2017年07月17日

GCC内紛でカタールが格下げ:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2017年7月現在) (3)

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
 http://mylibrary.maeda1.jp/0415SovereignRating2017July.pdf

 

2017.7.17

前田 高行

 

2.7月現在の各国の格付け状況 (続き)

(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf 参照)

 

(格下げされたカタール、大きく劣るサウジアラビア、MENA諸国の半数以上が投機的ランク!)

(3) GCC6か国を含むMENA諸国の格付け

GCC6カ国のうちクウェイトおよびアブダビ(UAEは首長国単位の格付けでありドバイは格付けされていない)AAである。カタールは先月(6)迄はクウェイト、アブダビと同じ格付けであったが、65日にサウジアラビア、UAEなどが同国と断交し、陸路・海路が封鎖されたため経済の見通しが不安視され、格付けは1ランク下がりAA-になった(中国と同格、日本よりは1ランク上)。

 

GCC最大の経済規模を誇るサウジアラビアは昨年前半まではこれら3か国と同じランク(AA)であったが、現在はA-であり、UAE、クウェイトとは4ランク、カタールとは3ランクの差がある。原油価格の低迷で同国の財政は厳しい試練に直面しており、外貨準備高が急速に減少しただけでなく、7年ぶりに国債発行を余儀なくされている。財務改善のめどが立たないことに対し格付け機関は厳しい評価を下している。

 

同じGCC加盟国の中で財務状況が悪化しているオマーンは昨年1月のAランクから昨年下半期には投資適格で最も低いBBB-にランクが落ち、さらに今年上半期には投機的(あるいは投資不適格)BB+になり、1年の間に大幅に格付けを下げている。またGCC6か国の中で非産油国のバハレーンは経済が脆弱であり、また政治的にも不安定要因を抱えているためもともと他の5か国より格付けが低く、現在はBB-である。因みにS&Pの定義では格付けBBは「事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある」とされている。

 

 その他のMENA諸国ではイスラエルがA+であるがこれは日本と同格である。モロッコはBBB-でかろうじて投資適格の格付けを維持している。これに対してトルコは昨年後半にBB+からBBに格下げされ投資不適格のままであり、ヨルダンはトルコよりさらに1ランク低くバハレーンと同じBB-にとどまっている。エジプト、レバノン及びイラクはこれらの国々よりさらに3ランク低いB-の格付けであり、EUのギリシャとおなじ格付けである。

 

(東南アジア諸国は投資適格と不適格の境目に混在!)

(4) BRICsおよびアジアの発展途上国の格付け

アジア・オセアニア地域ではオーストラリア、シンガポールおよび香港が独、スイスなど西欧諸国に並ぶ最上級AAAの格付けであり、東南アジア諸国ではタイがBBB+、フィリピンはBBB、インド及びインドネシアがBBB-である。BBBS&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされ投資適格の中で最も低いランクである。なおインドネシアは昨年末迄は投資不適格のBB+であったが、今年上半期に投資適格のBBB-にアップしている。

 

インドネシアとは逆に南アフリカは上半期に投資不適格のBB+に格下げされ、ロシアと同じ格付けになっている。BRICsの一角であるブラジルは南アフリカ、ロシアより1ランク低いBBであり、これはトルコと同じ格付けである。東南アジアの新興工業国ベトナムはBB-であり、ヨルダンあるいはバハレーンと同格である。

 

(続く)

 

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        前田 高行         183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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drecom_ocin_japan at 21:17コメント(0) 

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