2005年04月24日

サウジアラビア初の地方議会選挙終わる

4/24 Arab News (Saudi Arabia)
 初のサウジアラビア地方議会選挙の最後を飾る選挙が紅海沿岸地域の各都市で行われた。最大の選挙区であるジェッダでは500人以上もの候補者が乱立し、わずか7議席をめぐって派手な選挙合戦を繰り広げた。結果は宗教学者の推薦を受けた候補者が議席を独占し、先に実施されたリヤド及びダンマンと同様の傾向を示した。
 今回の選挙は事前運動で組織票を固めた候補者が有利な選挙戦を進めた結果であると分析されている。宗教学者の推薦は選挙の公平性を失うものであるとして、一部の候補者が選挙無効を訴えたが選挙管理委員会はこれをしりぞけた。ジェッダの選挙管理委員長は、ジェッダ地区の投票総数は52,000、投票率55-60%と述べている。
 2/10のリヤド地区の選挙を皮切りに3回に分けて実施された選挙は、178の地方議会の議員定数の半数の244議席を公選とするものである。因みに残る半数は従来通り政府任命のままである。

コメント:
 サウジアラビアの民主化を象徴するものとして国内外の注目を集めた同国初の地方議会選挙が終った。リヤド、ダンマン、ジェッダの三大都市では宗教界の推薦を受けた候補が圧倒的な強さを示し、その他の選挙区ではこのほか地元の有力ビジネスマンなどが当選した。いずれも強固な組織票を動員した結果であると言えよう。
 今回の選挙は一部有権者に熱病的な興奮状態を引き起こしたようであるが、多くの一般国民は冷ややかな目で見ていた節があり、それはArab Newsの別の記事 ’Why voters shied away from the ballot box’ にもうかがえる。
その原因は選挙制度そのものが広く民意を問うには程遠かったことにあると言えよう。その一つは選挙で選ぶ議員数を議会の半数にとどめ残る半数は政府任命議員をそのまま据え置いたことである。これは急速な民主化に慎重なサウジ政府の姿勢の現れであるが、このため一般国民の中には、選挙はサウジ政府即ちサウド王家の内外に対するスタンドプレーと見る向きもかなりあったようである。
更に選挙権を成人男子に限り女性を排除したことも学生や有識者を失望させた。また戸籍制度が整備されていない同国では選挙権は本人登録が前提であり、政府の強力な選挙登録キャンペーンにも係らず実際の登録者数が予想外に少なかったことが指摘される。
このため登録者の多くは立候補予定者の関係者と思われ、選挙戦そのものは候補者が乱立し、支持者達によるお祭り的な選挙運動が繰り広げられたのである。そして結果としては強い影響力を有する宗教学者の後ろ盾を得たり或いは組織票を固めた候補者が当選したと言える。
 今回の選挙がサウジアラビアの民主化の第一歩となることは間違いないであろう。しかしながらサウジアラビアはGCCの中でも制度的な民主化が最も遅れており、一般国民も民主化については幼稚な段階であることは疑いない。選挙を契機に同国の民主化が今後急速に進展するか否かと言えば必ずしもそうとは言えないようである。むしろ遅々とした或いは中途半端な民主化の状態が続くと国民の不満が目に見えないマグマとして蓄積し、ある時点で一挙に噴出す危険性も無いとは言えない。


at 16:23Saudi Arabia  
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