2018年10月30日
世界主要国とMENAのGDP成長率 ・ 一人当たりGDP(IMF 2018年10月版)(4)
(MENAで断トツのカタール!)
4.2018年の一人当たりGDP
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-10.pdf 参照)
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03.pdf 参照)
日本の一人当たりGDPは40,106ドル、米国は62,518ドル、ドイツは48,670ドルである。米国は日本の1.6倍、ドイツは1.2倍である。また韓国は32,046ドルであり、米国の2分の1、日本の8割である。BRICsと呼ばれる有力新興国のロシア、中国、インドはそれぞれ10,950ドル、9,633ドル、2,016ドルである。インドは今年7.3%、来年7.4%と中国を上回る高い成長率が見込まれているが(上記1. 2018/2019年の経済成長率参照)、一人当たりGDPはまだまだ低く、中国の5分の1、日本の20分の1、米国の30分の1に過ぎない。
MENA諸国の一人当たりGDPは各国間の格差が極めて大きい。LNGの輸出で潤うカタールの一人当たりGDP67,818ドルは米国をしのぎ日本の1.7倍で世界のトップクラスである。MENAで一人当たりGDPが1万ドルを超える国はカタールのほかUAE(41,476ドル)、イスラエル(41,180ドル)、クウェイト(31,916ドル)、バハレーン(26,532ドル)、サウジアラビア(23,187ドル)、オマーン(19,170ドル)及びレバノン(12,454ドル)の8か国である。
上位7カ国のうちイスラエルを除く6か国はGCC諸国であり、石油あるいは天然ガスの恩恵を受けていることがわかる。特に6か国の中で人口がバハレーンに次いで少ないカタールは他を大きく引き離している。GCC6か国の平均一人当たりGDPは35,017ドルに達する。
しかし同じ産油国でありながらイラン、イラク、アルジェリアなどは一人当たりGDPが5千ドル前後であり、GCCと大きな格差がある。MENAで最も貧しいのはイエメンであり同国の一人当たりGDP(926ドル)は実にカタールの70分の1にとどまっている。
なお一人当たりGDPは各国のGDP総額を人口数で割ったものであるが、IMF統計における計算の母数となる人口についてGCC諸国の場合特に注意すべき点がある。例えばカタールの人口は約278万人(WEO10月版による)で同国の一人当たりGDP67,816ドルは同国のGDP(1,880億ドル。前項参照)をその人数で割ったものである。しかし同国人口のうち80%以上は出稼ぎ労働者が占めており、カタール国籍を有する自国民は50万人足らずと言われる。通常、統計上の人口は国籍を有する者のみが対象で一時的な出稼ぎ労働者は含まないが、カタールの一人当たりGDPには出稼ぎ労働者も含まれており実態を正確には表していないと言える。このことは同じように外国人比率が高いUAE或いはクウェイトについても言えることであり、3分の1が外国人であるサウジアラビアの場合も程度の差はあれ同様である。
このような要素を加味してGDPを算出した統計は見当たらないが、カタール、UAE、クウェイトの実際の一人当たりGDPはIMF公表数値の数倍に達すると考えられ、これら湾岸産油国の一人当たりGDPが世界のトップクラスであることは間違いない。
(続く)
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