2015年12月21日

(ニュース解説)初の女性議員が誕生したサウジ地方議会選挙

地方議会選挙2

 12日にサウジアラビアで地方議会選挙が行われ同国初の女性議員21名が誕生した 。公選制の地方議会選挙は今回で3度目であるが、女性に選挙権及び被選挙権が与えられたのは今回が初めてである。因みに投票年齢もこれまでの21歳から今回は18歳に引き下げられた。但し18歳以上の男女全員が実際に投票できる訳ではなく、事前に登録した者に投票権が与えられる。また立候補についても審査がある。


 地方議会の数は284あり議員定数は3,159人であるが、選挙の対象は3分の2の2,106人、残りの3分の1は政府が任命する。リヤド、ジェッダなど大都市の定員は30名であり、従って両都市では20の議席をめぐって選挙戦が行なわれたのである。


 今回有権者登録した人数は約150万人で立候補者数は女性979人を含む6,917人、女性の比率は14%であった。なお立候補届をしたものの審査で却下された者が男性226名、女性9名の235名に達したと発表されている。リヤドの場合、立候補者総数は427名で、そのうち女性は33%の141名を占めており、全国平均の14%を大幅に上回り、大都市での女性の政治意識が高いことがわかる。全国レベルでは2,106議席に対し立候補者総数6,917人で平均競争倍率は3.3倍であったが、リヤドでは21倍(立候補者数427人/議席数20)の激しい競争が繰り広げられた。


 投票者総数は70万人強であり、投票率は47%にとどまり決して高いとは言えないであろう。全国レベルの男女別投票者数は不明であるが、リヤドでは総投票者数11,448人、内訳は男性7,765人、女性3,683人でおよそ3分の1を女性が占め、立候補同様投票面でも女性の意識が高いことがわかる 。


 なお投票権を有する18歳以上のサウジ人の正確な人数はわからないが、中央統計局は外国人を除くサウジ人の全人口を2千万人としており 、ウィキペディアによる15歳以上の人口比率72.4% をもとに計算するとサウジアラビアの18歳以上の人口は1,400万人程度と推定される。これから判断すると有権者登録を行った者は対象者の10%強であり、さらに実際に投票したのは5%程度ということになる。リヤドの場合立候補者427人に対して11,448人が投票した訳であり、立候補者一人当たりの平均得票は27票にすぎない。これで民意を吸い上げられたと見るかどうかは極めて問題である。


 実際過去2回の選挙(選挙権年齢が21歳以上の男性)では投票者数は第1回が79万人、第2回は41万人であり、いずれも選挙権人口の5%もしくはそれ以下であったと思われる。しかも投票者数は第1回のほうが今回よりも多いほどである。これら3回の選挙から言えることは、第1回は初めての民選選挙として大きな関心を集めたものの、当選した民選議員たちの地方議会における活動にさほど見るべき成果が無く、第2回選挙は国民の関心が低下し投票率が極めて悪かったことがわかる。今回は女性に参政権を認めたことにより、女性有権者(特に都市部の女性)の関心が高かったことで登録者数及び投票者数が第1回選挙と同程度になったということが言えよう。


 地方議会に対して国政レベルの諮問評議会を見ると150名の評議員は全て国王が任命する直線議員であり、今のところ民選の動きは無い。しかしアブダッラー前国王時代の2013年に議員定数のうち30名が女性に割り当てられた結果、諮問評議会の女性議員の比率は2割を占め、地方評議会の1%よりも圧倒的に高い。女性議員には学識経験者が多く、勅撰であるため当然のことながら穏健な思想の持ち主である。サウド家のお眼鏡に適った彼女たち国政レベルの議員と自らの意思で立候補し当選した今回の地方議会の女性議員とは単純に比較することはできない。しかし国政レベル、地方レベルを問わず評議会はあくまで諮問機関であり立法権は無い。政治のみならず、経済、教育の分野でも近年サウジアラビアの女性の地位が上がっていることは間違いないが、今回の地方議会選挙を女性の地位向上と短絡的に結び付けることは時期尚早かもしれない。


以上


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drecom_ocin_japan at 11:20コメント(0)トラックバック(0) 

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