2017年07月16日
停滞気味のMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2017年版」(5)
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0418MenaRank4.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
2017.7.16
前田 高行
2.FDIアウトバウンド(FDI Outflows, 対外直接投資)
(1)2016年のFDI outflows(FDIアウトバウンド)
(FDIアウトバウンドが飛び抜けて多いUAEとイスラエル!)
a)MENA各国の対外直接投資
(表http://menarank.maeda1.jp/4-T03.pdf 参照)
2016年のMENA各国のFDIアウトバウンド(FDI outflows)の総額は447億ドルであり、同年の全世界の合計額1兆4,500億ドルに占める割合は3.1%であった。これはFDIインバウンド(FDI Inflows、第1項参照)の世界全体に占める割合と同じである。因みに日本、米国、中国の投資額はそれぞれ1,450億ドル、2,990億ドル及び1,830億ドルであり、米国一国でMENA投資額の7倍、中国は4倍、日本は3倍である。
国別では、UAEが157億ドルと最も多く次いでイスラエルが125億ドルであり、この2か国でMENA全体の3分の2を占めている。両国に続くのがサウジアラビア(84億ドル)、カタール(79億ドル)、トルコ(29億ドル)である。
第6位以下の各国は上位5カ国と大きな開きがありいずれも10億ドル未満である。各国の投資額は以下の通り。
オマーン(8.6億ドル)、レバノン(7.7億ドル)、モロッコ(6.4億ドル)、リビア(3.4億ドル)、イラク(3.0億ドル)、エジプト(2.1憶ドル)、バハレーン(1.7億ドル)、パレスチナ自治区(1,1億ドル)、イラン(1.0億ドル)。アルジェリア、イエメン、チュニジア、ヨルダン各国はいずれも1億ドル未満である。なおクウェイトはマイナスー63億ドルであり、これは対外投資の引き揚げが新たな投資を上回っているためであり、同国の対外直接投資が極めて低調だったことを示している。またシリアはデータが示されていない。
2015年と比較すると、総額では46億ドルの減少である。世界全体を見ても1,420億ドル(-9%)の減少となっている。その結果MENAの占める比率は両年ともに3.1%と変化がなかった。国別で最も大きく増加したのはカタール(40億ドル→79億ドル)である。カタールに次いで増加額が大きいのはサウジアラビアおよびイスラエルであり、サウジアラビアは2015年の54億ドルから2016年は84億ドルに、またイスラエルは99億ドルから125億ドルに増加している。一方、2015年よりも大幅に減少したのはクウェイト(+54億ドル→ -63億ドル)である。
(続く)
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