2010年01月30日

MENA(中東・北アフリカ)22カ国のソブリン格付け(2010年1月版)(その1)

(注)マイ・ライブラリーに「その1~3」を一括掲載しました。

 東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。
 第6回のランキングは格付け会社が行なっている各国国債の信用格付け、いわゆる「ソブリン格付け」について比較しました。


1.「ソブリン格付け」とは
 「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。通常、国は民間企業よりも高い信用力を持っていると考えられているが、国だからといってデフォルト(債務不履行)にならないわけではなく、例えば1998年にロシアが自国通貨建て債権を支払停止した例がある。

 ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。

(以上、東洋経済新報社発行、山澤光太郎著 「よくわかる格付けの実際知識」より抜粋)

2.格付け会社と格付け符号について

img20100201.gifmoody%27s.jpg

fitch.gif
 全世界には多数の格付け会社があるが、代表的なものはMoody's 、Standard & Poors(以下S&P) 及びFitchRating(以下Fitch)の3社である。Moody's は格付け会社として最古の歴史を誇っている。3社で世界のシェアの9割を占めており、特にMoody's とS&Pは各々40%前後のシェアを有している。3社にはいずれも日本法人(又は支社)がある。

* 各社のホームページ・アドレス
Moody's http://www.moodys.co.jp/Pages/HomePage.aspx
S&P http://www2.standardandpoors.com/portal/site/sp/jp/jp/page.home/home/0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0.html

Fitch   http://www.fitchratings.co.jp/sectorRankList.ctl.php?middleID=7
 
格付け記号は各社によって異なり、格付けの段階数も債務不履行(デフォルト)のレベルを除くいわゆる投資適格と非投資適格(Moody’sの表現)についてみると、S&Pは8段階、Moody’s及びFitchは9段階と異なるが、各段階の定義の内容は以下の通りほぼ同じである。(詳しくは「Sovereign長期信用格付けの定義」参照。)

(1)Moody’s
Moody’sの最上位の格付けはAaaである。以下Aa, A, Baa, Ba, B, Caa, Ca, Cまでの9段階に分かれている。Aaaは信用力が最も高く信用リスクが限定的である債務に対する格付けである。以下Aa、A、Baaまでは信用リスクが低いが、それ以下のBa、B、Caa、Ca、Cは投機的とみなされている。格付け最下位のCの場合は通常デフォルトに陥っており、元利の回収見込みも極めて薄い債務とされている。

なおAaからCaaまでの格付けには1,2,3という数字付加記号が加えられ、1はその格付けの中で上位に位置し、2は中位、3は下位にあることを示している。たとえばAa1, Aa2, Aa3は順次リスクが高くなるのである。

(2)S&P
S&Pの場合は、AAA, AA, A, BBB, BB, B, CCC, CCの8段階である。AAAは最上の信用力として、債務履行の確実性が最も高く、予想されうる状況変化の下で信用リスクが増大する可能性はほとんどないものとされている。最下位のCは発行体と債務に関して債務不履行に陥る可能性が差し迫っている状態と定義されている。そしてAAAからBBBまでは投資適格のカテゴリーとされ、BB以下は投機的要素が強いとみなされている。

さらにAAからCCCまでの格付けにはプラス記号またはマイナス記号が付けられることがあり、それぞれ各カテゴリーの中での相対的な強さを表している。プラスは「positive」、マイナスは「Negative」と呼ばれ、記号がつかない場合は「Stable(安定的)」である。

(3)Fitch
 FitchはAAAを最上の信用力と定義付け、以下AA、A、BBBを投資適格としている。それ以下のBB、B、CCC、CC、Cは投機的とみなされ、たとえばBBは信用リスクが顕在化する可能性がある債務とされている。Fitchの場合もS&Pと同様AからBまでのカテゴリーにはプラス又はマイナスの記号が付けられることがある。

ソブリン格付けには外貨建てと自国通貨建てがあり、またそれぞれに長期債務、短期債務の二種類があるが、本稿では最もポピュラーな外貨建て長期債務を取り上げた。格付けは各国がおかれた経済状況により随時改訂されるが、以下はMoody's 、S&P及びFitch3社の2010年1月現在のMENA各国の格付けである。また前回(2009年3月)からの変化についても比較した。

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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