2015年11月26日

年々悪化するMENAのビジネス環境-MENA(中東・北アフリカ)の「ビジネス環境」(2016年版)(5)

(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0362MenaRank13.pdf

(MENAなんでもランキング・シリーズ その13)


4.MENA7カ国及び日米韓の項目別比較(レーダーチャート)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/13-G01.pdf 参照)
 図はエジプト、トルコ、イラン及びGCC3カ国(サウジアラビア、UAE、カタール)のMENA6カ国と日本、米国及び韓国の9カ国を上位グループ、中位グループ及び下位グループの三つに分け、各国の項目別世界順位をレーダーチャートとして表示したものである。レーダーチャートは最も外側が世界順位1位であり内側の中心は201位である。各分野の世界順位を結ぶ輪が各国の項目別順位の状況を示している。レーダーチャートの輪が外側に広がっているほど世界での順位が高く、また輪の形が真円に近いほど各分野の世界順位が平均していることを示している。


(1)上位グループ:米国、日本、韓国
 韓国はほぼ全ての分野で世界のトップグループである。同国の総合順位は世界4位であり、電力事情が世界1位であるほか契約強制力(2位)及び清算(4位)も世界10位以内である。また起業(23位)、建設許可(28位)、徴税(29位)、通関(31位)等世界20~30位前後が多く、最も低い信用取得でも世界42位であり全項目にわたって均整の取れたビジネス環境である。


 米国は総合順位が7位で韓国をわずかに下回っている。米国が韓国よりも劣っているのは起業(世界49位)、電力事情(同44位)、投資家保護(同35位)、契約強制力(21位)など8つの項目である。一方米国が韓国を上回っているビジネス環境は登記(同34位)及び信用取得(同2位)の2項目である。


 これに対して日本は総合順位世界34位でベストテンに入る韓国、米国とかなりの格差があり、10項目についても世界順位は殆ど両国を下回っている。特に起業(世界81位)、建設許可(68位)、信用取得(79位)などは米国、韓国いずれの国よりも低く、特に徴税分野では世界121位であり、韓国(29位)、米国(53位)よりも大きく引き離されている。日本が両国のいずれかよりも順位が高い項目は電力事情が米国よりも高く、また清算項目(世界2位)のみが韓国(4位)及び米国(5位)を上回っている。


 韓国及び米国のレーダーチャートが外側に広がった比較的真円に近い(つまりビジネス環境が平均して良好である)のに対して、日本の場合は徴税など世界の下位グループに評価されている項目が散見され、レーダーチャートの円はいびつな形となっている。


(2)GCC産油国グループ:UAE、サウジ、カタール
 UAE、サウジアラビア、カタールの産油(ガス)3カ国を比較すると総合順位ではUAE31位、カタール68位、サウジアラビア82位であり、UAEが他の2カ国を大きく上回っている。項目別に見ると起業分野の世界順位はUAE60位、カタール109位、サウジ130位であり、サウジとカタールの評価が低い。建設許可、登記及び徴税の分野は3カ国とも比較的世界順位が高く、特に徴税分野ではUAE及びカタールが世界1位、サウジは世界3位といずれもトップクラスである。UAEの場合は建設許可、電力事情及び徴税の3分野で世界10位以内に入っている。


 反対にこれら3カ国は信用取得(サウジ79位、UAE97位、カタール133位)或いは通関(UAE101位、カタール119位、サウジ150位)がいずれも世界平均を下回っている。3カ国の比較で見るとカタールは電力事情及び契約強制力の分野でUAE或いはサウジアラビアよりもかなり低く、一方サウジアラビアは清算分野が他の2カ国に比べて大きく劣っている。


(3)下位グループ:トルコ、エジプト、イラン
 中東の三大国トルコ、エジプト及びイランのビジネス環境の総合順位はそれぞれトルコ55位、イラン118位、エジプト131位でありイランおよびエジプトの評価が低い。分野別の世界順位を見るとトルコが比較的順位が平均化しているが、エジプト及びイランは分野ごとの格差が大きい。


 また3カ国の順位格差を見ると起業(エジプト73位、イラン87位、トルコ94位)、信用取得(同79位、97位、79位)、清算(同119位、140位、124位)の各分野は3カ国の格差が比較的小さいが、その他の分野では3カ国の格差が大きい。たとえば電力事情ではトルコ36位、イラン88位、エジプト144位と3カ国のビジネス環境には大きな違いがあり、契約強制力についてもトルコ36位、イラン62位、エジプト155位でその格差が大きい。投資家保護の分野ではトルコが世界20位でトップレベルにあるのに対してエジプトとイランはそれぞれ122位、150位でありトルコが抜きんでている。通関についても同様にトルコの62位に対してエジプト157位、イラン162位である。


(続く)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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drecom_ocin_japan at 11:08コメント(0)トラックバック(0) 

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