2018年07月12日
格上げのロシア、格下げのトルコ:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2018年7月現在) (4)
2018.7.12
前田 高行
3.2015年7月以降の格付け推移
ここでは2015年7月以降現在までの欧米・アジア主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。
(2016年上期までは格下げ続出、今年上期は改善の兆し)
(1) 欧米・アジア主要国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)
2015年7月以降のドイツ、米国、英国、中国、日本、インド、ロシア、ブラジル、ギリシャ9か国の格付けの推移は以下の通りである。
ドイツは過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。英国は2015年末まではドイツと並びトリプルAの格付けを受けていたが、2016年前半に一挙に2段階下がり、現在はAAである。同国は国民投票によるEU離脱決定が懸念され、ソブリン格付けの引き下げにつながった。米国は財政赤字が悪化したことなどにより数年前から格付けはトリプルAより1ランク下のAA+を続けている。現在の英国のソブリン格付けAAは米国よりも低い。
ドイツ、米国、英国を最上級の格付け国とすれば、中国及び日本はこれをやや下回る格付けである。両国は2015年上期までは共に最上級(AAA)から3ランク下のAA-の格付けであった。しかし2015年下期に日本はさらに1ランク下のA+に格下げされ、従来通りのAA-を維持した中国が日本を上回っていたが、昨年下期に中国が下方修正されたため現在は共にA+である。
新興経済国BRICsを構成しているブラジル、ロシア、インド及び中国のうち、2015年7月現在は、中国がAA-と最も高く、インドとブラジルが投資適格では最も低いBBB-であり、ロシアは投資不適格のBB+であった。その後、ブラジルの経済が急激に悪化、同国の格付けは2015年下期、2016年上期と連続して格下げされ3カ国の中で最も低いBBに格付けされた。しかし同国は今年上半期にインドと同じ投資適格のBBB-に復帰している。インドとロシアは過去3年間に格付け変動は無かった。
欧州金融危機の引き金となったギリシャの格付けの推移を見ると、2015年7月時点でCCC-であった。S&Pの定義では格付けCCCは「債務者は現時点で脆弱であり、その債務の履行は、良好な事業環境、財務状況、および経済状況に依存している。」であり、ギリシャは破綻の一歩手前にあるとみなされていた。その後同国の状況は改善、2016年上期にB-に戻り、更に今年上期にはB+に格付けされ、破たんの危機は去ったと評価されている。
(続く)
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