2013年11月28日
MENA(中東・北アフリカ)の「ビジネス環境」(2014年版)(6)
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)で一括ご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0289MenaRank13.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)
5.2010~2014年の順位の推移
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/13-T03.pdf 参照)
2010年から2014年までの5カ年についてMENA各国の順位の変遷を見ると、2010年から2013年までの4年間はサウジアラビアが1位であったが、今回UAEがトップに立った。UAEは2010年の4位から2012年には2位に浮上、そして今回1位と順位を上げている。両国の過去5年間の世界順位はサウジアラビアが13位→10位→12位→22位→26位、UAEは33位→35位→33位→26位→23位である。サウジアラビアが過去4年間世界順位を続落させているのに対してUAEは同期間内に順位を大きくあげていることがわかる。
両国に続くのがイスラエルで5年間を通じて常に2位又は3位を維持している。5年前にMENA2位であったバハレーンは2013年にはMENA5位に転落、今回4位に戻している。この間のバハレーンの世界順位の推移を見ると20位(10年)→33位(11年)→38位(12年)→42位(13年) →46位(14年)と5年間で26ランクも落ちている。
MENAの平均世界順位は5年間で87位(10年)→85位(11年)→85位(12年)→90位(13年) →99位(14年)であり過去3年間は大きく低落している。上記のようにMENA上位国の世界順位とMENAの平均順位は共に下落しており、MENAのビジネス環境が近年世界的な競争力を失っていることを示している。2011年に始まった「アラブの春」による政治的経済的な動揺がその最大の原因であろう。
上記以外のGCC諸国のMENA域内の順位はカタールが4位~6位を、またオマーンは8位~6位を維持し、クウェイトは6位→10位に下落している。これを世界順位で見るとオマーンは65位(10年)→53位(11年)→49位(12年)→47位(13、14年)と毎年順位を上げ、一方カタールとクウェイトはそれぞれ39位(10年)→38位(11年)→36位(12年)→40位(13年) →48位(14年)、61位(10年)→71位(11年)→67位(12年)→82位(13年) →104位(14年)と最近3年間に順位を下げており、両国のビジネス環境が悪化していることがわかる。クウェイトは有力な産油国であり豊富な石油収入によりマクロ経済に全く問題はないにも関わらず同じGCC加盟国であるサウジアラビア、UAE、カタールなどと比較して評価が著しく低い。国内の政情が不安定で国会の解散と内閣改造を頻繁に繰り返していることがビジネスのマイナス要因となっている。
因みに「アラブの春」で大きな変革を迫られた国々の過去5年間の世界順位の推移を見ると以下のとおりである。
チュニジア: 69位→ 40位→ 46位→ 50位 → 51位
イエメン: 99位→ 94位→ 99位→118位 →133位
ヨルダン: 100位→ 95位→ 96位→106位 →119位
エジプト: 106位→108位→110位→109位 →128位
シリア: 143位→136位→134位→144位 →165位
上記のうちチュニジアは「アラブの春」直前の2011年には一旦順位をかなり上げたが(注、ビジネス環境評価は前年に発表されるため2011年の順位は2010年に査定されたものである)、以降は毎年下落している。その他の4カ国は過去3カ年で順位を大きく下げており「アラブの春」がビジネス環境に与えた影響の大きさがわかる。
(完)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp