2014年09月
2014年09月24日

(UAE)中央銀行総裁、Al SuwaidiからMubarak Al Mansouriに交替。
(サウジ)第84回建国記念日迎えアラブ圏での存在感増す。
(バハレーン)行政区と選挙区を改編、中央州は廃止。
(サウジ)スポンサー制度2年間限定で中小企業苦境に。
(GCC)世界インフラ投資指標でカタール世界2位、UAE4位、サウジ12位。
(クウェイト)石油増産のコンサル入札にExxonMobilなど5社指名。
(カタール)2022年ワールドカップ開催に独前協会長が懸念表明、釈明に必死のカタール。
2014年09月23日
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0324MenaRank15.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
4.MENAの分野別競争力(続き)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/15-T03.pdf 参照)
(7) 労働市場効率(Labor market efficiency)
世界8位のUAEがMENAトップである。カタール(世界10位)、バハレーン(同26位)、オマーン(同48位)がこれに続いている。MENAのこの分野における世界順位は概して低く、イラン(142位)、エジプト(140位)、アルジェリア(139位)、イエメン(138位)、リビア(133位)など世界148カ国の中でも最低クラスの国が多い。このためMENAの平均順位は95位であり12の指標の中では最も低い。
(参考:米国4位、日本22位、中国37位)
(8)金融市場の洗練度(Financial market sophistication)
MENAではカタールが最も洗練された金融市場と評価されており世界13位である。そのほかではUAE(世界17位)、イスラエル(20位)などが世界競争力の高い国とされている。金融活動が活発なバハレーンは31位である。
(参考:米国9位、日本16位、中国54位)
(9)技術的即応性(Technological readiness)
この分野では世界ランク15位のイスラエルがMENAトップである。続いてUAE(世界24位)、カタール(同31位)、バハレーン(34位)、サウジアラビア(45位)と続いている。一方、イラン、アルジェリア、リビア及びイエメンは世界100位以下である。
(参考:米国16位、日本20位、中国83位)
(10)市場規模(Market size)
市場規模の競争力ランクではトルコが世界16位、サウジアラビア20位、イラン21位、エジプトが29位である。この指標は人口規模と密接に関係しており、MENAの人口大国が上位に並んでいる。これに対してUAE(46位)、カタール(59位)、クウェイト(67位)など湾岸産油国は一人当たりの購買力は高いが、人口の絶対数が少なく、市場規模の競争力は高くない。
(参考:米国1位、中国2位、日本4位)
(11)ビジネスの洗練度(Business sophistication)
カタールがMENA1位(世界12位)であり、これに続くのがUAE(14位)、イスラエル(26位)、サウジアラビア(30位)である。一方、イラン(110位)のように経済制裁を受けている国は、欧米の経営ノウハウの流入が遅れており、洗練度が低く競争力は見劣りすると評価されている。
(参考:日本1位、米国4位、中国43位)
(12)イノベーション(Innovation)
イスラエルは世界3位であり、技術先進国としての評価が定着している。同国に次ぐMENA2位はカタール(世界14位)、以下UAE(24位)、サウジアラビア(33位)であり、MENA1位のイスラエルと3位以下の格差は大きい。なおGCC加盟国の中でクウェイトは111位と際立って評価が低い。リビアは世界最下位であり、イエメン、エジプト、レバノンなど100位以下の国も少なくない。アラブ諸国はイノベーション分野では後進地域と見なされているようである。
(参考:日本4位、米国5位、中国32位)
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2014年09月20日
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0324MenaRank15.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
4.MENAの分野別競争力
冒頭に触れた通り世界競争力指数は「制度機構」から「イノベーション」まで12の分野について世界144カ国を順位付けている。各分野毎のMENA各国の世界順位は概略以下のとおりである。
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/15-T03.pdf 参照)
(1) 制度機構(Institutions)
MENAトップはカタールで世界順位は4位、同国に次ぐのはUAE(世界7位)であり、この両国は世界トップレベルである。MENA3位以下は、オマーン(同24位)、サウジアラビア(同25位)、バハレーン(同29位)であり、これらGCC諸国は世界的に見ても高い水準である。但し同じGCC構成国でもクウェイトは世界55位であり6カ国の中では見劣りがする。
(参考:日本11位、米国30位、中国47位)
(2) インフラ(Infrastructure)
UAEは世界3位であり非常に評価が高い。これに次ぐのがカタール24位、サウジアラビア30位、バハレーン31位、オマーン33位であり、MENA諸国の中ではUAEが飛び抜けている。
(参考:日本6位、米国12位、中国46位)
(3) マクロ経済環境(Macroeconomic environment)
カタールが世界2位。以下クウェイト(3位)、サウジアラビア(4位)、UAE(5位)、オマーン(6位)である。GCCの5カ国が世界の2位から6位を占めている。これら各国に続くのがアルジェリア(11位)、リビア(41位)、バハレーン(47位)である。GCC6カ国は国家財政の大半を石油収入に依存しており、いずれも絶対君主制国家という共通点がある。原油価格が高い水準を保ち、さらに「アラブの春」の民主化運動の中でもバハレーン以外は動揺が少なかったことが評価されている。これに対してイエメン(140位)、エジプト(141位)、レバノン(143位)などは世界144カ国中の最低ランクにとどまっている。
(参考:中国10位、米国113位、日本127位)
(4) 保健および初等教育(Health and primary education)
この分野では世界28位のカタールがMENAトップである。これに次ぐのはレバノン(30位)、UAE(38位)、バハレーン(40位)である。一方、エジプト(97位)、イエメン(116位)、リビア(119位)など世界ランクの低い国も少なくなく、MENA諸国の間にはかなりの格差がある。
(参考:日本6位、米国49位、中国46位)
(5) 高等教育及び訓練(Higher education and training)
MENAトップはUAE(世界6位)でMENA諸国の中では飛びぬけて高い。これに次ぐのがイスラエル(同36位)、カタール(38位)、ヨルダン(48位)、トルコ(50位)である。リビア(102位)、モロッコ(104位)、エジプト(111位)、イエメン(1139位)の4カ国はこの分野の順位が100位以下である。
(参考:米国7位、日本21位、中国65位)
(6) 商品市場効率(Goods market efficiency)
この分野ではUAE(世界3位)及びカタール(同4位)の2カ国が世界のトップレベルに評価されている。これら2カ国に続くのがバハレーン(21位)、オマーン(28位)でGCCの4カ国が上位を占めている。同じGCC加盟国であるがクウェイトは世界106位と非常に低い。地域の大国トルコ、イラン、エジプトの順位はそれぞれ43位、120位、118位である。
(参考:日本12位、米国16位、中国56位)
(続く)
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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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2014年09月19日
クウェイトのシェイク・サバーハ第一副首相兼外相は9月14日、パレスチナ自治政府の首都ラマーラを訪問、政治協力に関する覚書を締結したが、その機会に聖地エルサレムの神殿の丘にあるイスラムの聖地「岩のドーム」を訪問し祈りをささげた。上の写真はその時のものである。
「岩のドーム」は預言者ムハンマドが天使を従え天馬に乗って昇天したといわれる聖なる岩を内部に抱えた礼拝モスクである。イスラムでは預言者の生地でカーバ神殿のあるマッカ、預言者が布教活動を行って最後に亡くなったマディナに加え、預言者が昇天したとされるエルサレムを三大聖地としている。マッカとマディナはサウジアラビアにあるが、エルサレムはイスラエルが支配するヨルダン川西岸にある。
エルサレムはユダヤ教、キリスト教及びイスラムの三大一神教の共通の聖地であり、11世紀以降の十字軍遠征の時代にはキリスト教徒とイスラム教徒(ムスリム)の争いが繰り広げられ、またイスラエルが建国された20世紀以降はイスラエル(ユダヤ国家)とアラブ(イスラム国家)間の紛争の的となっている場所である。このためエルサレムの旧市街にイスラエル或いはアラブ諸国の首脳が足を踏み入れることは微妙な軋轢を生むことになる。
現在イスラエルはガザ、ヨルダン川西岸を含む全土を完全な支配下に置き、圧倒的な軍事力を背景にヨルダン川西岸では入植地を広げ、またガザ地区ではハマスをイスラム・テロ組織と断じ一方的な攻撃で多数のパレスチナ民間人を殺している。そしてエルサレムについても自らの利益に反する者の訪問を阻止してきた。
そのようなイスラエルの強硬姿勢から考えると、今回のクウェイト外相の岩のドーム礼拝は極めて異例の事態と言えるのではなかろうか。クウェイト外相はヨルダン政府差し回しのヘリでイスラムの聖地を礼拝している。当然イスラエル政府が了解しているわけであるが、イスラエルがなぜクウェイト外相にこのような寛容な態度を示したのかを考えると極めて興味深い。
クウェイトがイスラエルにとって全く脅威の無い取るに足らない国であるということが理由の一つであろう。サウジアラビアやイラン、トルコの外相であればイスラエルは岩のドーム訪問を認めるはずが無い。ただイスラエルを取り巻く政治環境は大きく変化しており、イスラエル政府もいつまでも従来の強硬姿勢一本槍では済まない状況であることが今回の対応の背景にあると考えられる。
ガザ地区におけるハマスとイスラエルの交戦。イスラエルは空爆の理由の一つにピクニック中のユダヤ人の少年3人、そして偵察中の兵士1名がハマスの支配地区に迷い込み殺されたことをあげ、その報復として「テロリスト」のハマス指導者をミサイル攻撃したと主張している。しかし封鎖された(いわば檻の中の)ガザ地区ではイスラエル側の100倍以上の死者が出ており、その大多数は無辜の市民である。これは誰が見ても大量虐殺そのものである。
さすがのヨーロッパ諸国もイスラエルの過剰防衛に辟易し不快感を隠さない。日本人の大多数も苦々しく感じているはずである。たとえイスラム・テロに対して強い嫌悪感を持っているにしても、である。イスラエルの肩を持つのは多分米国だけであろう。イスラエル政府も国際批判が高まっていることを薄々気づいているに違いない。今回のクウェイト外相に対する特別の配慮はおそらくそのためであろう、と筆者は推測する。
イスラエル外交は行き詰り、凋落の兆しが見えると考えるのは早計であろうか?
以上
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