2010年06月06日

ソブリン格付けは信頼できるか? 中東とEUの格付けを比較する(上)

(注)ブログ「MY LIBRARY(前田高行論稿集)」に上下編を一括掲載しております。

1.急激に下がったギリシャの格付け
 ギリシャの財政悪化を端緒としてEUの共通通貨ユーロに対する信認が揺らいでいる。ポルトガル、スペインさらにはイタリアに対する信用不安も止まらない。ギリシャの財政悪化が露見したのは政権の交代により前政権の赤字粉飾が発覚したためである。8年ぶりに政権交代したばかりのハンガリーでもおなじようなことが発生した。オルバン新政権は、社会党の前政権が赤字隠しをしていたと言明、同国がギリシャの二の舞になる懸念が強まっており、各国の外国為替市場はユーロ独歩安の状態である。

 世界各国で発行される国債(政府債)は信用度の高い国は利率が低く、信用度が低い国の利率は高くなる。そのためできるだけ有利な条件で資金を調達したい各国政府は高い信用評価を求め、一方国債を安定した投資と位置づける銀行などは、たとえ利率が低くても債務不履行の恐れのない国債を求めることになる。このため国債発行体の各国政府と国債の購入者である投資家の両者にとって中立的な第三者による国家の信用度の格付けが必要となる。この信用格付けが「ソブリン格付け」と呼ばれるものであり、世界的に認められている格付け会社としてStandard & Poors(S&P), Moody’s及びFitchの3社があげられる。


 今回の信用不安で格付け会社はいずれもギリシャの格付けを数段階引き下げ、例えばS&Pは外貨建て長期債務の格付けを「BB+」としている。S&Pの格付けはAAAを最上級とし、以下AA、A、BBB、BB、B、CCC、CCまでの8段階に分かれている。このうちAAAからBBBまでは「債務履行能力あり」とされているが、BB以下は「投機的要素が強い」債務である(同社ホームページより)。つまりギリシャの国債は投機的要素が強いと判定されているのである。

 昨年まで「AA」とされていたギリシャの格付けが、年末以降立て続けに格下げされたのは、同国の財政赤字が露見したためであるが、格付け会社のソブリン格付けを信用してギリシャ国債を買ったドイツなどの金融機関からは、格付け会社がギリシャの粉飾を見抜けなかったことに対して批判の声が出ている。信用不安はさらにポルトガル、スペイン、ハンガリーなどにも波及する恐れが出ており、欧州の金融機関は疑心暗鬼に駆られている。各国に対する信用疑惑により金融機関などの投資家が国債の購入を手控え、その結果資金の流入が細り各国の財政がますます悪化すると言う悪循環に陥っているのが現在のEUである。

 これまでEU各国のソブリン格付けは世界的に見ても高い水準で維持されてきた。そのことが各国の国債消化を円滑にし、ユーロの価値を高めていたと言えよう。これに対して中東の産油国は大幅な経常黒字を確保し超健全財政であり、ここ数年格付けは上昇している。それでも現在のEUと中東の格付けを比較すると均衡を欠いているように見える。それはEUとアジアの経済大国と比較しても同じことが言えるのである。

 本稿はこのような視点に立ってS&Pのソブリン格付け(外貨建て長期発行体の格付け)をEUと中東(及びアジア主要国)とで比較して格付けの当否を論じようとするものである。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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drecom_ocin_japan at 21:08コメント(0)トラックバック(0)General  

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