2017年07月05日
停滞気味のMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2017年版」(3)
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
2017.7.5
前田 高行
1. FDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額) (続き)
(2) 2011-2016年のFDI Inflows(FDI インバウンド)の推移
(一進一退を続けるMENAへの投資!)
a)MENA全般の動向
(表http://menarank.maeda1.jp/4-T02.pdf 参照)
2011年に715億ドルであったMENA地域のFDIインバウンドは2012年以降は748億ドル(2012年)→650億ドル(2013年)→506億ドル(2014年)と3年連続して減少した。2015年、2016年は530億ドル台で推移しており、2012年の7割の水準にとどまっている。
MENAと世界全体を比較すると2011年の全世界のFDIインバウンドは1.6兆ドルに対しMENAのそれは715億ドルであり、全世界に占める比率は4.5%であった。その後全世界の投資額は2016年に1.7兆ドルに伸びたが、MENA地域は逆に大幅に減少しておりその結果MENAの全世界に占める比率は2016年には3.1%に下がり、FDIインバウンドにおけるMENAの存在感は薄らいでいる。
2012年以降のMENAの直接投資の停滞は「アラブの春」とその後のMENAの政情不安及び原油価格の影響が大きいと考えられる。2011年から2013年にかけて原油価格が急騰し、GCC産油国では投資・建設ブームが発生したが、外国投資家はMENAの政情不安を嫌って投資を手控えており、またその後2014年から昨年にかけて原油価格が急落し、現在も停滞していることが外国投資家の不安感を誘ったと見られ投資は低い水準のままである。
なお中国の2011年の投資流入額は1,220億ドルでその後足踏みが続いていたが、2015年は1,360億ドルとなり2016年も1,340億ドルを記録している。米国は2011年の2,300億ドルから2014年には1,720億ドルまで減少した後、2015年は一気に3,480億ドルに倍増、2016年も3,910億ドルと過去6年で最高の水準に達している。これに対して日本のFDIインバウンドは諸外国に比べ極めて低く、しかも過去6年間のうちの2回(2011年および2015年)は還流額が新規インバウンドを上回る純減状態である。また2012~13年の2年間もFDIインバウンドは20億ドル前後にとどまっている。2016年は過去6年間で最も大きかったがそれでも114億ドルであり、トルコとほぼ同じ水準で米国、中国に比べると格段に少ない。
(続く)
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