2017年11月10日
地域紛争と油価下落で低迷―MENA(中東・北アフリカ)の「人間開発指数」(2016年版)(3)
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0425MenaRank11.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その11)
掲載日2017.11.10
前田 高行
(世界に後れを取るMENA諸国!)
3.2014年と2013年のHDI比較
(表http://menarank.maeda1.jp/11-T01.pdf 参照)
2014年と2015年の人間開発指数(HDI)を比較するとアラブ諸国の平均HDIは2014年が0.686、2015年は0.687でありほんのわずかながら向上している。しかし世界の平均HDIは2014年の0.711が2015年は0.717と0.006アップしており、アラブ諸国は改善のスピードが遅いことが解る。そのことはMENAの世界平均順位が前回の80位から83位にダウンしていることにも表れている。
各国毎の順位の変動を見るとMENA19カ国1機関の中で前回より順位がアップした国は3か国にとどまり、その他の16か国1機関は前回と順位が同等もしくはダウンしている。しかも世界順位がアップした国もモロッコ(126位→123位)、サウジアラビア(39位→38位)、トルコ(72位→71位)とアップ幅は小さい。これに対して順位が下落した国の中にはシリア(134位→149位)、レバノン(67位→76位)、リビア(94位→102位)、イエメン(160位→168位)などのように大きくダウンした国が少なくない。シリア、リビア、イエメンはいずれも内戦が長期化し治安の悪化に歯止めがかからない。紛争当事国の人間開発指数は急速に悪化しているようである。
一方、HDI指数で見ると前年より下がったのはシリア、レバノン、リビア、イエメンの上記4カ国のほかクウェイト、ヨルダン及びイラクの合計7カ国だけであり、他の12か国1機関は前年より指数がアップしている。例えばMENA1位と2位のイスラエル及びカタールはいずれも指数がアップしているにもかかわらず、世界順位は下がっている。これは世界平均の指数の上昇幅がMENAの多くの国を上回っているからである。MENA各国が世界から取り残されていることを示している。
MENA諸国間の順位を前回と比べるとMENAの順位にほとんど変化はない。下位グループのエジプト、パレスチナ、イラク、モロッコ各国は前回、今回共にHDIが0.700未満の中位人間開発(MHD)にとどまっており、シリアは中位開発国から低位開発国に転落、イエメンは前回、今回ともにMENA最下位にとどまっている。
なお世界1位は2年連続でノルウェーであり同国のHDIは0.944から0.949にアップしている。日本、米国及び中国を見ると、日本はHDIが0.891から0.903にアップし、世界順位も20位から17位に上昇しており、MENA1位、世界19位のイスラエルよりランクが高い。米国はHDIがアップ(0.915→0.920)したにもかかわらず、世界順位は8位から10位に落ちている。中国はHDIポイントを0.011アップしたが順位は前回と同じ世界90位である。
(続く)
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