2010年06月29日

シェールガス、カタールを走らす(4)

4.世界のLNG貿易をリードするカタール
 BP統計(BP Statistical Review of World Energy 2010)によれば昨年の全世界のLNG貿易量は2,430億立法米であった。世界の天然ガス貿易は現在もパイプライン方式が全体の7割強を占めており、ロシアとノルウェーによる欧州諸国向け輸出及びカナダの対米輸出が主流であるが、LNG輸出だけを取り上げるとカタールが全体の20%強を占め、マレーシア、インドネシア、豪州などを大きく引き離している。

 1997年に世界8番目のLNG輸出国としてスタートしたカタールは、North Fieldと呼ばれる世界最大のドライ・ガス田をバックにその後天然ガス液化設備を次々と増設し、生産量を飛躍的に増大させた。同国はLNG市場における存在感を高め、2007年には世界一のLNG輸出国となった 。特に数年前から年産7,700万トン体制を標榜して野心的な設備増強を図っており、ここへきてそれらが次々と稼働を開始している。

 カタルのLNG企業はQatargasとRasGasの二社があるが、QatargasはIからIVまで四つの事業会社に分かれ7つのトレーンで合計4,080万トンの年産能力を有している。そしてRasGasはIからIIIまで三つの事業会社、7つのレーンで年産能力3,740万トンである。両者とも最新設備は年産能力780万トンと言う世界最大級を誇っている。

各事業会社はそれぞれ独立した資本構成であるが、いずれにもカタール石油が60~70%出資している。そしてExxonMobil、Total(仏)、ConocoPhillips、ShellなどIOC(International Oil Company、国際石油会社)と呼ばれる一流石油企業が各事業会社に20~30%程度資本参加し実際の操業を担っている。なお日本企業も少数株主としてQatargas Iに三井物産及び丸紅が出資しており、三井物産はQatargas IIIにも出資している。また伊藤忠商事及びLNG JapanがRasGas Iに出資している 。

最初に稼働したQatargas IのLNGは中部電力、東京ガス等に供給されているが、カタールのLNGの輸出先はその後韓国、スペイン、インド、台湾、英国等へ拡がっている。昨年の輸出量は495億㎥(立法メートル)であったが、50億㎥以上輸出した国は日本(103億㎥)、韓国(93億㎥)、ベルギー(60億㎥)、英国(58億㎥)、スペイン(50億㎥)であり、その他スポット物を含めると、昨年のカタールのLNG輸出先は15カ国に達している。

因みに世界最初のLNG貿易は1964年のアルジェリアと仏の二国間によるものであったが、カタールの輸出が始まった1997年にはLNG貿易のプレーヤーは輸出9カ国、輸入6カ国、貿易量は1,113億㎥に達し、その後も毎年増加している。1997年と昨年(2009年)のLNG輸出国及び輸出量を比較すると(表・グラフ「1997年と2009年のLNG輸出国と輸出量」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91bLngExport1997vs200.gif参照)、昨年のLNG輸出国は19カ国、貿易量は2,428億㎥に達している(但し再輸出を含む)。輸出国の数と貿易量とも2倍以上になっているのである。

輸出国の構成を見ると1997年はインドネシア、アルジェリア、マレーシア3カ国だけで全体の72%を占める寡占状態であった。これに対して2009年はカタールが他国から頭一つ抜き出ており(495億㎥)全体の20%を占めている。そして2位のマレーシア(295億㎥)から7位のナイジェリア(160億㎥))まで輸出量に大きな差がない。また地域分布を見ても中東、アジア・大洋州、北アフリカ、中米と広がりを見せている。過去10年余の間に世界のLNG輸出国の勢力図が大きく変容しているのである。

このような中で現在トップのカタールが今後LNG貿易でどのようなイニシアティブを発揮することができるのであろうか。2000年以前に比べるとカタールの意思決定のための判断要因は質量ともに増えている。まずLNG貿易の面ではプレーヤーが増えた中で、カタールのシェアは圧倒的とは言い難い。OPEC(石油輸出国機構)でサウジアラビアが圧倒的な地位を見せているのとは対照的である。

同じ天然ガス貿易でもパイプラインとLNGの比率は7:3とパイプライン方式が優勢である(グラフ「天然ガス貿易:パイプライン vs LNG」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-3-91aGasTradePlvsLNG(19.gif参照)。カタールにとってパイプラインによる輸出を主軸とするロシア、ノルウェーなどとどのような共同歩調をとることができるか、話し合いは簡単ではなさそうだ。

またLNGの競争相手としてシェールガスのような新顔が登場している。さらに景気が低迷しエネルギー需要が伸び悩む中で在来型エネルギーの雄である石油との競争が激化している。一方環境問題の観点からは太陽光発電、原子力発電などの再生エネルギー或いはクリーンエネルギーとの競合に立たされている。カタールを取り巻く環境は必ずしもバラ色とは言えないようである。

(続く)

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drecom_ocin_japan at 11:08コメント(0)トラックバック(0)Qatar  

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