2013年11月

2013年11月24日

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)で一括ご覧いただけます。

 http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0289MenaRank13.pdf


(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)

3.調査項目毎のランク(続き)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/13-T02.pdf参照)
(6)Protecting Investors(投資家保護)
 MENAで投資家が最も確実に保護されているのはイスラエルで同国の世界ランクは第6位である。これに続くのがサウジアラビア(世界ランク22位)、トルコ(34位)、チュニジア(52位)である。これに対しランクが低いのはヨルダン(170位)及びリビア(187位)である。中東のビジネスハブとして近年脚光を浴びているUAEはオマーン、レバノン及びアルジェリアと同じく世界98位で投資家保護の評価は高くない。同国のドバイには日本から数多くの企業が進出しているにもかかわらず投資家保護が十分でないことは懸念すべき材料である。またカタールはUAEよりもさらにランクが低い世界128位である。
(参考:日本16位、米国6位、韓国52位、中国98位)


(7)Paying Taxes(徴税)
 この項目ではUAEが世界1位、カタールが2位、サウジアラビアが3位であり世界のベスト3を独占している。さらにバハレーン(7位)、オマーン(9位)、クウェイト(11位)などGCC6カ国が世界の上位に名を連ねている。GCC各国では個人所得税が免除されているほか法人税も非常に低い。この点がビジネス環境として高く評価されているようである。なおこの項目のMENAの世界平均順位は68位であり10項目の中では最も順位が高い。但し一方ではイラン(139位)、エジプト(148位)、アルジェリア(174位)など税負担のレベルが高い国がある。MENAは一部の産油国とその他の国で徴税レベルの格差が大きい。因みにこの項目の日本の世界順位は140位であり課税水準が高いことを示している。
(参考:日本140位、米国64位、韓国25位、中国120位)


(8)Trading Across Borders(通関)
事業用の資本財を輸入し、或いは完成した製品を輸出するためには税関手続きが簡単であることが望ましい。この分野ではUAEが世界第4位であり評価が高い。ドバイのジュベール・アリ自由貿易ゾーンはソフト、ハードの両面で周辺国の追随を許さない3国間貿易の拠点であり、このことが高い評価につながっている。これに次ぐのがイスラエル(世界10位、以下同じ)で輸出立国を運命付けられた同国の政策に負うところが大きいのであろう。以下チュニジア(31位)、モロッコ(37位)、オマーン(47位)と続いている。エジプト(83位)、トルコ(86位)はほぼ世界の平均レベルである。一方評価が低いのはイラク(179位)である。
(参考:日本23位、米国22位、韓国3位、中国74位)


(9) Enforcing Contracts(契約強制力)
 この項目のトップはトルコ(世界38位、以下同じ)で、これに次ぐのがイラン(51位)である。これに対しサウジアラビア、UAEはそれぞれ世界127位、100位と低く一見意外な評価と言える。この分野のMENA各国の評価は総合順位とかなり異なっている。GCC各国は上記サウジアラビア、UAEの他、クウェイト(119位)、バハレーン(122位)、オマーン(107位)など全て100位以下である。GCC諸国は契約強制力の分野では世界レベルからかなり遅れているようである。
(参考:日本36位、米国11位、韓国2位、中国19位)


(10)Resolving Insolvency(清算)
 事業の撤退を決断した場合、清算手続きをスムーズに行う必要があり、起業(項目1参照)と同様外国投資家にとっては重要な要素である。この面ではバハレーンが世界27位であり、MENA地域では最も高い評価を得ている。これに続くのがイスラエル(世界35位、以下同じ)、カタール(同36位)、チュニジア(同39位)。
 これに対しイラク、リビア及びパレスチナ自治政府は世界最下位(189位)である。またイラン(129位)、トルコ(130位)、エジプト(146位)なども世界ランクが低く、GCCのサウジアラビア及びUAEもそれぞれ106位、101位であり評価はかなり厳しい。
(参考:日本1位、米国17位、韓国15位、中国78位)


(続く)


本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp




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2013年11月23日

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2013年11月22日

(注)本レポート上下は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0288JapanOmanIranDiplomacy.pdf

(上) カブース国王、イランを訪問
(上) 岸田外相、イランを訪問
(下) イランの天然ガスを取り込むオマーン
(下) オマーンと日本は似た者同士


イランの天然ガスを取り込むオマーン
 カブース国王のイラン訪問時に取り交わされた覚書の中で筆者は天然ガス供給の覚書に注目したい。これはホルムズ海峡に海底パイプラインを敷設し、25年間にわたり600億ドル相当の天然ガスをイランからオマーンに輸出すると言う構想である。
 

 イランは南パルスガス田(カタールのノースフィールドとつながる世界最大のガス田)を含め国内に多数のガス田があるが、西欧諸国の経済制裁のため先端技術を必要とするLNG設備を建設することができない。一方、オマーンは天然ガス資源が枯渇傾向にあり国内の発電用燃料が不足、また輸出用LNG設備の稼働率も低迷していると言われる。


 両国の事情を勘案すると天然ガスパイプラインは一石二鳥或いは三鳥の計画と言えよう。イランにとって天然ガス輸出は手っ取り早い外貨獲得手段である。また天然ガス不足に悩むオマーンは現在ドルフィンパイプラインによりカタールから天然ガスを輸入しているが中継地のUAEのガス需要が急増している。そのため代替輸入先としてのイランに注目している。LNGについては、もしイランが自国産天然ガスをオマーンで委託処理しLNGとして輸出することができれば、新たなる外貨獲得源になると共に自国のLNG設備新設(それは巨額の費用と長い年月が必要である)までの時間稼ぎが可能となる。オマーンにとっても既存LNG設備の稼働率が上がり、両国にとって一石二鳥のアイデアである。


 これらはいずれも現在の経済制裁が緩和されることが条件であるが、イランとEU3+3の交渉に明るい兆しが見えており、あながち夢物語とは言えない。イランとオマーンはそのような状況を見越して協力覚書を交わしたに違いない。


オマーンと日本は似た者同士
 突拍子もない仮説と言われるかもしれないが筆者は日本とオマーンはイランに対するエネルギーあるいは国際外交関係で似たような立場にあると考える。


 エネルギー関係で見ると欧米先進国に歩調を合わせたイラン経済制裁の結果日本のイランからの原油輸入は激減している。石油の9割を中東に依存する日本にとってイラン原油の輸入削減は痛手である。本心を言えば対イラン経済制裁は一刻も早く緩和してもらいたいところである。米国には国産のシェールオイルが、またヨーロッパ諸国にはリビア、アフリカ、南米などの輸入ルートがある。欧米先進国にとってイラン経済制裁の影響は少ない。困っているのは日本だけなのである。オマーンも国際社会のイラン経済制裁が緩和されれば大きなメリットがあることは上記の天然ガス供給覚書の項で述べた通りである。


 外交関係でみると日本は欧米先進国に引っ張られ不本意ながらイラン制裁に同調している格好である。日本は米国及び西欧キリスト教国家のイスラム嫌い(Islam phobia)、イラン嫌いにつきあわされているのであり、日本とイランは敵意どころか親近感を持っていると考えて良いのではなかろうか。同じようなことがGCC加盟国としてのオマーンにも言えるのである。オマーン以外のGCC5カ国(サウジアラビア、UAE、クウェイト、カタール及びバハレーン)はいずれもスンニ派でありシーア派のイランを敵視している。スンニ派が多数を占めるバハレーン或いは国内に少なからぬシーア派を抱えるサウジアラビアやクウェイトは特に警戒心が強い。それに対してオマーンはスンニ派、シーア派いずれにも属さない(イバード派)。従ってオマーンはサウジアラビアが音頭を取るイラン敵視政策に対しては一線を画している。


 あえて付け加えれば宗教問題だけではなくオマーンは統治の正統性についても他のGCC諸国と一線を画しているのである。即ちオマーンは「スルタン国」と言う国名にイスラム教国家としての歴史的正統性を主張しているのであり、サウジアラビアのような「世俗王制国家」或いはUAE、クウェイトのような「首長国」(オスマントルコからお墨付きを得た地方豪族)とは異なることに強い誇りを持っているのである。その点は日本国民が欧米キリスト教国家とは歴史も文化も異なる「東洋」の「天皇制国家(勿論立憲君主制ではあるが)」を自負していることと似通っている。


 日本とオマーンは似た者同士なのである。

(完)


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2013年11月21日

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)で一括ご覧いただけます。

 http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0289MenaRank13.pdf


(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)

3.評価項目毎のランク
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/13-T02.pdf 参照)
評価の対象となっている10項目についてMENA各国のランクを概観すると以下の通りである。


(1)Starting a Business (起業)
 事業をスタートさせる難易度である「Starting Business(起業)」についてMENA諸国の中で最も起業しやすいとされた国はイスラエル(世界順位35位、以下同じ)である。これに次ぐのがUAE(37位)、モロッコ(39位)、エジプト(50位)の順である。チュニジア、オマーンは70位台であり、またサウジアラビア、トルコ、バハレーンまでが100位以内である。イラン他11カ国(含むパレスチナ)は100位以下であり、アルジェリア、イラク、リビアは160位以下で世界でも最下位グループである。
 因みに米国、韓国はそれぞれ20位、34位と高く、日本は120位でレバノンとおなじであり、中国(158位)はクウェイト(152位)よりやや低いランクである。


(2)Dealing with Construction Permits(建設許可取得)
 進出国の関係政府機関から工場を建設するための許認可を取り付けるための難易度を見ると、バハレーン(世界順位4位、以下同じ)とUAE(5位)が世界のトップテンに入っている。この2カ国に続くのがサウジアラビアの17位であるが、イラクがMENA4位で世界20位であることは注目される。この他カタール(23位)が世界の上位に入っている。カタールに次ぐのはオマーン(世界69位)であるが両国の間は大きく開いている。同じGCC加盟国であるクウェイトはここでも世界133位と順位がかなり低い。

 一方MENAでランクが最も低いのはシリア及びリビアの189位でありこれは世界最下位でもある。MENAの大国であるトルコ(148位)、エジプト(149位)、イラン(169位)も低い。またMENA総合1位で世界35位のイスラエルもこの項目では世界140位にとどまっている。

(日本91位、米国34位、韓国18位、中国185位)


(3)Getting Electricity (電力事情)
 企業特にメーカーにとって進出先で安価で安定した電力が得られるか否かは事業の成否を決定する大きな要素と言える。MENAトップはUAE(世界順位4位、以下同じ)であり、サウジアラビア(15位)、カタール(27位)の各国がこれに続いている。世界40~50位前後にはイラク(39位)、ヨルダン(41位)、トルコ(49位)、レバノン(51位)、バハレーン(52位)が並んでいる。フセイン時代の古い設備を抱え電力事情が良くないとされているイラクがトルコよりも評価が高いことは興味深い。MENA諸国はこの項目の世界順位が比較的高く平均順位は71位で世界189カ国の中では上位グループに入っている。
(日本26位、米国13位、韓国2位、中国119位)


(4)Registering Property(登記)
 この分野ではUAE世界4位でありサウジアラビアは世界14位である。MENAではこの2カ国が際立って順位が高い。両国に続くのはオマーン(世界21位)、バハレーン(32位)、カタール(43位)であり、GCC諸国がMENAの上位を占めている(但しクウェイトは90位)。

 これに対して登記の難易度が高いとされているのは、リビア(189位、世界最下位)、アルジェリア(176位)、イラン(168位)などである。この分野のイスラエルの順位は世界151位であり、上記(2)の建設許可取得とともに行政手続きがかなり煩雑であることをうかがわせる。後述するように同国は信用取得、投資家保護、通関分野のランクが世界のトップクラスでありことと比べて落差が大きい。
(日本66位、米国25位、韓国75位、中国48位)


(5)Getting Credit(信用取得)
 イスラエルは世界順位が第13位であり信用取得に関してはMENAトップである。イスラエルに続くのはサウジアラビア(55位)であり、この項目に関してはイスラエルがずば抜けている。UAE、エジプト、トルコ、オマーン、エジプト及びイランは世界86位の同順位である。一方信用取得が困難とされているのはリビア(186位)、イラク、シリア(共に180位)、ヨルダン、イエメン(共に170位)、パレスチナ自治政府(165位)である。因みにこの分野のMENAの世界平均順位は120位であり10項目の中では最も低く、MENAは信用取得が困難な地域であると言える。
(日本28位、米国3位、韓国13位、中国73位)


(続く)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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