2017年08月01日
停滞気味のMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2017年版」(11)
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0418MenaRank4.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
2017.8.1
前田 高行
(2) 2000-2016年末のFDI Inward Stock(FDIインバウンド残高)の推移(続き)
(MENAで唯一残高2千億ドル以上を続けるサウジ!)
(b)主要4カ国のFDIインバウンド残高推移
(図http://menarank.maeda1.jp/4-G04.pdf 参照)
2000年以降のFDIインバウンド残高の推移はMENA各国で大きく異なるが、ここでは地域における主要な投資受入国4カ国(サウジアラビア、トルコ、UAE及びエジプト)について、2000年及び2010-16年の各年末の残高の推移を概観してみる。
2000年末の4か国の残高は、エジプト200億ドル、トルコ188億ドル、サウジアラビア176億ドル、UAE11億ドルであり、UAE以外の3か国はほぼ同じ水準であった。大きく動き出したのは2000年台に入ってからであり、2010年末になるとサウジアラビアの残高は2000年の10倍1,764億ドルに増加、またトルコはサウジアラビアをしのぐ1,877億ドルに達している。2000年末に11億ドルにすぎなかったUAEは60倍の639億ドルとなっている。
トルコは2010年以降は増減を繰り返し1,500億ドルを上下しており、2016年の残高は1,329億ドルである。これに対してサウジアラビアは2010年以降一貫して残高を増やしており、2013年以降は残高2千億ドル以上を続け、MENA諸国の中で飛び抜けた水準を維持している。
2010年末に639億ドルであったUAEの残高はその後も漸増し、2016年末は1,179億ドルを記録している。UAEでは2008年のリーマン・ショック後、ドバイへの投資が低迷したが、UAE全体としての投資残高が減ることはなかった。但し油価の下落に伴い一昨年後半からは投資が鈍る傾向にあり、残高は頭打ちの状況である。
エジプトの2000年末残高は200億ドルでトルコ、サウジアラビアをしのぎMENAではイスラエルに次ぐ大きさであった。2000年以降の同国の残高は2010年まではUAEと肩を並べるペースで成長してきたが、それ以降は増加が鈍っており、特に2010年から2012年までは700億ドル台前半で足踏み状態を続け、昨年以降漸く増加の兆しが見えてきた。2016年は1,023億ドルと残高が初めて1千億ドルを超えた。同国の政治はムバラク政権崩壊からムスリム同胞団によるムルシ政権、さらにはシーシ軍事独裁政権の復活とめまぐるしく変動して経済も大きく悪化したため外国からの投資が停滞した。しかし2014年後半は政情が安定、それに伴って外国(特に湾岸諸国)からの投資は活発であり残高が上向く兆候が見られる。
(続く)
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