2013年09月
2013年09月23日
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0279MenaRank15.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
5.主要国の分野別競争力(レーダーチャート)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/15-G02.pdf 参照)
MENAの主要5カ国(エジプト、トルコ、サウジアラビア、イラン及びUAE)と日本、中国の分野別競争力を比較してみる。ここではこれら7か国を総合世界ランクが近い国同士で3つのグループに分け、レーダーチャート図によって各国の競争力の特徴を比較検討する。
レーダーチャート図は最も外側が世界順位1位であり内側の中心は世界150位である。また最上段の総合順位以下時計周りの1から12の数字は各分野を示している。各分野の世界順位を結ぶ輪が各国の状況である。レーダーチャートの輪が外側に広がっているほど世界での順位が高く、また輪の形が円に近いほど各分野で平均した競争力があることを示している。
まず日本(総合世界10位)とUAE(総合世界19位)を比較すると、日本は「3.マクロ経済の安定性」が大きく落ち込んでいるが、その他の項目はほぼ世界の20位前後であり特に「10.市場規模」、「11.ビジネスの洗練度」、「12.イノベーション」では世界トップクラスである。これに対してUAEは「2.インフラ」、「3.マクロ経済の安定性」、「6.商品市場効率」、「7.労働市場効率」の4項目が世界10位以内であり、部分的には日本を上回っている項目が少なくない。しかし同国は「4.保健及び初等教育」、「5.高等教育及び職業訓練」或いは「10.市場規模」などが世界40位前後と劣っている。「マクロ経済の安定性」でUAEが世界7位に対し日本が世界127位と両国の格差が大きいのはUAEが無借金体質であるのに比べ、日本は国債の対GDP比率が世界で最も高い200%近くに達することが主な理由であろう。
次にサウジアラビアと中国を比べると総合順位はそれぞれ20位、29位である。12項目のうち中国がサウジアラビアを上回っているのは「4.保健及び初等教育」、「7.労働市場効率」及び「10.市場規模」の3項目だけであり、その他の9項目はサウジアラビアが中国を上回っている。市場規模の順位格差については説明するまでもないが、労働市場効率に関しては、サウジアラビアでは宗教上の制約により女性の就労率が低いため市場効率が悪いとされているのである。
トルコとイランとエジプトは共に人口7千~8千万人を有するMENAの大国である。3カ国の総合ランクはトルコ44位、イラン82位、エジプト118位であり3カ国の間にかなり大きな格差がある。3カ国に共通しているのは「10.市場規模」の世界ランクが高い(トルコ16位、イラン19位、エジプト29位)一方、「7.労働市場効率」のランクは世界148カ国中の最低レベル(トルコ130位、イラン145位、エジプト146位)と言うことである。
(完)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2013年09月22日
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
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(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
4.MENAの分野別競争力(続き)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/15-T03.pdf 参照)
(7) 労働市場効率(Labor market efficiency)
世界6位のカタールがMENAトップである。UAE(世界9位)、バハレーン(同19位)、オマーン(同28位)がこれに続いている。しかしMENAのこの分野における世界順位は概して低く、アルジェリア(147位)、エジプト(146位)、イラン(145位)、イエメン(141位)、リビア(136位)、チュニジア(132位)、トルコ(130位)など世界148カ国の中でも最低クラスの国が多い。このためMENAの平均順位は95位であり12の指標の中では最も低い。
(参考:米国4位、日本23位、中国34位)
(8)金融市場の洗練度(Financial market sophistication)
MENAではカタールが最も洗練された金融市場と評価されており世界13位である。そのほかではオマーン(世界21位)、イスラエル(22位)などが世界競争力の高い国とされている。金融活動が活発なUAEは世界24位、バハレーンは同25位である。
(参考:米国10位、日本23位、中国54位)
(9)技術的即応性(Technological readiness)
この分野では世界ランク23位のイスラエルがMENAトップである。続いてUAE(世界28位)、カタール(同31位)、バハレーン(32位)、サウジアラビア(41位)と続いている。一方、イラン、アルジェリア、リビア、エジプト及びイエメンは世界100位以下である。
(参考:米国15位、日本19位、中国85位)
(10)市場規模(Market size)
市場規模の競争力ランクではトルコが世界16位、イラン19位、サウジアラビア23位、エジプトが29位である。この指標は人口規模と密接に関係しており、MENAの人口大国が上位に並んでいる。これに対してUAE(44位)、カタール(60位)、クウェイト(66位)など湾岸産油国は一人当たりの購買力は高いが、人口の絶対数が少なく、市場規模の競争力は高くない。
(参考:米国1位、中国2位、日本4位)
(11)ビジネスの洗練度(Business sophistication)
カタールがMENA1位(世界10位)であり、これに続くのがUAE(16位)、イスラエル(23位)、サウジアラビア(28位)である。一方、イラン(104位)のように経済制裁を受けている国々は、欧米の経営ノウハウの流入が遅れており、洗練度が低く競争力は見劣りすると評価されている。
(参考:日本1位、米国6位、中国45位)
(12)イノベーション(Innovation)
イスラエルは世界3位であり、技術先進国としての評価が定着している。同国に次ぐMENA2位はカタール(世界16位)、以下UAE(28位)、サウジアラビア(30位)であり、MENA1位のイスラエルと2位以下の格差は大きい。なおGCC加盟国の中でクウェイトは118位と際立って評価が低い。イエメンは世界最下位であり、リビア、アルジェリア、レバノン、エジプトなど100位以下の国も少なくない。アラブ諸国はイノベーション分野では後進地域と見なされているようである。
(参考:日本5位、米国7位、中国32位)
(続く)
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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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2013年09月21日
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(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
4.MENAの分野別競争力
冒頭に触れた通り世界競争力指数は「制度機構」から「イノベーション」まで12の分野について世界148カ国を順位付けている。各分野毎のMENA各国の世界順位は概略以下のとおりである。
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/15-T03.pdf 参照)
(1) 制度機構(Institutions)
MENAトップはカタールで世界順位は4位と非常に高い。同国に次ぐのはUAE(世界11位)、オマーン(同13位)、サウジアラビア(同20位)であり、これらGCC諸国は世界的に見ても高い水準である。但し同じGCC構成国でもクウェイトは世界49位であり6カ国の中では見劣りがする。
(参考:日本17位、米国35位、中国47位)
(2) インフラ(Infrastructure)
UAEは世界5位であり非常に評価が高い。これに次ぐのがカタール28位、バハレーン30位、サウジアラビア31位であり、MENA諸国の中ではUAEが飛び抜けている。
(参考:日本9位、米国15位、中国48位)
(3) マクロ経済環境(Macroeconomic environment)
クウェイトが世界3位。以下サウジアラビア(4位)、オマーン(5位)、カタール(6位)、UAE(7位)である。GCCの5カ国が世界の3位から7位を占めている。これら各国に続くのがリビア(16位)、バハレーン(21位)である。GCC6カ国は国家財政の大半を石油収入に依存しており、いずれも絶対君主制国家という共通点がある。原油価格が高い水準を保ち、さらに「アラブの春」の民主化運動の中でもバハレーン以外は動揺が少なかったことが評価されている。これに対してヨルダン(138位)、エジプト(140位)、レバノン(148位)などは世界148カ国中の最低ランクにとどまっている。
(参考:中国10位、米国117位、日本127位)
(4) 保健および初等教育(Health and primary education)
この分野では世界25位のカタールがMENAトップである。これに次ぐのはレバノン(28位)、イスラエル(38位)、バハレーン(44位)である。一方、エジプト(100位)、リビア(120位)、イエメン(129位)など世界ランクの低い国も少なくなく、MENA諸国の間にはかなりの格差がある。
(参考:日本10位、米国34位、中国40位)
(5) 高等教育及び訓練(Higher education and training)
MENAトップはカタール(世界29位)である。これに次ぐのがイスラエル(同34位)、UAE(35位)、レバノン(45位)、サウジアラビア(48位)である。アルジェリア(101位)、モロッコ(102位)、リビア(104位)、エジプト(118位)、イエメン(144位)の5カ国はこの分野の順位が100位以下である。
(参考:米国7位、日本21位、中国70位)
(6) 商品市場効率(Goods market efficiency)
この分野ではカタールが世界3位でMENAのトップである。UAEがカタールに次ぐ世界4位である。これら2カ国に続くのがオマーン(18位)、バハレーン(19位)でGCCの4カ国が上位を占めている。同じGCC加盟国であるがクウェイトは世界90位と非常に低い。地域の大国トルコ、イラン、エジプトの順位はそれぞれ43位、110位、119位である。
(参考:日本16位、米国20位、中国61位)
(続く)
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