2013年10月

2013年10月31日

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元本社重役の限界
 日本オイルエンジニアリング(JOE)の業績は回復するどころか下降線をたどる一方であった。ただ競合製品に押され業績が急速に悪化するメーカー或いは不良貸し付けが表面化し一気に倒産に追い込まれる銀行のようなケースと異なり、エンジニアリング会社の場合、業績は真綿で首を絞めるように徐々に悪化する。受注が低迷しても人材と蓄積した技術が売り物であるエンジニアリング会社では人件費に手がつけにくいからである。このため社員に危機意識が生まれず厄介である。合理化委員会なるものを立ち上げたが、話が人員整理に及ぶと「エンジニアリング会社は人材が命。希望退職募集などもっての他。」と技術サイドからは猛烈な反発を食らう。特に石油開発部門の技術屋には、自分たちが日本の石油資源の将来を担っている、と言う強烈なプライドがあり、業績低迷は経営者の能力不足だと言い張る。多少とも世間の荒波にもまれた筆者の目には世間知らずの甘えにしか見えないが、彼らは本当の世間知らずであるだけに始末が悪いのである。


 そのような中で親会社のアラビア石油が営業担当の専務取締役を会長として送り込んできた。現場の技術屋たちは親会社のテコ入れに大いに期待した。そして新会長自身も就任の挨拶で、自分には石油業界に強い人脈があるので先頭に立って仕事を取ってくる、と宣言した。営業経験の長い彼が顧客である石油精製業界と深いつながりを持っていることは間違いがなかった。


 しかし筆者自身は余り楽観していなかった。と言うのは精製業界にいる友人或いは仕事柄知己を得た業界紙の記者に聞く限り、アラビア石油に対する精製業界の評判が必ずしも良くなかったからである。それは本稿の第6回でも触れたとおり、アラビア石油のカフジ原油は硫黄分が多くガソリン溜分の少ない重質原油であり、日本の市場にマッチしていなかったことが最大の理由であったが、もう一つの理由はエネルギー自給率の向上を至上命題とする通商産業省(現経済産業省)が精製設備新設の許認可権をちらつかせカフジ原油を半ば強制的に引き取らせていたことにあった。精製業界はアラビア石油を政府がバックアップする企業とみなしていた。実際アラビア石油の社長が官僚の天下りであったからそのように見られるのも当然だったと言える。


 アラビア石油の営業担当専務が精製業界へのカフジ原油の売り込みに苦労したしたことは間違いないであろう。しかし相手側にとっては彼の肩書がアラビア石油専務取締役であったからこそ義理を欠かない対応をしていただけであり、JOE会長としての彼には何の義理もない訳である。そのようなことは企業社会では当たり前のことであり筆者が改めて言うまでのことはないであろう。


 不幸にして新会長の営業努力は結実しなかった。技術屋たちは失望し以前にも増して親会社から派遣された経営陣に対して不信感を抱くようになった。業績は年を経るごとに益々悪化していった。そのような中で筆者は2年後の1995年、別の子会社に移籍したのである。JOEはその1年後に大規模なリストラを余儀なくされた。筆者は後任となったJOE生え抜きの新管理部長から度々リストラの有様を聞かされたが、それはまさに修羅場だったようである。そのため彼自身も結局リストラが一段落したところで自主退職したほどであった。


 1989年からの数年間を振り返るとなぜか事態が急変する前に転勤を繰り返していることになる。即ちマレーシア赴任の前後を考えると、湾岸戦争の騒動に巻き込まれる直前に東京本社からマレーシアに転勤しており、また本格的なマレーシア撤退、つまり現地事務所を閉鎖し、資機材を売り払い、現地従業員を解雇する前に東京に帰任している。今回のJOEの場合も大規模な人員整理に手をつける前に別の子会社に配置換えになった。転勤はすべて会社の人事命令によるものであり、筆者はその命令を一度たりとも拒んだことはない。全ては流れに身を任せただけのことである。その結果、修羅場或いは愁嘆場を経験しなかったことは偶然のめぐりあわせとしか言いようがない。但しそのことに対して今でもかすかながら忸怩たる思いを覚えることがある。自分でも理由は解らないがそう思うのである。


 JOEに勤務した1993(平成5)年5月から1995(平成7)年5月までの2年間、世間では皇太子ご成婚(平成5年6月)、田中角栄元首相死去(同年12月)、村山内閣発足(平成6年6月)、大江健三郎ノーベル文学賞受賞(同年10月)、阪神・淡路大震災(平成7年1月)、地下鉄サリン事件(同年3月)などの出来事があった。


(続く)


(追記)本シリーズ(1)~(20)は下記で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0278BankaAoc.pdf 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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2013年10月30日

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2013年10月29日

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(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0286MenaRank8.pdf

(MENAなんでもランキング・シリーズ その8)


 中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)


 アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、


 これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム諸国会議機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。


 第8回のランキングは世界経済フォーラム(World Economic Forum, WEF)が行った「世界男女格差報告2013(The Global Gender Gap Report 2013)」からMENA諸国をとりあげて比較しました。


1.「世界男女格差報告2013」について
 「世界男女格差報告2013(The Global Gender Gap Report 2013)」(以下「2013年版報告書」)を発表した「世界経済フォーラム」(World Economic Forum, WEF)は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利団体であり、毎冬スイスのダボスで行われる「ダボス会議」の主催者としてよく知られている。


 「2013年版報告書」は世界136カ国を対象に経済、教育、健康、政治の4つの分野について、世界或いは各国の公的機関が公表する男女別のデータに基づき、それぞれの分野の男女間の格差を指数化し順位付けを行ったものである。
*WEFホームページ:http://www.weforum.org/videos/global-gender-gap-report-2013 


(1)比較対象される分野とその内容
 対象とされるのは以下の4つの分野であり、各分野にはそれぞれ二つ乃至五つの比較項目がある。

I. 経済参画分野:経済活動への参加度及び参画の機会(Opportunity)に関する男女格差
   比較項目:(1)労働参加比率、(2)同一労働賃金格差、(3)平均所得格差、
          (4)幹部職比率、(5)専門・技術職比率


II. 教育分野:教育の機会に関する男女格差
   比較項目:(1)識字率、(2)初等教育就学率、(3)中等教育就学率、(4)高等教育就学率


III. 健康・寿命分野:健康と寿命に関する男女格差
   比較項目:(1)新生児男女比率、(2)平均寿命


IV. 政治参画分野:政治参画の度合に関する男女格差
   比較項目:(1)女性議員比率、(2)女性閣僚比率、
          (3)過去50年間の女性元首(首相等)在任期間


(2)指数化の方法と順位付け
 136カ国について上記四つの分野の各比較項目に関する男女それぞれの数値或いは比率のデータを抽出し、この男女のデータについて男性を1とした場合の女性の指数を算定する(最大値は1とする)。この指数の意味は、指数1の場合男女が完全に平等であることを意味しており、指数が低くなればなるほど男女の格差が大きいことを示している。


 各比較項目の指数を加重平均したものを、その分野の指数とする。最後に4つの分野の指数を加重平均したものがその国の格差指数であり、136カ国の指数を上位から順に総合順位を付けるのである。


(続く)


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