2016年04月

2016年04月29日

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(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0375ImfWeoApr2016.pdf

(前回より下方修正された今年と来年の成長率!)
2.前回(2015年10月)と今回(2016年4月)の比較
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-B-2-08.pdf参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-B-2-01.pdf参照)
(1) 世界および主要地域・国
 上述のとおり今回(WEO2016Apr)の成長率の見通しは今年(2016年)が3.2%であり、来年(2017年)は3.5%である。これに対して前回(WEO2015Oct)の見通しでは2016年が3.6%、2017年は3.8%であり今回成長率はいずれも下方修正されている。つまり2016年から2017年にかけて成長が高まるとの見通しに変わりはないが、加速の度合いが鈍っている。IMFは世界経済の回復が遅れると予測しているようである。


 国別に見ても殆どの国が下方修正されている。日本の場合は今年の成長率は前回(2015年10月)の見通し1.0%が今回(2016年4月)には0.5%に下がっており、来年の成長率は前回のプラス0.4%が今回はマイナス0.1%とプラス成長からマイナス成長に変化している。米国の場合は今年(前回2.8%→今回2.4%)および来年(同2.8%→2.5%)といずれも下方修正されており、韓国、ロシアも同様である。そのような中で中国は今年見込み(6.3%→6.5%)、来年見込み(6.0%→6.2%)と上方修正されている。つい最近まで10%以上の成長率を誇っていた中国はここ数年毎年成長率が落ち込んでいたが、IMFは同国の景気が底を打つと見ているようである。


(2)MENA諸国
 MENA地域の成長率は2016年が前回の3.9%から3.1%に、また2017年も4.1%から3.5%へと大幅に下方修正されている。このうちGCC6カ国で見ても今年は3.1%→2.2%、来年は3.0%→2.4%であり、今年はMENA平均を上回る落ち込みが予想されている。


 国別で見ると19か国すべての国が前回より下方修正されており、わずかにトルコとイラクが今年の、またリビアとイエメンが来年の成長率を上方修正しているだけである。主な国ではエジプトが今年(前回見通し4.3%→今回見通し3.3%)、来年(同4.5%→4.3%)とそれぞれ成長率が落ちる見通しであり、イランは今年(同4.4%→4.0%)、来年(同4.0%→3.7%)である。サウジアラビアは今年(同2.2%→1.2%)、来年(同2.9%→1.9%)といずれも成長率を1%下方修正している。トルコは今年の見通しは2.9%から3.8%に引き上げているが、来年については3.7%から3.4%に引き下げている。


(続く)


本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp




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2016年04月28日

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0375ImfWeoApr2016.pdf

  IMF(国際通貨基金)では毎年4月および10月に世界各国の経済見通し「World Economic Outlook Database (WEO)」を発表しており、今年4月版(以下WEO2016Apr)がインターネット上に公開された。
*URL: http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2016/01/weodata/index.aspx 


 この中にはGDP成長率、ドル建て・各国通貨建てのGDP金額、一人当たりGDP、貿易額、財政収支など数多くのデータがあり、特に当年度或いは次年度の経済成長率は官庁、メディア等々で広く引用されている。


 ここでは2013年から2017年までのGDP総額及び一人当たりGDP(いずれもcurrent price, ドル建て)を取り上げ、また成長率については前回の2015年10月版(以下WEO2015Oct)と比較して世界主要国およびMENA諸国の経済状況の変化を検証する。


(日本だけが取り残され来年はマイナス成長の見込み!)
1.2016/17年の経済成長率
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-B-2-08.pdf参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-B-2-01.pdf参照)
(1) 世界および主要地域・国の経済成長率
 IMFは今年(2016年)の世界の経済成長率を3.2%と見ており、来年(2017年)は今年よりも高い3.5%と予測している。地域別に見てもEUは今年の1.5%が来年は1.6%、ASEAN5か国も4.8%から5.1%へと上向く見通しを示している。国別に見ても今年より来年の成長率が高い国が多く、米国は2.4%→2.5%、ドイツは1.5%→1.6%といずれもわずかながら成長率が上がるとされ、また韓国も2.7%→2.9%に上向くと予測している。これに対して日本と中国は今年よりも来年の成長率が低下すると予測しており、中国は6.5%→6.2%に低下、特に日本の場合は0.5%→マイナス0.1%と他に例を見ないマイナス成長になると見込んでいる。ロシアの予測が今年のマイナス成長から(-1.8%)から来年はプラス0.8%に改善するのとは対照的である。


(2)MENA諸国の経済成長率
 IMFによれば今年のMENA(中東北アフリカ地域)の成長率は3.1%であり、来年は今年を上回る3.5%と見込んでいる。国別にみるとリビアがマイナス2.0%(‘16年)からプラス12.2%(‘17年)と大幅な上昇を予測しており、イエメンも0.7%→11.9%と見込まれている。但しリビアもイエメンも現在内戦状態で経済が深刻な状況である。IMFはこのような状況が変化すると見込んでいるようであるが、改善はかなり難しいであろう。


 MENAの大国であるトルコ、イランおよびエジプトの今年・来年の成長率はトルコが3.8%→3.4%、イランは4.0%→3.7%、エジプトは3.3%→4.3%でありエジプトは好転すると予測されているが、トルコとイランは成長率が落ち込む見通しである。産油国のサウジアラビアは今年の1.2%から来年は1.9%に回復すると見込まれ、GCC6か国の平均でも今年の2.2%が来年は2.4%に上向く見通しである。歳入のほとんどを石油・天然ガスに依存しているGCC諸国は一昨年以降の価格急落により成長率が急速に落ち込んだが、IMFではGCC諸国が今年から来年にかけては低成長ながらも上向くと予測している。


(続く)


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2016年04月27日

第2章:戦後世界のうねり:植民地時代の終焉とブロック化する世界

3.東西二大陣営の激突
 英仏の植民地帝国主義に代わって登場したのが米国とソ連を頂点とする東西二大陣営である。18世紀に始まった産業革命は資本家と労働者の二極化をもたらし、19世紀にカール・マルクスは資本論の中で「生産手段が少数の資本家に集中し、一方で自分の労働力を売るしかない多数の労働者が存在する生産様式」を資本主義と定義した。


 マルクスは生産手段を共同所有することで平等な社会を目指す「共産主義」を提唱、個人主義・自由主義の弊害に対抗する社会主義思想と相まって、20世紀初めには資本主義にかわる新思想として社会主義・共産主義が浸透していった。そしてそれが最初に陽の目を見たのがロシア革命であり、世界初の社会・共産主義国家として1917年に「ソビエト社会主義共和国連邦」(略称ソ連)が生まれた。


 第一次世界大戦中に誕生したソ連はその後着々と実力を蓄え、第二次世界大戦では連合国の一翼として全体主義国家ドイツ及び日本を倒す原動力となった。しかし第二次世界大戦中は互いの主張こそ違え「呉越同舟」、「同床異夢」の関係であったが、戦争が終わると、水と油の関係の両者の対立が表面化した。直接の衝突を回避した関係は「冷戦」と呼ばれたが、実際には世界各地で「熱い戦争」が続発した。


 極東の中国では国民党と共産党の国共内戦が発生、ベトナムではベトコン(南ベトナム解放民族戦線)とフランス駐留軍の戦闘が始まった。ベトナムの場合、最初は植民地旧宗主国のフランスに対するベトナム人の抵抗運動であったが、フランスがディエンビエンフーの戦いに敗れ撤退すると、米国が後始末に乗り出した。ベトコンはソ連の軍事的援助のもとで米国に対する抵抗を続ける。まさにベトナムを挟んだ米ソ対決であった。


 さらに1950年には朝鮮戦争が勃発、北緯38度線を境に戦線は膠着し1953年に休戦したが、朝鮮半島は現在も二分化したままである。欧州大陸では西ヨーロッパと東ヨーロッパが国境を挟んで緊張が高まり東ドイツ領内のベルリンでは1949年に西ベルリン地区を包囲する壁が築かれ、ベルリン封鎖は結局ソ連が崩壊する1990年まで続くのである。


 冷戦の構図の中で鋭く対立する東西両陣営は互いに相手国を封じ込めるための軍事・経済のブロック化を推し進めることになる。1949年に西側陣営は軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)を結成、ココム(対共産圏輸出統制委員会)と共に共産主義諸国への軍事技術・戦略物資の禁輸措置を講じた。これに対抗して1955年、ソ連はポーランド、東ドイツなど東ヨーロッパ8カ国を巻き込んだ軍事同盟「ワルシャワ条約機構」を立ち上げている。さらに米国はフランスのベトナム撤退後の東南アジアの空白を埋めるためNATOと同様の軍事同盟SEATO(東南アジア条約機構)を結成した。


 中東では1958年にMETO(中東条約機構、本部の置かれた都市に因みバグダッド条約とも言う)が生まれた。NATO、METO及びSEATOの三つの反共軍事同盟によりソ連封じ込め体制が出来上がったが、このうちのMETOはエジプトが当初から参加しなかった上、設立の年にイラクで社会主義革命が勃発、同国がMETOを脱退したため、本部はトルコのアンカラに移転、名前もCENTO(中央条約機構)と改められている。


17Nehru, Nkrumah, Nasser, Sukarno & Tito
 汎アラブ主義のナセルは米国の反共同盟に加わる気はもとよりなかったが、さりとてソ連社会主義の傘の下に入る気もなかった。彼の眼には米国もソ連も所詮新しいタイプの帝国主義国家と映ったのである。米国とソ連に対する見方は中国の周恩来首相、インドのネール首相、ユーゴスラビアのチトー大統領あるいはインドネシアのスカルノ大統領もナセルと大同小異であった。ネールと周恩来は1954年の首脳会談で平和五原則を発表、さらに翌1955年にインドネシアのバンドンでアジア・アフリカ会議が開催された(バンドン会議)。


 バンドン会議で採択された平和十原則では反帝国主義、反植民地主義、民族自決の精神のもと、米国、ソ連のいずれにも属さない第三の立場いわゆる第三世界をうたいあげたのである。ナセルはいがみ合う東西両陣営者の間でうまく立ち回って漁夫の利を得ることを狙い、また第三世界の中ではアラブの代表としての地位を確かなものにしたのである。このころから第二次中東戦争、そしてシリアとアラブ連合を結成する頃までがナセルの絶頂期であったと言えよう。


(続く)


本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

       荒葉一也

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