資報道(9月) などに見ることができる。勿論カタールはフランス以外にも活発に投資しており、昨年4月のカナダのフェアモントホテル株40%取得 及びシンガポールの名門ホテルRaffles買収の動き 、中国の公開銀行株の投資(昨年6月) など枚挙にいとまが無い。昨年12月の独建設企業Hochtief社の株9.1%取得 などは仏サッカークラブの買収とともに2022年のワールドカップ開催をにらんだ戦略であろう。最近の動きとしてはスペインの保養地Golden Coastのマリーナの買収(7月) 、英国のF-1サーキット運営賃借権の買収(8月) 、独ダイムラーが保有するEADS(エアバス社の親会社)の株式買収(9月) などが報道されている。


 これらのQIAの投資行動を分析すると(1)金融不安に陥った欧州の銀行への資金注入、(2)トップ同士の特別な関係によるフランス企業への投資、(3)サッカーワールドカップ開催に関連した投資、及び(4)ホテルなど海外での観光(tourism)分野への投資、の四つの分野に分けることができよう。しかしこれらの分野は相互に関連性が乏しく、また投資対象国もばらばらである。つまりQIAの投資には一貫性が無く手当たり次第という感がある。これに対してはカタールのリスク管理を懸念する専門家の声もあがっている 。


(注)QIAの投資活動に関するニュースは現地紙のインターネット版からピックアップしたものであり、実際に投融資が実行されたか否かは未確認です。


 (続く)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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drecom_ocin_japan at 11:37コメント(0)トラックバック(0) 
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