2010年04月01日
GCCの外国人の給与水準(2010年版)(2)
(注)本シリーズはブログ「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で全文一括してご覧いただけます。
2.2010年の給与水準
既に述べたようにGCC諸国の給与水準は職種によって大きな格差がある。またそこで働く外国人は勤務する国によって給与に格差があり、さらに本人の出身地域(アラブ圏かアジア圏か西欧圏か)によっても格差がある。
例えば職種について見ると、売上高5千万ドルを超える大企業のCEOの月額給与はGCC平均で30,424ドルであり、地場企業のGeneral Manager(15,522ドル)のほぼ2倍である。一方、経理担当(Accountant)或いは幹部秘書(Executive Secretary)の給与は5千ドル前後で、CEOの6分の1、GMの3分の1程度にすぎない。
これに国別、出身地域別の要素を加味すると格差はさらに広がる。もっとも給与が高いのはサウジアラビアにおける売上高5千万ドル超の企業のアラブ圏出身CEOであり、その月額給与は35,846ドルである。これに対し全体の中で最も給与水準が低いのはサウジアラビアに勤務するアジア圏出身の幹部秘書の2,458ドルであり、両者の格差は15倍に達する。
3.GCC6カ国間の給与格差
上記のごとくGulf Business誌の給与一覧表(http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-I-1-50SalarySurveyInGcc2010.xps参照)による最高額(アラブ圏出身の大企業CEO)と最低額(アジア圏出身の幹部秘書)は共にサウジアラビアであるが、GCC6カ国の国別平均給与を見るとサウジアラビアが最も高く、以下カタール、UAE、クウェイト、バハレーンの順であり、オマーンの給与水準が最も低い。因みにGCC平均を100とした場合、サウジアラビアは114、カタール105、UAE103であり、これら3カ国はGCC平均を上回っており、一方クウェイト、バハレーン、オマーンの指数はそれぞれ98、91、88であり、平均を下回っている。給与水準トップのサウジアラビアは最も低いオマーンの1.3倍であり、GCC各国間の給与格差はかなり大きいと言える。
図1
図1は西欧圏出身者のGCC平均給与を100とした場合の国別・出身地域別の給与水準を示したものである(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-I-1-50aSalaryInGccByCount.gif)。アラブ圏出身者のGCC平均指数は90であり、またアジア圏出身者の指数は70である。つまりアラブ圏出身者は西欧圏出身者に比べ1割程度、またアジア圏出身者は3割低く、同じような職種でも出身地域によって給与格差が非常に大きいのである。
国別にみるとサウジアラビア及びカタールは3地域の出身者ともGCC平均より高い。UAEの場合は西欧圏及びアラブ圏出身者はGCC平均を上回っており、西欧圏出身者についてはカタールよりも高い。しかしアジア圏出身者はGCC平均より少し低いレベルである。このことからUAEのリクルート市場では西欧圏出身者は求職者の売り手市場であるが、アジア圏出身者は雇用者の買い手市場であると言えよう。
クウェイト、バハレーン及びオマーンはいずれの出身者もGCC平均を下回っている。クウェイトは上位3カ国のサウジアラビア、カタール及びUAEと同じく産油国であるにもかかわらず給与水準が低い。その理由の一つとして、クウェイトは1990年のイラク進攻以降、国内経済が長期に低迷し、さらに首長家と国会が不毛の対立を続けているため、他の湾岸産油国のような大型の不動産やインフラ開発或いは石油及び石油化学等の工業開発プロジェクトが実施されておらず外国人の雇用機会が少ないためと考えられる。実際過去2年間、クウェイトの外国人人口はGCCのなかで唯一減少している。
(続く)
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