2009年09月25日

MENAなんでもランキング・シリーズ その13

MENA(中東・北アフリカ)22カ国のビジネス環境(2010年版) (上)


 東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。

db10_cover.gif 第13回のランキングは、World Bank(世界銀行)の一グループDoing Businessがおこなったビジネス環境に関する世界各国のランキング(Economy Rankings)2010年版についてMENA諸国をとりあげて比較しました。

* Doing Businessのホームページ:http://www.doingbusiness.org/


1.「Economy Rankings – Doing Business」について
「Economy Rankings – Doing Business 2010」は、世界183の国あるいは地域のビジネス環境をランク付けしたものであり、当該国・地域でビジネス活動を行う場合の難易度を知る目安になる。判定は以下の10項目について順位付けを行い、それら10項目の順位の加重平均によって総合順位(Ease of Doing Business)が決められている。

(1) Starting a Business (起業)
(2) Dealing with Licenses(許認可取得)
(3) Employing Workers(雇用)
(4) Registering Property(登記)
(5) Getting Credit(信用取得)
(6) Protecting Investors(投資家保護)
(7) Paying Taxes(徴税)
(8) Trading Across Borders(輸出)
(9) Enforcing Contracts(契約強制力)
(10) Closing a Business(事業終結)

 ランク付けの対象となった国・地域の数は183であるが、そのうちMENAは21カ国及びパレスチナ自治政府の22であり、ランク付けされていないのはリビアだけである。

2. 総合順位がMENA諸国で最も高い国はサウジアラビア
(表「ビジネス環境ランキング2008-2010」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-13ADoingBusiness2010.htm 参照)
 MENA諸国の中でビジネス環境が最も良い(Ease of Doing Business)とされているのはサウジアラビアであり、同国の世界順位は13位である。同国についでMENAで二番目に高い評価を受けた国はバハレーン(世界順位20位)である。以下、MENA3位はイスラエル(世界順位29位)、4位UAE(同33位)、5位カタール(同39位)、6位クウェイト(同61位)、7位オマーン(同65位)と続き、イスラエルを除き湾岸産油国が上位を独占している。8位、9位はそれぞれチュニジア(世界順位69位)、トルコ(同73位)であり、この9カ国が世界でも上位グループに入っている。

上記以外のその他MENA12カ国、1組織(パレスチナ自治政府)はビジネス環境としては世界の下位グループにとどまっている。それらを順に列挙すれば10位のイエメン以下、ヨルダン、エジプト、レバノン、モロッコ、アルジェリア、イラン、パレスチナ自治政府、シリア、イラク、スーダン、アフガニスタン、モーリタニアとなる(上述のとおりリビアはランク付けされていない)。アフガニスタン、スーダン、イラク、パレスチナ自治政府などは国内の治安が不安定で行政機構が充分な機能を発揮していないことがビジネス環境の評価を低くしていると考えられる。またシリア、イランのように米国の経済制裁を受けている国は信用取得、投資家保護などの評価が低いためである。

 本調査ではMENA諸国の中でビジネス環境の良いベストスリーにサウジアラビア、バハレーン、イスラエルがランクされており、外国企業の進出が多いトルコ或いは近年ビジネスマンの評価が高いUAE(ドバイ)よりも上位にあり、実際の企業進出やビジネスマンの人気度とは若干趣を異にしている。その理由としては調査項目が許認可取得、登記、投資家保護など法制度的な側面に重点が置かれており実際に制度の運用が円滑に行われているかどうかの評価が不足していること、及び日常的にビジネスを行うための必須条件である治安の安定或いは働きやすさ等の要素が調査対象となっていないことに原因があると考えられる。

従って本ランキングは形式的な面におけるビジネス環境の良否を判定したものと受けとめるべきであろう。

3.各国の2008-2010年の推移
(表「ビジネス環境ランキング2008-2010」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-13ADoingBusiness2010.htm 参照)
 2008年から2010年の3ヵ年を比較すると、サウジアラビアは3ヵ年を通じてMENAトップの評価を得ている。同国の世界順位は一昨年の23位から、昨年16位、今年13位と大幅に伸びておりビジネス環境が急速に改善されているとの高い評価を得ている。バハレーンは2009年から評価対象となり昨年に引き続き2年連続2位であるが、世界順位は18位から20位に落ちている。イスラエルは一昨年はサウジアラビアに次ぐ2位であったが、昨年バハレーンが2位となったため、昨年、今年とMENA3位である。同国の世界順位は29位(‘08年)→30位(‘09年)→29位(‘10年)と横ばい状態である。

 今年MENA4位のUAEは一昨年の6位、昨年の5位と着実にMENA諸国での順位を上げているが、世界順位の上昇は目覚しいものがあり、08年の68位から、09年46位、10年33位に上昇、イスラエルに肉薄するまでにビジネス環境が改善している。このほか3ヵ年を通じて世界順位を上げている国には、チュニジア(88位→73位→69位)、エジプト(126位→114位→106位)などがある。

 一方、3ヵ年にわたり連続して順位を下げ、ビジネス環境が劣化したとされる国は、クウェイト(08-10年の世界順位:40位→52位→61位)である。またオマーンも同様に49位→57位→65位と長期低落傾向にある。GCC6カ国の中ではサウジアラビア、バハレーン、UAE及びカタールが世界40位以内であるのに対し、クウェイトとオマーンは60位台に低迷している。両国におけるビジネスの魅力が年々薄れつつあるのは憂慮すべきことである。

トルコも57位→59位→73位と3カ年続落している。1昨年と昨年では評価対象国数が2カ国増えているため、順位はほぼ横這いと見ることができるが、昨年と今年は評価国の2カ国増加に対し順位が14位も落ちていることは、同国のビジネス環境が大きな問題をはらんでいることを示唆していると言えよう。このほか順位を続落させたのはレバノン(85位→99位→108位)、アルジェリア(125位→132位→136位)、パレスチナ自治政府(117位→131位→139位)、スーダン(143位→147位→154位)、モーリタニア(157位→160位→166位)がある。

このように過去3ヵ年を通してみると、MENA諸国には世界順位が上がった国よりも下がった国が多く、地域のビジネス環境が劣化していることを示している。MENA地域がグローバル化するビジネスの中で取り残されつつあるという印象を免れない。

(続く)

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