2014年10月29日
MENA(中東・北アフリカ)22カ国のGDPの比較(2014年10月版)(4)
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0328MenaRank3.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その3)
(カタールの一人当たりGDPは日本の2倍以上!)
3.MENA各国の一人当たりGDP
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/3-T03.pdf参照)
2014年(見込み)の一人当たりGDPがMENA諸国で最も大きい国はカタールの94,744ドルである。これはルクセンブルグ(116,752ドル)、ノルウェー(99,295ドル)に次いで世界で も三番目に高い。MENAでカタールに続くのがクウェイト(44,850ドル)及びUAE(44,771ドル)であり、カタールが飛びぬけて高いことがわかる。ちなみに米国は54,678ドル(世界9位)、日本は46,175ドル(世界26位)であり、いずれもクウェイト、UAEよりは高い。
4番目に高いイスラエルは37,914ドル、5位から7位にはバハレーン(28,424ドル)、サウジアラビア(25,401ドル)、オマーン(21,688ドル)が2万ドル台で並んでおり、MENA上位7カ国のうちGCCが6カ国を占めている。8位レバノン(10,531ドル)及び9位トルコ(10,518ドル)の両国は1万ドルを超えているものの7位オマーンの半分以下である。
10位のリビア以下は下記の通りいずれも一人当たりGDPは1万ドル未満である。
リビア(7,942ドル)、アルジェリア(5,886ドル)、イラク(5,687ドル)、イラン(5,165ドル)、ヨルダン(4,618ドル)、チュニジア(4,467ドル)、)モロッコ(3,392ドル)、エジプト(3,337ドル)、イエメン(1,655ドル)、(シリア、パレスチナは公表数値なし)。ちなみに中国の一人当たりGDPは7,572ドルであり、リビアとほぼ同水準である。
MENA最下位のイエメンはトップのカタールの実に60分の1である。地域の大国と言われるトルコ、イラン、エジプトは人口が多いため一人当たりGDPはMENAの中下位グループにとどまっており、トップのカタールと比べた場合、トルコは9分の1、イランは20分の1、エジプトは30分の1にすぎない。
MENAの平均の一人当たりGDPは20,055ドルであり、世界的にみると40位以内でかなり高い水準と言えよう。これはカタール、クウェイト、UAE、サウジアラビアなどのGCC産油(ガス)国があり、しかもカタール、UAEなどは人口が少なくこれらGCC諸国が地域全体をかさ上げしているためである。ちなみにGCC6カ国の平均は43,313ドルでありMENA平均を2倍以上上回っている。
なお一人当たりGDPは各国のGDP総額を人口数で割ったものであるが、IMF統計における計算の母数となる人口、特にGCC諸国の人口数については注意すべき点がある。例えばカタールの人口は約200万人とされており、同国の一人当たりGDP94,744ドルは同国のGDP(2,120億ドル。前項参照)をその人数(224万人)で割ったものである。しかし同国人口のうち80%以上はインドなど貧しい国からの出稼ぎ労働者が占めており、カタール国籍を有する自国民は40万人足らずと言われる。通常、統計上の人口数は国籍を有する者のみが対象で一時的な出稼ぎ労働者は含まないが、カタールの一人当たりGDPには出稼ぎ労働者も含まれており実態を正確には表していないと言える。このことは外国人比率が7割を占めるUAE或いはクウェイトについても言えることであり、3分の1が外国人であるサウジアラビアの場合も程度の差はあれ同様である。
このような要素を加味してGDPを算出した統計は見当たらないが、実態的に言えばカタール、UAE、クウェイトの一人当たりGDPはIMF公表数値の数倍に達すると考えられ、これら湾岸産油国の一人当たりGDPが世界最高レベルであることは間違いないであろう。
(続く)
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