2017年12月19日

(ニュース解説)いよいよGCC解体か?―GCC首脳会議を振り返って(上)

 

2017.12.19

荒葉一也

Areha_Kazuya@jcom.home.ne.jp

 

対カタール断交問題を抱えたままで首脳会談に突入

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 毎年12月に6カ国持ち回りで開かれる恒例のGCC首脳会議は今年で第38回を迎え、125()にクウェイトで開催されたが、これまでとは様相が大きく異なった。その最大の理由は丁度半年前の65日にGCC加盟6カ国のうちサウジアラビア、UAE及びバハレーンの3か国がカタールと断交したことである(断交にはこのほかエジプトも参加している)。3か国はイランによるシリア、イラク、レバノンでのシーア派のテロ活動をカタールが容認し、またサウジアラビア、UAE及びバハレーン各国の内政に干渉したことを理由に強硬な断交措置に踏み切った[1]

 

 これまでもカタールのアルジャジーラTVによるサウド家の報道に関しサウジアラビアがGCC外相会議で抗議し、あるいは2014年にカタールの駐在大使を召還するなど外交問題で軋轢が無かったわけではないが[2]、いずれの場合も数カ月の冷却期間を経て元のさやに納まっている。しかし今回は断交から半年を経た現在も解決の糸口が見えない。クウェイトが仲介役で奔走し、カタールが協議に応じる姿勢を見せ、ヨーロッパ諸国からも問題の解決を促す発言が相次いでいるが、サウジアラビア外交の鍵を握るムハンマド皇太子は全く軟化する様子を見せない。

 

首脳出席をボイコットしたサウジアラビア、UAE、バハレーン

 議長であるサバーハ・クウェイト首長は当然としても、その他5か国のうち首脳が参加したのはカタールのタミム首長のみであり、他の4か国は全て外相もしくはそれ以下の閣僚の代理出席であった。即ちサウジアラビアからはAl Jubeir外相、UAEは外務担当国務相、バハレーンは外務副大臣、オマーンは副首相が出席した[3]

 

 これまでのサミットではサウジアラビアは国王または皇太子が参加しており、UAEはハリーファ大統領が病弱のためドバイ首長のムハンマド副大統領が、そしてバハレーンはハマド国王自らが出席していた。つまり各国ともNo.1又はNo.2の王族が出席したのである(オマーンも国王が病弱のため毎回No.2の王族が出席)。しかし今回サウジアラビアは王族ではないテクノクラートの外務大臣が代理出席、UAE及びバハレーンに至っては王族である外相をさしおいて副大臣クラスの代理出席にとどまっている。

 

この顔ぶれではカタールとの外交問題は言うに及ばず、会議直前に飛び出したトランプ米大統領によるエルサレムのイスラエル首都宣言と米大使館移転発言のほか、シリア和平、イエメン紛争など山積する重要案件について意味のある首脳会談などできるはずもない。結局議題すら公表されず、会議日程も当初2日間の予定を1日で終了、各国の参加者たちはそそくさと帰国したのであった[4]

 

匙を投げたクウェイト

 カタールと断交中のサウジアラビア、UAE及びバハレーンの出席者を見ると、これまでのサミットとの落差は余りにも大きく、3か国が今回のサミットをボイコットしたと見て間違いないであろう。言い換えればホスト国及び唯一最高首脳が参加したクウェイトとカタールに対する甚だしい侮辱とも言える。サウジアラビアのサルマン国王は日本、ロシアなど今年は活発な外交を展開、健康不安説を払拭しており、国内外で活躍している皇太子の二人のどちらかがサミットに出席できたはずである。それにも関わらず両名とも隣国のクウェイトに行かなかったことは、カタールに対する強烈なあてつけともいえる。と同時にうがった見方をすれば多数の王族・閣僚・有力財界人を汚職摘発したことでサウジ国内は大きく動揺しており、国王、皇太子のいずれか一人でも海外に出かければ、宮廷クーデタが発生しないとも限らない。つまり国王と皇太子は自分の首が危ないから国内を離れられないと勘ぐることもできよう。

 

 しかもサミットの前日、サウジアラビアとUAE2国間の軍事・経済パートナーシップ協定を締結しているのである。両国は現在のままのGCCは必要ないと宣言したに等しい[5]

 

 これまで度々仲介の労を取り何とかGCCの結束を維持しようとしたクウェイト首長も、会議後の談話で、サミットには少なくとも各国ともNo.2が出席すべきであると語り、GCCの機構改革のためタスクフォースを設置することを示唆した。クウェイト首長はGCCの将来に匙を投げたようである[6]

 

(続く)

 



[1] マイライブラリー04162014.7.24付け)「カタール GCC 離脱(Qatarexit)の可能性も:カタールとサウジ国交断絶」参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0416GccDispute2017July.pdf 

[2] マイライブラリー0303[サウジアラビア等3カ国が駐カタール大使を召還―埋まらぬ GCC の亀裂] (2014.3.9付け)参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0303QatarSaudiDispute2014.pdf 

[3] “Gulf Cooperation Council Summit opens amid calls for safeguarding GCC” Gulf News on 2017/12/5

http://gulfnews.com/news/gulf/kuwait/gulf-cooperation-council-summit-opens-amid-calls-for-safeguarding-gcc-1.2135955

[4] “GCC summit cut short by a day”, The Peninsula on 2017/12/5

http://www.thepeninsulaqatar.com/article/05/12/2017/GCC-summit-cut-short-by-a-day

[5]UAE and Saudi form new partnership separate from GCC”, The Peninsula on 2017/12/5

http://www.thepeninsulaqatar.com/article/05/12/2017/UAE-and-Saudi-form-new-partnership-separate-from-GCC

[6]GCC structure may have to change: Kuwait Emir”, The Peninsula on 2017/12/5

http://www.thepeninsulaqatar.com/article/05/12/2017/GCC-structure-may-have-to-change-Kuwait-Emir



drecom_ocin_japan at 13:20コメント(0)GCC  

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