2017年10月23日
世界主要国とMENAのGDP成長率 ・ 一人当たりGDP(IMF 2017年10月版)(1)
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0424ImfWeoOct2017.pdf
2017.10.23
前田 高行
IMF(国際通貨基金)では毎年4月および10月に世界各国の経済見通し「World Economic Outlook Database (WEO)」を発表しており、今年10月版(以下WEO2017Oct)がインターネット上に公開された。
*URL: https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2017/09/19/world-economic-outlook-october-2017
この中にはGDP成長率、ドル建て・各国通貨建てのGDP金額、一人当たりGDP、貿易額、財政収支など数多くのデータがあり、特に当年度或いは次年度の経済成長率は官庁、メディア等々で広く引用されている。
ここでは2014年から2018年までのGDP総額及び一人当たりGDP(いずれもcurrent price, ドル建て)を取り上げ、また成長率については前回の2017年4月版(以下WEO2017Apr)と比較して世界主要国およびMENA諸国の経済状況の変化を検証する。
(世界平均を下回るMENAの成長率!)
1.2017/18年の経済成長率
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-01.pdf 参照)
(1) 世界および主要地域・国の経済成長率
IMFは今年(2017年)の世界の経済成長率を3.6%と見ており、来年(2018年)は今年よりやや高い3.7%と予測している。地域別に見るとASEAN5か国は5.2%の横ばいの見通しであり、EUは今年の2.3%から来年は2.1%に低下する見通しである。国別に見ると今年より来年の成長率が高い国と低い国が混在しており、米国は2.2%→2.3%と若干上向き、インドは6.7%→7.4%と世界的に見て高い成長率が今年、来年と続く見通しである。
これに対して日本は1.5%→0.7%と1%近く下向く予想されている。中国の今年の成長率は6.8%とインドと並ぶ高い成長見通しであるが、来年は0.3%低下し6.5%と見込んでいる。このほかドイツ、ロシア及び韓国も来年は若干成長率が落ち込む見通しである。
(2)MENA諸国の経済成長率
IMFによればMENA(中東北アフリカ地域)の今年の成長率2.2%に対し来年は3.2%に上昇すると見込まれているが、両年とも世界平均の成長率を下回っている。国別にみると今年はイラク、クウェイト及びイエメンの3カ国がマイナス成長率(それぞれ-0.4%、-2.1%、-2.0%)であるがその他の国はいずれもプラス成長と見込まれている(シリアはデータなし)。
各国の中でリビアの今年の成長率は55.1%と際立って高い。IMFの同国の経済成長見通しは毎回大きく上下に振れており、リビア経済を左右する石油の生産量が国内の内戦状況で大きく上下し、また価格面では国際市場動向に左右されるためGDP成長率が極めて予測困難であることを示している。
MENAの大国であるトルコ、イランおよびエジプトの今年・来年の成長率はトルコが5.1%→3.5%、イランは3.5%→3.8%、エジプトは4.1%→4.5%であり3か国とも今年は順調に成長するが、来年はトルコが減速、イランとエジプトは若干加速すると見込んでいる。これに対して歳入のほとんどを石油・天然ガスに依存しているGCC諸国は今年の成長率がクウェイトは-2.1%、サウジアラビアも0.1%の低い成長にとどまり、UAEも1.3%など概して成長率は低く、GCC6カ国平均では0.7%の成長にとどまっている。但し来年(2018年)はバハレーンを除きいずれも今年より高い成長率が予測され、6カ国平均では2.9%である。
(続く)
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