2018年01月27日

格付け格差広がるGCC6カ国:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2018年1月現在) (5完)

(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0433SovereignRating2018Jan.pdf

2018.1.27

前田 高行

E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

3. 2015年1月以降の格付け推移 (続き)

 

(トップを続けるUAEとクウェイト、格差広がるサウジ、オマーン、バハレーンの3カ国!)

(2)GCC6カ国の格付け推移

(http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)

 GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず20151月時点ではUAE、クウェイト及びカタールの3か国の格付けが最も高く上から3番目のAAであった。サウジアラビアは1ランク下のAA-であり、オマーンはA、バハレーンは最も低いBBBにランクされていた。バハレーンの格付けは投資適格としては下から2番目であるが、6か国はいずれも投資適格の格付けであった。

 

 オマーン及びバハレーンは他の4カ国に比べ原油あるいは天然ガスの生産量が少なく財政的に脆弱であり、2012年の「アラブの春」の騒乱で国内が乱れたため他のGCC諸国よりも評価が低かった。

 

 2014年年央をピークに石油価格の急落が始まると、まず経済力の弱いオマーンとバハレーンが見直しの対象となり2015年上期には、オマーンはA-、またバハレーンも投資適格としては最も低いBBB-に格下げされた。さらに同年下期にはオマーンはA-からBBB+に再引き下げされている。そしてこの時サウジアラビアもAA-からA+に引き下げられた。それまで世界最大の産油国として原油価格の下落をしのいできたサウジアラビアであったが、同じ豊かな産油国であるUAE、クウェイト及びカタールに比べ人口圧力が高いため格付け会社S&Pは同国経済の健全性に疑問を呈した形である。

 

 サウジアラビア、オマーン及びバハレーン3か国はその後も格下げが続き、サウジアラビアは2016年上期に2段階下がりA-となった後、現在に至っており、トップのUAEあるいはクウェイトとは4ランクの格差が生まれている。オマーンは2016年以降も毎年ランクが下がっており、昨年上期にはBB+と格付けされたが、これは投資不適格の範疇である。同国は過去3年間で5段階格下げされたことになる。GCC6カ国の中で最も格付けが低いバハレーンは一昨年上期には投資不適格のBBに格下げされ、更に同年下期及び昨年下期にも1ランクずつ下落し現在の格付けはB+とされ、トップのUAEあるいはクウェイトとの格差は11ランクも下にとどまっている。なおカタールは昨年上期にAAからAA-に下がっており、それまで同じ格付けを維持してきたUAE及びクウェイトより1ランク低く格付けされている。同国の格付け引き下げの背景には同じGCCのサウジアラビア、UAE及びバハレーンから断交され、陸路、海路、空路が閉鎖されたことにある。食糧、建設資材などをUAE、サウジアラビアからの輸入に依存しているカタールにとって大きな問題となり解決に時間がかかっている。このためS&Pは同国の格付けを引き下げたのである。

 

以上

 

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        前田 高行         183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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drecom_ocin_japan at 09:43コメント(0)MENA  

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