2014年04月01日

サウジアラビア・サウド家(改訂版)(1)

1.サウド家の歴史
(1)第一次サウド王朝とワッハーブ主義
 サウジアラビアはアラビア半島の大半を占める面積215万平方KM(日本の6倍弱)、人口は2,810万人(国連人口基金データによる) の国でありサウド家が支配する王国である。「サウジアラビア」とは「サウド家のアラビア」と言う意味であり、支配一族の名前が国名の一部を成している例は世界的に見てもサウジアラビアとヨルダン(正式国名:Hashemite Kingdom of Jordan、「ヨルダン・ハシミテ王国」)だけであろう。


 サウド家は歴史上三度の興亡を繰り返しており、1932年にアブドルアジズ・アル・サウド(通称イブン・サウド)が樹立した現在のサウジアラビア王国は第三次サウド王朝である(図「サウド家系図」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-1-2AlSaudDynasty.pdf参照)。サウド家の祖先は1700年頃から現在の首都リヤド北西のオアシス、ディルイーヤに定住していた豪族である。一族はオアシスでナツメヤシ等を栽培、周辺でラクダ、羊を放牧飼育していた。一般にはサウド家はアラビアの遊牧民「ベドウィン」或いは「ノマド」と同一視されているが、厳密には彼らは定着農耕部族なのである(サウド家は潜在的にベドウィンを蔑視しているとすら言われる )。


 第一次サウド王朝は18世紀初頭にムハンマド・ビン・サウド(「サウドの息子ムハンマド」の意)が開いたものであり、「サウド家」の名称は父親の名前サウドに因んでいる。これ以降サウドの子孫は現在の第三次王朝に至るまですべて呼称の最後に「アル・サウド(アルは家名の定冠詞、英語の’The’に相当)」を冠し、Prince(王子)を名乗っている(但し後述するように現王朝ではアブドルアジズの息子やその子孫のPrince達だけが王位継承権を持っており、それ以外のPrince達とは扱いが異なる)。


 ムハンマド・ビン・サウドがディルイーヤの領主であった頃、若いイスラム法学者ムハンマド・ビン・ワッハーブが周辺の部族に対して布教活動を行っていた。ワッハーブはアラーの唯一絶対性を説くスンニ派サラフィー主義に傾注し、彼と信者達は「ワッハーブ派」と称された。サラフィー主義は14世紀頃のシリアを起源としイスラムの教義シャリアの厳格な解釈を通じてイスラム国家の樹立を目指す運動であるが、現代のエジプトのムスリム同胞団もその流れを汲む組織の一つである。ワッハーブ派はサラフィー主義の中でも教義の解釈や日常生活の戒律が特に厳しい一派であり、サウジアラビアはそのワッハーブ派を国教としている。因みにサウジ人のオサマ・ビン・ラディンが創設したイスラム過激派アルカイダは「サラフィー主義」に「ジハード(聖戦)」思想が結びついたものである。このようなことからワッハーブ主義が宗教的な偏狭さとテロ及び暴力のイメージを持たれる一因となっている。


 世俗君主のムハンマド・ビン・サウドと宗教家ムハンマド・ビン・ワッハーブの二人のムハンマドは盟約を結び武力と宗教を一体化してアラビア半島中央部ネジド地方の制圧に乗り出した。こうして生まれたのが「第一次サウド王朝」である(1725年)。因みにアラビア半島は中央部がネジド地方と呼ばれ、これに対して半島西部地方はヒジャズ、東部地方はアルハサと称される。西部のヒジャズはマッカ、マディナ、ジェッダなどを含む紅海沿岸地域であり、東部のアルハサはアラビア(ペルシャ)湾沿岸地域である。アルハサ地方は現在主要な油田地帯であるが18世紀当時は不毛の土漠(desert)であり、わずかにダンマン、ホフーフ等のオアシスが散在していたにすぎない。


 第一次サウド王朝はオスマントルコ支配下のエジプトの総督とヒジャズ地方の領有をめぐって幾度となく争奪戦を繰り返したが、第4代のアブダッラーが戦いに敗れてイスタンブールで処刑され第一次王朝は滅亡した(1818年)。


(続く)


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