2017年07月20日
停滞気味のMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2017年版」(7)
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0418MenaRank4.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
2017.7.20
前田 高行
(2) 2011-2016年の対外投資額(FDIアウトバウンド)の推移
(3年連続100億ドル超の対外投資を続けるUAE!)
(a)MENA諸国の対外直接投資(FDIアウトバウンド)
(表http://menarank.maeda1.jp/4-T04.pdf 参照)
MENA地域の2011年から2016年までの対外投資額は2011年の420億ドルに始まり、その後は減少と増加を繰り返し2016年は447億ドルであった。世界全体に占めるMENAの比率は2.2%(2014年)と3.8%(2013年)の間を上下している。
2011年のMENAの対外投資の合計額420億ドルは同年の中国(747億ドル)の6割弱であったが、その後中国の対外投資が大きく増加した結果、2016年はほぼ4分の1となっている。日本と比べると2011年は日本がMENAの2.6倍であったが、その後日本の対外投資は毎年1千億ドル台を超えており、2016年には日本はMENAの3倍になっている。
MENAの対外投資を常にリードしているGCCについては次項に詳述するが、GCC以外の主な国を見ると、まずイスラエルの対外投資額は92億ドル(2011年)→33億ドル(2012年)→55億ドル(2013年)→37億ドル(2014年)→99億ドル(2015年) →125億ドル(2016年)で非GCC諸国の中では高い水準を維持しており、同国が対外投資に積極的であることがわかる。これに対してエジプトは「アラブの春」の2011年の対外投資は6億ドルにとどまり、その後もさらに少ない2~3億ドルの水準が続いている。ムバラク体制の崩壊後ムルシ・イスラム政権が短期間でシーシ軍事政権に交替するなど経済が混乱したことが対外投資に大きく影響しているようである。
中東でエジプトと並ぶ大国であるトルコ及びイランについては、まずトルコの対外投資は「アラブの春」の2011年の騒乱期は20億ドル台の低い水準にとどまったが、その後2012年には41億ドルに増加、2014年、2015年もそれぞれ67億ドル、48億ドルの高い数値を示した。但し2016年には29億ドルと6年前の水準に戻っている。イランは経済制裁の影響でFDIインバウンドも低い水準にあるが(1-2-a参照)、FDIアウトバウンドはさらに低く過去6年間のうち5年は一桁台であり、2016年はMENA19か国中の13位にとどまっている。
(続く)
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