2010年08月29日

荒葉一也SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(8)

ナタンズ爆撃(3)
 「エリート」は「マフィア」の放ったレーザー誘導爆弾「バンカーバスター」2発が目標地点を正確にとらえたことを確認した。しかし2回の爆発からは土煙しか上がらなかった。地中を数十フィート、強化コンクリートなら数フィートを貫通すると言われる「バンカーバスター」も地下施設までは着弾しなかったようである。「エリート」は直ちに第二次攻撃体制に入り「マフィア」と同じ航跡をたどり同じ高度と距離から同じように2発のミサイルを続けて発射した。そして発射と同時に機首を立て直し急上昇モードに入った。「ハイ・ロー・ハイ」戦術の最後の仕上げである。

 三番機の「アブダラー」から、赤外線レーダーが白い砂埃の奥に熱線を感知した、との報告が入った。後は止めを刺すだけである。「エリート」は「アブダラー」に攻撃を命じた。三番機は両翼にバンカーバスターを各1基、そして胴体下部にもう一基「バンカーバスター」をはるかに上回る破壊力を持った究極のミサイルを抱えていた。

究極のミサイルは「バンカーバスター」の攻撃でも敵の施設を破壊できない場合に限って発射されることになっていた。この究極のミサイルを発射すれば施設が全壊することは間違いなかった。それは施設に働く人間の全滅を意味し、また周辺地域もその後長期にわたり深刻な被害を受けることは必至である。即ち放射能汚染と言う被害である。

戦闘機に搭載された小型核ミサイルはイスラエル国内の極秘の地下貯蔵庫に眠っている核弾頭をもとにピンポイント爆弾として開発したものである。核ミサイルを使用すれば国際問題となるのは陽の目を見るよりも明らかであるが、その時は、放射能汚染はナタンズの核物質によるものであり、それこそイランが核濃縮を行っていた証拠だ、と言い張るつもりであった。強弁とこじつけはイスラエルの得意とするところである。

「エリート」は急上昇から左旋回し、目標を視認できる態勢をとった。砂塵が少し納まり地上に噴火口のような穴が現れ、中心から白煙が上がっている。砂煙とは明らかに異なり地下で火災が発生していることを示す白煙である。5発目の「バンカーバスター」が白い航跡を引いて噴火口に吸い込まれていく。次の瞬間そこから真っ赤な火柱が飛びだした。噴火口の周囲数カ所から次々と人間が飛び出してくる。まるで巣から這い出る蟻を見ているようである。5発のバンカーバスターでナタンズの施設は完全に破壊された。

(続く)
(この物語はフィクションです。)



drecom_ocin_japan at 10:14コメント(0)トラックバック(0)荒葉一也シリーズ  

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