2010年09月29日

荒葉一也SF小説「イスラエル、イランを空爆す」(18)

「国境の南」作戦(6)

 

 一方、客人であるイスラエル給油機を取り囲んだサウジアラビア戦闘機は給油機のパイロットに向かって自分たちのテントに立ち寄ること、即ちハフル・アル・バテン基地に着陸するように話しかけた。それは話しかけたと言うより命令したと言った方がいいのかもしれない。それに対して給油機は何も答えず、機体を左右に振っては囲いから逃れようと身をよじった。しかし給油機と戦闘機では運動性能に天と地の差があり、包囲網を脱出することが不可能であることは明らかであった。3羽の鷹に囲まれたのろまなアホウドリはその進退が極まりつつあった。

 

 次第にハフル・アル・バテン基地が近づいて来る。アホウドリはついに横を並走する鷹に体をぶつけて活路を見出そうとした。さすがの鷹もその時だけは身を横に逸らす他なかった。

 

 そのようなことが何度か繰り返された後、後尾につけていた攻撃隊長が断を下した。

 「給油機を撃墜する。」

その声を受け並走する2機の僚機は左右に分かれて行った。隊長はミサイル発射ボタンをぐいと押した。標的は目の前にある大型機。目をつぶってでも撃墜できる確かな標的だ。次の瞬間、ミサイルは狙い違わず給油機に命中した。燃料を腹一杯に蓄えた給油機は大きな炎に包まれた。ばらばらになった機体の破片が陽光を受けきらきら光りながら落下して行く。

 

 隊長の視線の先、地上には細い一本の線が東西に延びている。トランス・アラビア・パイプライン、通称TAPラインである。今は使われていないが、かつてサウジアラビア東部の豊かな原油を地中海に運ぶパイプラインであり、サウジアラビア領内の砂漠の中をイラクとの国境に沿って延々と続いている。

 

 隊長は給油機の破片がTAPラインに向かって落下していくのを見て、サウジアラビア領空内で撃墜したことを再確認した。

 「客人は我々のテントに立ち寄るようにとの申し出を断り領空外に逃走しようとした。従って領空侵犯で撃墜した。」

 隊長は基地に報告すると部下の僚機2機を引き連れ、基地に向かってゆっくり高度を下げ始めた。

 

(続く)

 

(この物語は現実をデフォルメしたフィクションです。)



drecom_ocin_japan at 05:44コメント(0)トラックバック(0)荒葉一也シリーズ  

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