2014年08月21日
格差の大きい産油国と非産油国―MENA(中東・北アフリカ)の「人間開発指数」(2014年版)(3)
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0321MenaRank11.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その11)
(人間開発度は高くても、男女の格差が大きいカタール!)
3.2013年の国別男女不平等指数(GII)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/11-T02.pdf 参照)
男女不平等指数(GII)は、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、エンパワーメント、そして経済活動への参加の3つの側面で、ジェンダーに基づく不平等がどの程度存在するかを表す指数である(第1項参照)。GIIがMENAで最も低い(つまり男女平等が最も進んでいる)国はイスラエルでGII指数は0.101、世界17位である。イスラエルに次いでMENAでGIIが2番目に低い国はリビアで同国のGII指数は0.215、世界順位40位であり、イスラエルとはかなり格差が大きい。
リビアに続いてUAE(指数:0.244、世界順位43位)、バハレーン(同0.253、46位)、チュニジア(同0.265、48位)及びクウェイト(同0.288、50位)が世界50位以内に入っている。これら6カ国のMENAの順位は昨年と変わらないが、イスラエルは2012年(GII指数0.144、世界順位25位)に比べ指数、順位共にアップしているのに比べ、他の国々はいずれも世界順位がダウンしている。
これを人間開発指数(HDI、第2項)と比較すると、イスラエル、UAE、バハレーン、クウェイトなどはHDIとGIIの世界順位はほぼおなじであるが、リビア及びチュニジアは両者の順位が大きく異なっている。チュニジアの場合はHDI世界順位90位に対しGIIの世界順位は48位であり、リビアはHDIが世界55位に対してGIIは40位である。ともに人間開発指数が低いにも関わらず男女平等の程度が世界的にも高い水準にある。これに対してカタールはHDIの世界順位が高い(31位)にもかかわらず、GIIの順位が極めて低い(113位)。GIIは女性の政治・経済活動への参加の程度を算定基準としているがカタールはこの面で大きく遅れていると考えられる。
GIIの世界順位が51位から100位までの国はサウジアラビア(GII指数0.321、世界56位、以下同じ)、オマーン(0.348、64位)、トルコ(0.360、69位)、レバノン(0.413、80位)、アルジェリア(0.425、81位)、モロッコ(0.460、92位)の6か国である。この中で昨年の指数0.662、世界順位145位であったサウジアラビアが指数、順位ともに大幅に改善されていることが注目される。評価指標の一つである議会の女性比率について同国で諮問評議会に定員の2割の女性議員が任命されたことがランクアップに大きく貢献している。
GII世界順位が100位以下の国はヨルダン(0.488、101位)、イラン(0.510、109位)、カタール(0.524、113位)、イラク(0.542、120位)、シリア(0.556、125位)、エジプト(0.580、130位)及びイエメン(0.733、152位)である。GII指数は世界152カ国について算定されているためイエメンは全世界で不平等指数が最も高い国となっている(なおパレスチナ自治区はGIIの評価対象外)。
男女不平等指数(GII)世界100位以下の国について人間開発指数(HDI)と比べると、エジプト、シリア、イラク、イエメン等はHDIも100位以下である。これに対してカタールはHDIの世界順位が31位に対し男女不平等指数では世界113位であり男女の不平等さが際立っている。エジプト、イラクなどは妊産婦死亡率、進学状況の低さが反映したものであり、カタールの場合は国政への参加率(女性国会議員の比率)の低さが反映したものと考えられる。カタールはアルジャジーラ放送や欧米大学の誘致、モーザ前首長妃の活躍など一見進歩的で女性重視の印象があるにもかかわらず実態的には男女格差はかなり大きいことがわかる。
なおアラブ諸国の平均GIIは0.546であり、全世界平均の0.451に比べかなり見劣りがする。因みに日本のGIIは0.138で世界では25位である。これに対し米国の世界順位は47位、中国は37位で米国のGII順位は中国よりも低い。米国の人間開発指数(HDI)が世界5位であるのに比べGIIの低さが際立っている。
(続く)
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