2015年12月23日
格差の大きい湾岸産油国とその他―MENA(中東・北アフリカ)の「人間開発指数」(2015年版)(4)
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0367MenaRank11.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その11)
(カタールはGCC6カ国で最も低い世界116位!)
4.2014年の国別男女不平等指数(GII)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/11-T02.pdf 参照)
男女不平等指数(GII)は、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、エンパワーメント、そして経済活動への参加の3つの側面で、ジェンダーに基づく不平等がどの程度存在するかを表す指数である(第1項参照)。GIIがMENAで最も低い(つまり男女平等が最も進んでいる)国はイスラエルでGII指数は0.101、世界18位である。イスラエルに次いでMENAでGIIが2番目に低い国はリビアで同国のGII指数は0.134、世界順位27位であり世界150か国の上位5分の1以内に入っている。
リビアに続いてUAE(指数:0.232、世界順位47位)、チュニジア(同0.240、48位)、バハレーン(同0.265、51位)、オマーン(同0.275、53位)及びサウジアラビア(同0.284、56位)が世界50位前後に入っている。
これを人間開発指数(HDI、第2項)と比較すると、イスラエル、UAE、及びバハレーンはHDIとGIIの世界順位におおきな隔たりは無いが、リビアはGII順位(27位)がHDI順位(94位)よりも極めて高く、チュニジアも同様の傾向にある。ともに人間開発指数が低いにも関わらず男女平等の程度が世界的にも高い水準にあることを示している。一方カタールはGII順位が116位と世界の下位グループにとどまっているが、HDIの順位は世界32位であり、人間開発度は高いが男女の不平等格差が極めて大きいとされている。GIIは女性の政治・経済活動への参加の程度を算定基準としているがカタールはこの面で大きく遅れていると考えられる。
上記の他GIIの世界順位が100位までの国はトルコ(GII指数0.359、世界71位、以下同じ)、レバノン(0.385、78位)、クウェイト(0.387、79位)及びアルジェリア(0.413、85位)の4か国である。GII世界順位が100位以下の国はヨルダン(0.473、102位)の他イラン(0.515、114位)、カタール(0.524、116位)、モロッコ(0.525、117位)、シリア(0.533、119位)の各国が110位台にひしめきイラク(0.539、123位)、エジプト(0.573、131位)と続いている。MENA最下位はイエメンで同国は世界最下位の155位でもあり、そのGII指数は0.744とエジプト(0.573)との格差が極めて大きい。(なおパレスチナ自治区はGIIの評価対象外)。
男女不平等指数(GII)世界100位以下の国について人間開発指数(HDI)と比べると、エジプト、シリア、イラク、イエメンはHDIも100位以下である。これに対してカタールは上記の通りHDIの世界順位が32位であり人間開発と男女の不平等の格差が際立っている。同国の場合は国政への参加率(女性国会議員の比率)の低さが反映したものと考えられる。カタールはアルジャジーラ放送や欧米大学の誘致、モーザ前首長妃の活躍など一見進歩的で女性重視の印象があるにもかかわらず実態的には男女格差はかなり大きいと評価されている。
なおアラブ諸国の平均GIIは0.537であり、全世界平均の0.449に比べかなり見劣りがする。因みに日本のGIIは0.133で世界では26位である。これに対し米国の世界順位は55位、中国は40位で米国のGII順位は中国よりも低い。米国の人間開発指数(HDI)が世界8位であるのに比べGIIの低さが際立っている。
(続く)
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