2014年10月
2014年10月20日
(注)本シリーズ1~4回は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0327MenaRank12.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その12)
(MENAで最も平和な国、カタール!)
2. MENA諸国の2014年「世界平和指数」
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/12-T01.pdf 参照)
MENA19カ国の中で最も平和度が高いのはカタールであり、世界ランクでも162カ国中の22位に位置している。これはシンガポール、スペイン、台湾よりも高いランクである。因みに世界で最も平和度が高いとされる国はアイスランドであり、日本はデンマーク、ニュージーランド、オーストリア、スイス、フィンランド、カナダに次ぎ世界第8位で非西欧系諸国の中では最も高い。
MENA諸国でカタールに続いで平和指数が高いのはクウェイト(世界ランク37位)及びUAE(同40位)でありカタールとは少し離れている。カタールはMENAの中でも傑出して高い評価を得ていることがわかる。MENA4位以下10位まではヨルダン(世界56位)、オマーン(同59位)、モロッコ(同63位)、チュニジア(同79位)、サウジアラビア(同80位)、バハレーン(同111位)、アルジェリア(同114位)と続いている。
絶対君主制国家であるGCC6カ国は全てMENA上位10カ国に入っており、特にカタール、クウェイト及びUAEはMENAのベスト・スリーを独占している。そしてこれら上位3カ国に続くMENA4位から6位までのヨルダン、オマーン及びモロッコ、そして8,9位のサウジアラビア及びバハレーンはいずれも首長制、王制またはスルタン制の独裁君主制国家である。さらに上位6カ国は世界平和指数ランクの調査対象国162カ国の中間点(81位)を上回っている。このようにみるとMENAの君主制国家は域内の他の共和制或いは民主制国家に比べ平和の度合いが高いと同時に、世界的に見ても平和な国家であることが解る。
10位以下の国とその順位は以下の通りである。
アルジェリア(114位)、トルコ(128位)、イラン(131位)、リビア(133位)、エジプト(143位)、レバノン(146位)、イエメン(147位)、イスラエル(149位)、イラク(159位)と続いておりシリアは162位であるが、これは世界最下位である。
MENA19カ国の平均順位は103位で世界平均をかなり下回る水準である。カタールのような一部の国を除けばMENAは平和度の低い国が多いのが特色である。中でもイスラエルは経済、社会に関する世界ランクでは常に上位を占め、MENA諸国の中でも1,2位を争っている が、平和度の評価が極めて低いことは特徴的である。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2014年10月19日
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0328MenaRank3.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その3)
1.GDP成長率(2014/15年の見通し・予測)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/3-T01.pdf 参照)
(最も成長率の高いカタールは+6.5%!)
(1)2014年のGDP成長率
MENA18カ国のうち2014年のGDP成長率(見通し)が最も高いのはカタールの6.5%であり、これは中国の7.4%よりは低いものの世界平均の3.3%の2倍近い高い成長率である。カタールに次いで高い成長率を示しているのはサウジアラビアの4.6%、UAE4.3%、バハレーン3.9%などGCC各国が上位を占めている。オマーン、クウェイトを加えたGCC6カ国の平均成長率は4.0%でありMENA18カ国の平均1.6%を大きく上回っている。GCC諸国は高い油価に支えられ公共投資、民間消費など経済全般が好調であり他のMENA諸国と一線を画している(但しクウェイトだけは産油国でありながらMENA平均を下回る1.4%の低い成長率にとどまっている)。
GCC以外ではアルジェリア、ヨルダン、モロッコ、トルコの4カ国が3%台を維持しており、ほぼ世界平均の成長率である。2%台にはチュニジア(2.8%)、イスラエル(2.5%)、エジプト(2.2%)があり、この成長率は米国(2.2%)と同等またはそれ以上である。MENA18カ国のうちマイナス成長率の国はリビア(-19.8%)及びイラク(-2.7%)の2カ国であり、それ以外のMENA各国はすべてプラス成長率である(但しシリアはIMF発表値がない)。ちなみに日本の成長率は0.9%である。
(来年は今年より少し明るい!)
(2)2014年と2015年の成長率の比較
2014年と2015年のMENA各国の成長率を比較すると、最も大きく変化しているのはリビア(―19.8%→+15.0%)である。これは現在内戦状態にある石油生産を始めとする同国経済が来年は回復するとの前提に立っているためと考えられる。またイラクもー2.7%から+1.5%に改善すると見込まれており、この結果MENA18カ国(シリアを除く)のGDPはすべてプラス成長に転化し、2015年のMENAの平均成長率は+4.2%となる。これは中国の+7.1%には及ばないものの米国の3.1%を上回り、日本の来年の成長率見込み0.8%に比べると大きな差がある。
MENAのGDPの大きな部分を占めるのはサウジアラビアなどのGCC6カ国であるが、GCCの平均成長率は2014年の4.0%に対し2015年は4.1%と殆ど変わらず、サウジアラビアは逆に4.6%から4.5%へと成長率が若干鈍るものと予測している。その他GCCの中ではカタールの成長率は6.5%(‘14年)→7.7%(’15年)、UAE成長率は4.3%(‘14年)→4.5%(’15年)といずれも今年を上回る成長が予測されている。
なお米国、日本及び中国の場合は米国が今年より0.9%高い3.1%の成長が見込まれているのに対して、日本と中国はそれぞれ今年より0.1%(0.9%→0.8%)、0.3%(7.4%→7.1%)といずれも成長率が低下するとしている。米国はシェールガス・オイルの増産によりエネルギー自給の足場を確保しつつあり経済は堅調であるが、世界経済に本格的回復の兆しが見えない中でエネルギーを輸入し、製品の輸出に頼る貿易構造の日本と中国は苦しい状況が続くようである。
(米国と湾岸産油国を除き成長率は軒並み下方修正!)
(3)今回(10月予測)と前回(4月予測)の比較
IMFは今年4月の予測に対し今回は今年及び来年のGDPの成長率をいずれもほぼ全面的に下方修正しており、IMFは現在及び将来の世界経済に対して悲観的である。
今年の成長率見通しを前回と今回で比較すると、世界平均では前回の+3.6%に対して今回は+3.3%と0.3%ダウンしている。米国、日本、中国の3カ国もいずれも0.2~0.6%下方修正されている。MENA18カ国について見ると、平均では3.0%から1.6%に大幅ダウン、GCC6カ国平均も4.2%から4.0%へとわずかながら下落している。地域の大国であるイランは1.5%の横ばい、エジプトは2.3%→2.2%とわずかではあるがダウンする。このようななかでサウジアラビア、カタール及びトルコの3カ国は今年のGDP成長率が上方修正された数少ない国である。
さらに来年の成長率予想を前回と今回で比較すると、世界平均では3.9%から3.8%に下落している。MENA18カ国では平均1.3%ダウンしており、GCC平均も+4.2%から+4.1%へとわずかながらダウンしている。但しGCCの中でも主要な産油・ガス国であるサウジアラビア、UAE、カタールについては来年の成長率を上方修正している。また米国、日本、中国のうち日本と中国は下方修正されたが、米国は+3.0%から+3.1%に上方修正されている。IMFの見通しに関する限り来年は米国及び中東産油・ガス国の一人勝ちの様相を呈している。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(注)本シリーズ1~4回は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0327MenaRank12.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その12)
中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)
アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、
これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム諸国会議機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。
第12回のランキングは、NGOグループVision of HumanityがThe Economist Intelligence Unit (EIU、英国の経済誌エコノミストの一部門)のデータをもとに取りまとめた「The Global Peace Index」からMENA諸国をとりあげて比較しました。
*Vision of Humanityのホームページ:http://www.visionofhumanity.org/
1.「The Global Peace Index」について
Global Peace Indexは、各国の平和の程度およびそれを維持するための機能を指数化し、ランク付けしたものである。2007年に実施された第1回調査ではその対象は121カ国であったが、その後毎年着実に増え、今回の2014年版では162カ国を対象に調査が行われている。因みにMENA諸国についてはパレスチナ自治政府を除く19カ国全てが評価付けられている。
平和指数はEIU社の国別調査員と外部ネットワークの協力を得て作成されている。指数は小型破壊兵器(銃、小型爆発物など)の入手の容易さ、国防費、汚職、人権に対する尊重の度合いなど24項目をベースにして作成されたものである。
「世界平和指数」の査定結果には以下のような特徴が見られる。
・ 平和の度合いは収入、教育制度、地域一体化のレベル等の指標に関連している。
・ 平和な国の多くは政府の透明性が高く、汚職が少ない。
・ 小さいが安定した国は平和のランクが高い。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-Mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2014年10月17日
(サウジ)国連e-governmentランクで世界193カ国中36位 *
(サウジ)サウジ生まれの外国人子女の永住ビザ取得は困難、母親がサウジ女性の場合のみ特例。
(クウェイト)軽油、ガソリンの補助金撤廃、ガソリンはリッター当たり0.055KDから0.170KDに。
(UAE)ドバイ空港免税店売上は世界一の18億ドル、全世界の7.5%。
(GCC)今年の建設プロジェクト発注額1,800億ドルMEED Projects
*United Nations E-Government Survey 2014:
http://unpan3.un.org/egovkb/Portals/egovkb/Documents/un/2014-Survey/E-Gov_Complete_Survey-2014.pdf
(近日中に本サイトで詳細を解説します。)
2014年10月16日
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0328MenaRank3.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その3)
中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)
アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、
これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム諸国会議機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。
第3回のランキングはIMFが最近発表した「World Economic Outlook Database, October 2014」(以下WEO2014Oct)をベースに各国のGDPについて比較しました。IMFでは毎年4月及び10月に世界各国経済の基礎的数値の経年変化を公開しています。その中には経済成長率、ドル建て・各国通貨建てのGDP金額、一人当たりGDP、貿易額、財政収支など数多くのデータがあり、特に当年度或いは次年度の経済成長率は官庁、メディア等々で広く引用されています。
ここでは2011年から2015年までの名目GDP及び一人当たりGDP(いずれもドル建て)を取り上げ、また成長率については前回の4月版(以下WEO2014Apr)と比較してMENA各国の経済状況の変化を検証します。なおWEO2014OctではMENA19カ国1機関のうちシリア及びパレスチナ自治政府のデータは発表されていません。MENA各国に日本、米国及び中国のデータも加え、合わせて比較します。
(注)WEOホームページ:
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2014/02/
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp