2012年02月

2012年02月17日

(注)本シリーズは「前田高行論稿集 マイライブラリー」で一括ご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0216GccSummit2011.pdf

6.猛獣に囲まれたシマウマの群れ:弱者同盟GCC
 12月サミットに先立ってGCC6カ国の外相会議及び内相会議が相次いで開催され、外相会議ではアラビア湾航行の安全センターをバハレーンに開設することが決まり 、内相会議では合同警察部隊と恒久的な治安委員会の創設が合意された 。前者は対岸のイランの軍事行動を念頭に置いたものであり、後者はシーア派住民或いは過激テロ組織アル・カイダを意識したものであることは言うまでもない。その総仕上げがサミット・コミュニケにうたわれた「Cooperation CouncilからSingle Unity(単一同盟)へ」と言う文言である。一連の動きにはGCCを軍事同盟として再編成しようとする意図がはっきりと読み取れる。


 軍備増強の動きは各国で既に始まっている。サウジアラビアは米国から294億ドルにのぼる兵器を調達すると発表した 。契約にはF-15SA戦闘機84機、アパッチ型ヘリ70機、Black Hawkヘリ72機などが含まれている。また米国がUAEに600発のバンカーバスター爆弾を売却すると報道されている 。バンカーバスター爆弾は地下深くの施設を爆破する能力を持っており、これはイランの地下核施設を爆撃することができる代物である。


 各国は国レベルとGCCレベルで軍事力の増強を図っている。しかしGCCがSingle Unity(単一同盟)を結成し、強い共同戦力を持つことは本当に可能であろうか?GCC各国の君主はいずれも個性が強い。歴史的に見ても君主国同志の同盟は合従連衡策の一つでしかなく、まして軍事力を一本化することは同盟の最強国(GCCの場合はサウジアラビア)が指揮権を握らなければ機能しない。さらに言うとすれば人口が少ないうえに、社会・経済のあらゆる側面で外国人労働力に頼っているこれらの国では一般市民が兵力として使いものになるとは思えない。もっと厳しい言い方をするなら、各国の一般市民が彼らの支配者(王家・首長家)に忠誠心を抱いているなどと期待するのはどだい無理な話ではないだろうか。


 筆者はリヤド駐在当時の1999年に「シマウマとライオンと巨象-ガルフお伽噺」と題するエッセイを某業界誌に寄稿し、その中でGCCをジャングルの中の草原で生活するシマウマの群れに例えた。お伽噺の要旨は以下のとおりである 。


 『あるところにガルフと呼ばれる広い草原があった。そこでは豊かな草に囲まれてシマウマの群れがのんびりと暮していた。しかし草原の外れのジャングルに住む野蛮なライオンが彼らを悩ませていた。ライオンが襲ってくるとシマウマは尻を外側に向けて円陣を作り、後ろ足を蹴り上げてライオンを追い払おうとするのであった。時には執拗なライオンの襲撃で犠牲も出る。困ったシマウマは巨象にお願いしてライオンを追い払ってもらうことにした。さすがのライオンも象には勝てず、シマウマ達は安心して暮らすことができた。ただ彼らの唯一の悩みは大食漢の巨象が大量の草を食べ、また巨体で走り回るため草原が荒らされることであった。しかし身の安全のためには選択の余地はなかったのである。』


 ここで言うライオンとは当時のイラクであり、巨象は米国。そして豊かな草は石油と天然ガスであり、象が踏み荒らす草原とはイスラム文化のことである。エッセイを書いてから10年以上経ったがお伽噺の世界は今も殆ど変わっていない。配役を現代に置き換えるとすればライオンはイランである。そして米国と言う巨象はシマウマの傍を離れ別な場所に移りつつある。巨象に代わってライオンに挑みかかっているのはイスラエルという狼の群れである。ライオンをジャングルに追い込む狼はシマウマにとって当面の味方ではある。しかしライオンが姿を消した後、狼が豹変してシマウマを襲わないという保証はない。GCCは昔も今も、そして将来もひ弱なシマウマでしかないのである。


(完)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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2012年02月16日

下記のデータベースを更新しました。

・Moody's, S&Pソブリン格付けリスト(2012年2月16日現在)
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-G-3-90aSovereignRatingList.pdf

・クウェイト第30次内閣閣僚名簿
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/4-2kuwaitcabinet.pdf

・サバーハ家家系図
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-2KuwaitSabah.pdf

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2012年02月15日

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