2018年07月14日

格上げのロシア、格下げのトルコ:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2018年7月現在) (5完)

 

2018.7.14

前田 高行

 

3.2015年1月以降の格付け推移 (続き)

 

(トップを続けるUAEとクウェイト、期を追うごとに格下げされるオマーンとバハレーン!)

(2)GCC6カ国の格付け推移

(http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-02.pdf参照)

 GCC6か国(UAE、クウェイト、カタール、サウジアラビア、オマーン及びバハレーン)の過去3カ年のソブリン格付けの推移を見ると、まず20157月時点ではUAE、及びクウェイト及びカタールの3か国の格付けが最も高く上から3番目のAAであった。サウジアラビアは1ランク下のAA-であり、オマーンはA-、バハレーンは最も低いBBB-にランクされていた。バハレーンの格付けは投資適格としては最も低いが、6か国はいずれも投資適格の格付けであった。

 

 オマーン及びバハレーンは他の4カ国に比べ原油あるいは天然ガスの生産量が少なく財政的に脆弱であり、2012年の「アラブの春」の騒乱で国内が乱れたため他のGCC諸国よりも評価が低かった。

 

 2014年年央をピークに石油価格の急落が始まると、まず経済力の弱いオマーンとバハレーンが見直しの対象となり2015年上期から両国の格下げが始まり、同年下期にはオマーンがA-からBBB+1ランク下がり、2016年上期になると両国は共に2ランクも格付けされオマーンはBBB-に下がり、バハレーンはついに投資不適格のBBに格下げされた。なおこの時期サウジアラビアもA-となり、UAE、クウェイト、カタールがAAを維持したのに対し、20167月時点ではサウジは上位3か国と4ランクの格差が付き、オマーン及びバハレーンもそれぞれ最上位3か国より7ランク或は9ランク下になりGCC6カ国の間に大きな格差が生じた。

 

 その後サウジアラビアはA+を維持しているが、オマーン及びバハレーンは下落傾向が止まらず、20187月時点ではオマーンは投資不適格のBBに、またバハレーンはさらに低いB+に格下げされている。なお2017年上期にはカタールがAAに格下げされ、AA+を維持したUAE及びクウェイトより1ランク低くなっている。

 

 このようにGCC6カ国の中ではUAE及びクウェイトが安定して高い格付けを維持し、カタールがこれら2カ国に一歩遅れ、少し離れてサウジアラビアがやや低い投資適格の格付けにとどまっている状況である。これら4カ国に対してオマーンとバハレーンは投資不適格のランクに落ちた後も悪化の一途をたどり底の見えない状況である。

 

 かつてはUAE、クウェイト、カタールと同じ格付けを保持したサウジアラビアが、GCCの盟主としてオマーン及びバハレーンを支援し、格付けの下落を食い止めていたが、サウジアラビア自身の格付けが下落し、さらにサウジアラビア、UAE(バハレーンも含め)カタールと断交するに至り、現在のGCCにはかつての結束が見られない。ソブリン格付け機関のS&Pはそのような状況を冷徹に見透かしているようである。

 

以上

 

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        前田 高行         183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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drecom_ocin_japan at 15:25コメント(0)MENA  

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