2015年11月

2015年11月30日

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(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0364MenaRank8.pdf

(MENAなんでもランキング・シリーズ その8)


 中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)


 アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、


 これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム諸国会議機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。


 ここでは世界経済フォーラム(World Economic Forum, WEF)が行った「世界男女格差報告2015(The Global Gender Gap Report 2015)」からMENA諸国をとりあげて比較しました。


1.「世界男女格差報告2015」について
 「世界男女格差報告2015(The Global Gender Gap Report 2015)」(以下「2015年版報告書」)を発表した「世界経済フォーラム」(World Economic Forum, WEF)は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利団体であり、毎冬スイスのダボスで行われる「ダボス会議」の主催者としてよく知られている。


 「2015年版報告書」は世界145カ国を対象に経済、教育、健康、政治の4つの分野について、世界或いは各国の公的機関が公表する男女別のデータに基づき、それぞれの分野の男女間の格差を指数化し順位付けを行ったものである。
*WEFホームページ:http://reports.weforum.org/global-gender-gap-report-2015/

(1)比較対象される分野とその内容
 対象とされるのは以下の4つの分野であり、各分野にはそれぞれ二つ乃至五つの比較項目がある。

I 経済参画分野:経済活動への参加度及び参画の機会(Opportunity)に関する男女格差
   比較項目:(1)労働参加比率、(2)同一労働賃金格差、(3)平均所得格差、
          (4)幹部職比率、(5)専門・技術職比率


II 教育分野:教育の機会に関する男女格差
   比較項目:(1)識字率、(2)初等教育就学率、(3)中等教育就学率、(4)高等教育就学率


III健康・寿命分野:健康と寿命に関する男女格差
   比較項目:(1)新生児男女比率、(2)平均寿命


IV政治参画分野:政治参画の度合に関する男女格差
   比較項目:(1)女性議員比率、(2)女性閣僚比率、
          (3)過去50年間の女性元首(首相等)在任期間


(2)指数化の方法と順位付け
 145カ国について上記四つの分野の各比較項目に関する男女それぞれの数値或いは比率のデータを抽出し、この男女のデータについて男性を1とした場合の女性の指数を算定する(最大値は1とする)。この指数の意味は、指数1の場合男女が完全に平等であることを意味しており、指数が低くなればなるほど男女の格差が大きいことを示している。


 各比較項目の指数を加重平均したものを、その分野の指数とする。最後に4つの分野の指数を加重平均したものがその国の格差指数であり、145カ国の指数を上位から順に総合順位を付けるのである。


(続く)


本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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2015年11月28日

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
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(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)


5.2012~2016年の順位の推移
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/13-T03.pdf 参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/13-G02.pdf参照)
 2012年から2016年までの5カ年についてMENA各国の順位の変遷を見ると、2012年及び2013年はサウジアラビアが1位であったが、2014年以降はUAEが連続してトップに立っている。両国の過去5年間の世界順位はサウジアラビアが12位→22位→26位→49位→82位、UAEは33位→26位→23位→22位→33位である。サウジアラビアは過去5年間連続して世界順位を下げ、特に前回及び今回と順位が大幅に落ちている。これに対してUAEは2012年から2015年にかけて毎年順位を上げている。但し同国は今回31位と再び5年前の水準に落ちている。


 両国の間に割って入っているのがイスラエルで5年間を通じて常にMENA2位又は3位を維持している。これら3か国に続くのがバハレーンとカタールであり、5年間のMENA順位は4位から6位の間に位置している。因みに5年間のバハレーンの世界順位は38位(12年)→42位(13年)→46位(14年) →53位(15年)→65位(16年)であり、カタールのそれは36位(12年)→40位(13年)→48位(14年) →50位(15年)→68位(16年)であり、いずれも5年連続して世界順位をさげている。


 MENAの平均世界順位は85位(12年)→90位(13年)→99位(14年) →98位(15年)→107位(16年)でありほぼ毎年順位を下げたうえ、今回は世界100位以下に転落している。このようにMENA上位国の世界順位とMENAの平均順位は共に下落しており、MENAのビジネス環境が近年世界的な競争力を失っていることを示している。2011年に始まった「アラブの春」による政治的経済的な動揺がその最大の要因であろう。


 上記以外のGCC諸国のMENA域内の順位はオマーンが5位~8位を維持し、クウェイトはMENA8位から10位に下落している。これを世界順位で見るとオマーンは49位(12年)→47位(13年)→47位(14年)→66位(15年)→70位(16年)と12年から14年までは世界50位以内を維持していたが最近2年間は順位の下落が激しい。クウェイトの場合は67位(12年)→82位(13年)→104位(14年) →86位(15年)→101位(16年)とここ3年間は100位を行きつ戻りつしている。クウェイトは有力な産油国であり豊富な石油収入によりマクロ経済には全く問題がないにも関わらず同じGCC加盟国であるサウジアラビア、UAE、カタールなどと比較して評価が著しく低い。国会の解散と内閣改造を頻繁に繰り返した結果、国内インフラの整備が遅れるなど外国企業にとって魅力的なビジネス環境ではなくなっていると言えよう。


 因みに「アラブの春」で大きな変革を迫られた国々の過去5年間の世界順位の推移を見ると以下のとおりである。


 チュニジア:  46位→  50位→ 51位 → 60位 → 74位
 イエメン:  99位→ 118位→133位 →137位 → 170位
 ヨルダン:  96位→ 106位→119位 →117位 → 113位
 エジプト:  110位→ 109位→128位 →112位 → 131位
  シリア:  134位→ 144位→165位 →175位 → 175位
 

 上記のうちチュニジア、シリア及びイエメンは2012年以降毎年下落しており「アラブの春」がビジネス環境に与えた影響の大きさがわかる。エジプトは「アラブの春」以降ムルシ・イスラム政権からシーシ軍事独裁政権に代わってもビジネス環境が良くなる気配は見られず、IS(イスラム国)がらみのテロ行為も発生する中でむしろ悪化していると言えよう。


 なおリビアは2013年までは世界ランクの対象外とされており、ランク付けされたのは2014年以降であるが、187位(‘14年)、188位(‘15年&‘16年)と世界189カ国中の最下位目前の状況である。


(完)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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2015年11月27日

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2015年11月26日

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
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(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)


4.MENA7カ国及び日米韓の項目別比較(レーダーチャート)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/13-G01.pdf 参照)
 図はエジプト、トルコ、イラン及びGCC3カ国(サウジアラビア、UAE、カタール)のMENA6カ国と日本、米国及び韓国の9カ国を上位グループ、中位グループ及び下位グループの三つに分け、各国の項目別世界順位をレーダーチャートとして表示したものである。レーダーチャートは最も外側が世界順位1位であり内側の中心は201位である。各分野の世界順位を結ぶ輪が各国の項目別順位の状況を示している。レーダーチャートの輪が外側に広がっているほど世界での順位が高く、また輪の形が真円に近いほど各分野の世界順位が平均していることを示している。


(1)上位グループ:米国、日本、韓国
 韓国はほぼ全ての分野で世界のトップグループである。同国の総合順位は世界4位であり、電力事情が世界1位であるほか契約強制力(2位)及び清算(4位)も世界10位以内である。また起業(23位)、建設許可(28位)、徴税(29位)、通関(31位)等世界20~30位前後が多く、最も低い信用取得でも世界42位であり全項目にわたって均整の取れたビジネス環境である。


 米国は総合順位が7位で韓国をわずかに下回っている。米国が韓国よりも劣っているのは起業(世界49位)、電力事情(同44位)、投資家保護(同35位)、契約強制力(21位)など8つの項目である。一方米国が韓国を上回っているビジネス環境は登記(同34位)及び信用取得(同2位)の2項目である。


 これに対して日本は総合順位世界34位でベストテンに入る韓国、米国とかなりの格差があり、10項目についても世界順位は殆ど両国を下回っている。特に起業(世界81位)、建設許可(68位)、信用取得(79位)などは米国、韓国いずれの国よりも低く、特に徴税分野では世界121位であり、韓国(29位)、米国(53位)よりも大きく引き離されている。日本が両国のいずれかよりも順位が高い項目は電力事情が米国よりも高く、また清算項目(世界2位)のみが韓国(4位)及び米国(5位)を上回っている。


 韓国及び米国のレーダーチャートが外側に広がった比較的真円に近い(つまりビジネス環境が平均して良好である)のに対して、日本の場合は徴税など世界の下位グループに評価されている項目が散見され、レーダーチャートの円はいびつな形となっている。


(2)GCC産油国グループ:UAE、サウジ、カタール
 UAE、サウジアラビア、カタールの産油(ガス)3カ国を比較すると総合順位ではUAE31位、カタール68位、サウジアラビア82位であり、UAEが他の2カ国を大きく上回っている。項目別に見ると起業分野の世界順位はUAE60位、カタール109位、サウジ130位であり、サウジとカタールの評価が低い。建設許可、登記及び徴税の分野は3カ国とも比較的世界順位が高く、特に徴税分野ではUAE及びカタールが世界1位、サウジは世界3位といずれもトップクラスである。UAEの場合は建設許可、電力事情及び徴税の3分野で世界10位以内に入っている。


 反対にこれら3カ国は信用取得(サウジ79位、UAE97位、カタール133位)或いは通関(UAE101位、カタール119位、サウジ150位)がいずれも世界平均を下回っている。3カ国の比較で見るとカタールは電力事情及び契約強制力の分野でUAE或いはサウジアラビアよりもかなり低く、一方サウジアラビアは清算分野が他の2カ国に比べて大きく劣っている。


(3)下位グループ:トルコ、エジプト、イラン
 中東の三大国トルコ、エジプト及びイランのビジネス環境の総合順位はそれぞれトルコ55位、イラン118位、エジプト131位でありイランおよびエジプトの評価が低い。分野別の世界順位を見るとトルコが比較的順位が平均化しているが、エジプト及びイランは分野ごとの格差が大きい。


 また3カ国の順位格差を見ると起業(エジプト73位、イラン87位、トルコ94位)、信用取得(同79位、97位、79位)、清算(同119位、140位、124位)の各分野は3カ国の格差が比較的小さいが、その他の分野では3カ国の格差が大きい。たとえば電力事情ではトルコ36位、イラン88位、エジプト144位と3カ国のビジネス環境には大きな違いがあり、契約強制力についてもトルコ36位、イラン62位、エジプト155位でその格差が大きい。投資家保護の分野ではトルコが世界20位でトップレベルにあるのに対してエジプトとイランはそれぞれ122位、150位でありトルコが抜きんでている。通関についても同様にトルコの62位に対してエジプト157位、イラン162位である。


(続く)


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