2014年11月
2014年11月25日
(注)本レポートはブログ「マイライブラリー(前田高行論稿集)で一括してお読みいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0330MenaRank8.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その8)
3.分野別順位 (続き)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/8-T03.pdf参照)
(3)健康・寿命分野の男女格差
MENA諸国のこの分野における特徴は男女格差が比較的少ないことである。特に国別で見た場合トルコは世界1位であり、指数0.9796は男女間の格差が小さいことを示している。この分野は世界的に見ても男女の格差が少なくフランス、デンマーク、フィリピン、ナミビアなど約20カ国がトルコと同じ指数の世界1位で並んでいる。但し指数はあくまで同一国における男女の格差を示すものであって、先進国フランスと開発途上国ナミビアの健康・寿命のレベルが同じことを意味していないことに注意すべきであろう。
この分野はUAE(世界132位、指数0.9612)、クウェイト(同134位、0.9567)、カタール(同136位、指数0.9522)に対して、イエメンが117位(指数0.9668)であることに見られるように、医療福祉制度の充実した湾岸産油国が総合評価で世界最下位のイエメンよりも男女格差が大きいという意外な結果を示している。これはおそらく湾岸産油国では制度が男女の格差をはらんだまま発達しているのに対し、イエメンでは制度が未発達のため男女の格差がかえって小さいという逆説的な状況を示しているのかもしれない。
日本は指数が0.9791で世界ランクは37位である。平均寿命は女性が男性を上回るため指数は1.00となるが、新生児の男女比率は男性が女性を上回っているため指数は0.94となっている。この分野では二つの項目(新生児の男女比率及び男女の平均寿命)によって指数が算出されているが、142カ国全ての指数が0.93を上回っており、経済(上記1)、教育(上記2)及び政治(下記4)など他の分野に比べて殆ど格差が無いのが特徴である。
(4)政治分野の男女格差
この分野は世界各国の政治体制の違いに左右される面が大きい。またこの分野はトップのアイスランドの指標が0.6554、米国が0.1847であるなど上記の健康・寿命指標に比べて世界的に指標値が低く、また各国間の格差が大きい。MENA各国の指標もトップのイスラエルですら0.1965にとどまり、指標0.1以下の国が多数ある。因みに日本は0.0583(世界129位)、中国は0.1506(同72位)である。
MENA諸国間の比較で男女格差が少ないと評価されているのは、上記のイスラエル(世界49位)のほかアルジェリア(同60位)、チュニジア(同82位)、UAE(同96位)などであり、反対に格差が最も大きいのはレバノンで同国の世界順位は142カ国中の141位である。カタールも世界140位でMENAでは2番目に低く世界の最低レベルである。GCC6カ国の中で比較的高い評価を受けているのはUAEのみであり、他は男女格差が大きい。
政治の男女格差は女性の国会議員、閣僚及び過去50年間の女性元首(首相等)の在任期間でランク付けされているため全体的に各国ともスコアが低く、また同じ先進国でもヨーロッパに比べ日米のランクが低い結果となっている。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2014年11月24日
(注)本レポートはブログ「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してお読みいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0331MenaRank13.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)
2. 昨年より大幅にダウンしたサウジアラビア
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/13-T01.pdf 参照)
MENA諸国の中でビジネス環境が最も良いのはUAEで世界順位は22位であり昨年(23位)よりもワンランクを上げている。同国の順位は日本(29位)よりも高い。UAEはMENAの中でも特に順位が高く、これに続くのはイスラエルの40位、そしてサウジアラビアの49位である。両国は共に昨年より順位を下げているが、特にサウジアラビアは昨年の26位から大幅に下がっている。
3位以下はカタール(世界50位)、バハレーン(同53位)、トルコ(同55位)、チュニジア(同60位)、オマーン(同66位)が50位から60位台に名を連ねている。このうちトルコは昨年より14ランクアップしているが、その他の4カ国はいずれも順位を落としており、特にオマーンは19ランク下落しており、下落幅はサウジアラビアに次いでMENAで二番目に大きい。これらの国以外ではモロッコ(同71位)及びクウェイト(同86位)が100位以内で世界189カ国の上位グループに入っている。
上記以外のMENA9カ国、1組織(パレスチナ自治政府)はビジネス環境としては世界の100位以下にとどまっている。それらを順に列挙すればレバノン(世界104位)、エジプト(同112位)、ヨルダン(同117位)、イラン(同130位)、イエメン(同137位)、パレスチナ自治政府(同143位)、アルジェリア(同154位)、イラク(同156位)、シリア(同175位)でありリビアは世界最下位のエリトリアをわずかに上回る188位にとどまっている。ちなみにMENAの世界平均順位は98位であり昨年の99位と殆ど変化していない。UAE、サウジアラビアなどGCCを中心とする上位グループとアルジェリア、イラク、シリア、リビアなど下位グループとの格差が大きい。アルジェリア、イラク、リビアはUAE、サウジアラビアと同様産油国であるが内戦状態のシリア或いは治安が不安定なアルジェリア、イラク、リビアのビジネス環境評価は極めて厳しい。
本調査では世界1位は昨年に引き続きシンガポールとされ、韓国が5位、そして米国は7位に入っている。日本は世界29位でありMENA各国と比較するとUAEより低く、韓国との格差は大きい。因みに中国は世界90位で調査対象189カ国中ではほぼ中間に位置し、MENA諸国と比べるとクウェイト(86位)より低くレバノン(104位)より高い。
(続く)
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2014年11月23日
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(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)
中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)
アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、
これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム諸国会議機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。
第13回のランキングは、World Bank(世界銀行)の一グループDoing Businessがおこなったビジネス環境に関する世界各国のランキング(Economy Rankings)2015年版についてMENA諸国をとりあげて比較しました。
* Doing Businessのホームページ:http://www.doingbusiness.org/
1.「Economy Rankings – Doing Business」について
「Economy Rankings – Doing Business 2015」は、世界189の国あるいは地域のビジネス環境をランク付けしたものであり、当該国・地域でビジネス活動を行う場合の難易度を知る目安になる。判定は以下の10項目について順位付けを行い、それら10項目の順位の加重平均によって総合順位(Ease of Doing Business)が決められている。
(1) Starting a Business (起業)
(2) Dealing with Construction Permits(建設許可)
(3) Getting Electricity (電力事情)
(4) Registering Property(登記)
(5) Getting Credit(信用取得)
(6) Protecting Investors(投資家保護)
(7) Paying Taxes(徴税)
(8) Trading Across Borders(通関)
(9) Enforcing Contracts(契約強制力)
(10) Resolving Insolvency(清算)
ランク付けの対象となった国・地域の数は189であるが、そのうちMENAは19カ国及びパレスチナ自治政府の20であり全ての対象国がランク付けされている。
(続く)
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(MENAなんでもランキング・シリーズ その8)
3.分野別順位
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/8-T03.pdf参照)
経済、教育、健康・寿命及び政治の四分野ごとに見たMENA17カ国の順位は以下のとおりである。
(1) 経済分野の男女格差
経済分野の男女格差がMENAで最も小さいのはイスラエルで、同国の世界順位は90位である。第2位以下は全て世界100位以下であり、カタール(世界順位101位)、クウェイト(同106位)、UAE(同123位)、バハレーン(同126位)、オマーン(128位)とGCC諸国が続いている。総合順位130位のサウジアラビアはこの分野では137位である。経済分野のMENAの平均世界順位は127位となっており、総合の平均順位124位より少し
劣っている。MENAでは経済分野における男女格差が大きいと言えよう。
因みにこの分野における日本の世界順位は102位であるが、詳しい内容を見ると女性管理職のランクは世界112位であり、専門技術職の世界ランク78位に比べ女性の昇進の壁が厚いようである。また賃金の男女格差は世界平均を上回る53位である。
(2) 教育分野の男女格差
教育分野もイスラエル(世界49位)がMENAのトップである。MENAでこれについで世界順位が高いのはヨルダン(世界74位)及びクウェイト(同76位)であるがそれでも世界の上位グループには入っていない。これに続くのはUAE(同83位)、サウジアラビア(同86位)、バハレーン(同90位)、カタール(同94位)、オマーン(同96位)が世界100位以内に入っている。世界順位100位以下ではシリア(101位)、イラン(104位)、トルコ(105位)、レバノン(106位)、チュニジア(107位)及びエジプト(109位)が100位から110位までにひしめき合っている。
この分野のMENAの平均世界順位は97位である。実は世界的に見てこの教育分野の男女格差は小さく、スコアが1.000の国(即ち男女格差が全くないか、または女性の方が教育度の高い国)が20カ国以上あり、イスラエル(世界49位)のスコアは0.9964、エジプト(同109位)のそれは0.9467である。
日本は文盲率、初等・中等教育は男女に差が無いが、高等教育にわずかな男女格差がありポイントが0.9781である。この結果日本の世界順位は93位とされ、この分野ではごくわずかなスコアの差で順位が大きく上下することがわかる。
(続く)
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