General

2009年03月15日

*全文は「中東と石油」の「イスラム圏の企業番付100社」でご覧になれます。

3.国別・業態別企業数
 100社の国別内訳で最も多いのはトルコの23社、全体のほぼ4分の1を占めている。これに次いで多いのがマレーシア(14社)、サウジアラビア(13社)となっており、上位3カ国で全100社の半分に達している。

 4位以下はクウェイト(8社)、インドネシア(7社)、イラン及びUAE(各6社)である。その他の国ではカザフスタンが3社あり、ヨルダンが2社ランクに入っている。1社のみの国は、アルジェリア、アゼルバイジャン、イラク、リビア、ナイジェリア、パキスタン、シリアの各国であるが、これらはいずれも国営石油・天然ガス企業である。

 OICの加盟国は57カ国であるが、このうちDSI100のランクに1社以上入っている国は16カ国に過ぎない。これらのことからイスラム圏諸国では大企業は一部の国に偏在しており、しかも業種が国営の石油・天然ガスに集中していることが判る。

 さらに100社を国営、上場、非上場に区分すると、国営30社、上場55社、非上場15社で上場企業が最も多く、全体の2分の1強を占めている。しかし売上規模で見ると、国営企業の合計売上高は8,372億ドル、上場企業は3,074億ドル、非上場企業は686億ドルであり売上全体の7割は国営企業で占められている。1社あたりの平均売上高も国営企業が279億ドルに対して、上場企業は56億ドル、非上場企業は46億ドルであり、国営企業の規模が圧倒的に大きい。

業種別に見ると、企業数では石油・ガス部門が20社で最も多く、複合企業、製造業(各18社)、銀行業(17社)及び複合企業(17社)がこれに並んでいる。これ以外の企業は通信業(8社)、運輸業(6社)、建設業(5社)石油化学(3社)、農業(3社)、小売業(2社)などである。しかし業種別の売上高では石油・ガス部門は全体の64%を占めており、他の部門を圧倒している。複合企業の売上は全体の10.3%に達しており、企業数が同じ18社の製造業の7.3%を上回る規模である。通信業は企業数こそ少ない(8社)が、売上高は全体の3.7%を占め、金融業(17社、5.5%)と遜色の無い規模を誇っている。

4.3ヵ年(2005~07年)の推移
 2005年から07年にかけて原油の年間平均価格(WTI)は、56.51ドル(05年)、66.04ドル(06年)、72.29ドル(07年)に上昇し、07年末には100ドル弱、そして08年7月には史上最高の150ドル近くまで急騰した。

 この結果、産油国の国営石油会社の売上も急増し、また湾岸産油国には膨大な余剰オイルマネーが発生した。それは不動産、建設、金融など石油以外の産業にも波及効果を及ぼし、さらには周辺の非産油国の経済にも恩恵をもたらした。このためイスラム圏の企業も05~07年の3カ年間にほぼ例外なく売上が伸びている。DSIランク100社の売上合計額をみると、2005年は9,440億ドルであったものが、06年には1兆ドルを超え、07年には1兆2千億ドル強に達している。3ヵ年で売上高は1.3倍に拡大し、年平均13%前後という高い増加率を示している。

 このうち上位10社の売上高が占める割合は3ヵ年とも50%を超えており、しかも05年54%、06年58%、07年59%とシェアは年々上昇している。上記2に触れたとおり、2007年の上位10社のうち8社が国営石油会社であり、05年及び06年の場合は、実に10社中9社が国営石油会社である。ちなみに3ヵ年の売上高ベスト5社の顔ぶれは変わっておらず、サウジアラムコ社とイラン国営石油会社は3年間にわたり1位と2位にあり、3位以下の売上規模を大きく上回っているため、今後当分の間、両社の順位に変動はないと考えられる。

これらのことからイスラム圏では国営石油会社が企業活動の中枢であり、しかも年々その比重が大きくなっていると言える。開発途上にあるイスラム圏の各国はいずれも産業の多角化・高度化を標榜しているが、実際には掛け声倒れになっている様相もうかがえるのである。

以上

全100社のデータについては
http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-M-61%20Top%20100%20Companies%20of%20the%20Muslim%20World.htm 参照


本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp




at 08:53 

2009年03月12日

*全文は「中東と石油」の「イスラム圏の企業番付100社」でご覧になれます。

OIC(イスラム諸国会議機構)加盟国のビジネス情報を提供するウェブサイトDinarStandard (http://dinarstandard.com/index.html)では、毎年イスラム圏の企業番付100社(Top 100 Companies of the Muslim World、略称DS100)を公表しており、その最新版「The 2008 DS 100」が先月発表された。

OICはイスラム教徒(ムスリム)が国民の多数を占める国々が加盟しており、正式メンバーは57カ国、オブザーバー5カ国から成り立っている。世界のムスリム人口は約13億人といわれるが、OIC加盟各国がその大部分を占めている。DS100はOIC加盟国の企業を売上高で順位付けしたものであるが、OIC加盟国は全てが開発途上国であり、低開発国も少なくない。しかし中にはサウジアラビア、UAE、クウェイトなどの財政が豊かな産油国もあり、またトルコ、マレーシアのようにかなり工業が発達した国もある。

本稿は「DS100」の過去3ヵ年(2006年~2008年)のデータをもとにイスラム圏の企業を概観するものである。

1.はじめに(DS100の特徴)
 DS100は上述の通りOICに正式加盟している各国の企業を対象としたものであるが、国営企業(その多くは石油企業)もランク付けの対象となっている。DS100以外にも企業番付としては、例えばGCC(湾岸協力機構)各国の企業の「Gulf Business Top 150」(月刊誌Gulf Business)、或いはサウジアラビア国内の企業の「Top 100 Saudi Companies」(日刊紙Arab News)などがあるが、これらはいずれも民間企業のみを対象としておりDS100とは異なっている。

 イスラム圏の中でもアラブ諸国の民間企業には非上場の同族企業(いわゆるPrivate Company)が多く、しかもこれらには売上規模の大きな企業も少なくない。DS100ではこれらPrivate Companyもリストの対照としている(この点はGulf Business Top 150もThe Top Saudi Companiesも同様)。

これら非上場の同族企業は財務情報をほとんど公開していないため、本リストの売上高は推定値と思われる(いくつかのPrivate Companyの売上高が百万ドル単位の概略値であることからもそのことがわかる)。また同族企業は傘下に数社から十数社の多様な業種の企業を抱えたグループ企業であることが多く、個々の構成企業の売上は小さくても、グループ全体としてはDS100にランク・インするほどの規模であることも少なくないようである。従っていずれのPrivate Companyがリスト・アップされるかどうかは、各種調査によって異なる。DS100のデータもこのような点を考慮して眺める必要があろう。

2.2007年売上高上位20社(表「イスラム圏の企業番付上位20社参照)
 イスラム圏企業の中で2007年売上高が最も大きい企業はサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコ(SaudiAramco)社であり、同社の2007年の売上高は2,160億ドルであった。これは第2位のイラン国営石油(National Iranian Oil Co.、売上高1,016億ドル)の2倍強であり、イスラム圏企業の中では群を抜いている。

 第3位はマレーシアの国営石油会社ペトロナス(同662億ドル)であり、以下4位クウェイト石油(同649億ドル)、5位イラク国営石油(同551億ドル)となっている。6位にはトルコの複合企業KOC Holding社(同395億ドル)が入っている。そして7位はUAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ国営石油(同388億ドル)、8位はサウジアラビアの石油化学企業SABIC(同337億ドル)である。SABICはかつて株式の100%をサウジアラビア政府が所有する公営企業であったが、その後株式の30%についてIPO(株式公開)が実施され、現在は上場企業となっている(70%は政府機関のPIFが所有)。

 9位はアルジェリアの国営石油会社Sonatrach(同322億ドル)、10位はナイジェリア国営石油(307億ドル)である。このように上位10社のうち8社は国営石油会社であり、また11位以下にもリビア国営石油(11位)、シリア石油(12位)、カタール石油(13位)、14位インドネシア(プルタミナ)、15位アゼルバイジャンのSocar(国営石油)、16位オマーン石油開発、17位エジプト石油、19位KazMunayGas(カザフスタン)など各国の国営石油・天然ガス企業が上位を独占している。2007年は原油価格が高値に推移しており、国営の石油・天然ガス企業が圧倒的な存在感を示していることがわかる。

(続く)

全100社のデータについては
http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-M-61%20Top%20100%20Companies%20of%20the%20Muslim%20World.htm 参照


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at 17:04 

2008年12月09日

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MENA(中東・北アフリカ)22カ国の「腐敗認識指数」(2008年版)

 東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。
 第14回のランキングは、汚職追放を目指す世界のNPO法人Transparency International(略称:TI、本部ベルリン)が毎年発表している「Corruption Perception Index(腐敗認識指数)」についてMENA諸国をとりあげて比較しました。

* ホームページ
TI本部: http://www.transparency.org/
日本支部: http://www.ti-j.org/


1.「Corruption Perception Index (腐敗認識指数)」について
 Corruption Perception Index(CPI, 腐敗認識指数)は、公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識されるか、その度合いを国際比較し、国別にランキングしたものである。ベルリンに本部のあるNPO法人Transparency International(TI)が手がけており、日本にはその支部「NPO法人トランスペアレンシー・ジャパン」がある。

CPIは1995年に第一回の指数を発表、今年で14回目である。調査当初は対象国が41カ国、調査内容も7種類と小規模であったため、各国からは調査結果に対する不満が出たが、回を重ねるに従い内容の信頼性も高まっており、例えば今年の調査対象国及び調査内容は180カ国、14種類へと年々増加している。

評価は各国の実業家或いは分析専門家など実務で腐敗の現場に直面している人々の経験や認識に基づくアンケートを統計処理したものであり、CPIは0から10までのスコアで国を採点している。0点は最も腐敗していると思われる国を、10点は最も腐敗していないと思われる国を指している。

2.MENA諸国のCPI指数と順位
(詳細は表「腐敗認識指数ランキング」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-14%20Corruption%20Perception%20Index%202006-08.htm参照)
 MENA22カ国の中で最も腐敗度が低いと評価されたのはカタル(CPI指数6.5)である。同国の世界順位は28位でスペインと同レベルとみなされている。これに次ぐ第2位はイスラエル(CPI指数6.0)で世界順位33位である。以下世界の上位3分の1(60位以内)に位置しているのはUAE(CPI指数5.9、世界35位)、オマーン(同5.5、41位)、バハレーン(同5.4、43位)、ヨルダン(同5.1、47位)、トルコ(同4.6、58位)と続いている。これら7カ国のうちカタル、UAE、オマーンおよびバハレーンはGCC(湾岸協力会議)を構成する産油国であり、経済的に豊かであることが特徴である。
これに対してMENA諸国の中で腐敗度が高いとされているのは、スーダン(CPI指数1.6、MENA順位20位、世界順位173位)、アフガニスタン(同1.5、21位、176位)、イラク(同1.3、22位、178位)である。これら3カ国はMENA22カ国の中でも特にCPI指数が低く、また世界180カ国の中で最下位グループに位置している。CPIレポートは「貧困と腐敗の間には強い相関関係がある」と指摘しているが、カタルなどの上位国とスーダンなどの最下位国との経済的格差が腐敗度の格差として表れていることがわかる。
上位7カ国と下位3カ国との中間に位置している国は12カ国ある。8位から11位までは、チュニジア(CPI指数4.4、世界62位)、クウェイト(同4.3、65位)、モロッコ(同3.5、80位)、サウジアラビア(同3.5、80位)である。クウェイトおよびサウジアラビアはカタルなどと同じGCCの一員であり、財政が豊かな国であるが、他のGCC各国よりも腐敗度が高い。
12位から19位までは、アルジェリア(CPI指数3.2、世界92位)、レバノン(同3.0、102位)、エジプト(同2.8、115位)、モーリタニア(同2.8、115位)、リビア(同2.6、126位)、イラン(同2.3、141位)、イエメン(同2.3、141位)、シリア(同2.1、147位)と続いている。
 ちなみに世界でCPI指数が最も高い国(即ち腐敗度が最も低いとされた国はデンマーク、ニュージーランドおよびスウェーデンである(CPI指数9.3)。日本はCPI指数7.3、世界で18位とされているが、これは米国と同じ順位である。また中国はCPI指数3.6、世界順位72位である。

3.過去3ヵ年(2006-08年)のCPI指数の変化
(詳細は表「腐敗認識指数ランキング」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-14%20Corruption%20Perception%20Index%202006-08.htm参照)
 2006-08年のCPI指数の変化を見ると、指数が上昇傾向にある国、逆に下降傾向にある国、あるいは3ヵ年で指数が上下に変動している国など、各国にいろいろな特徴が見受けられる。指数が上昇傾向にある国、即ち公務員と政治家の腐敗度が改善されているとされる国は、今年度MENA1位、世界28位となったカタルがあげられるが、特にトルコは3.8(06年CPI指数)→4.1(同07年)→4.6(同08年)と改善の度合いが目覚しい。その他サウジアラビア(3.3→3.4→3.5)も年々良くなっている。
一方、3ヵ年連続して指数が低下している国としてはエジプト3.3(06年CPI指数)→2.9(同07年)→2.8(同08年)のほか、イラン(2.7→2.5→2.3)、シリア(2.9→2.4→2.1)、スーダン(2.0→1.8→1.6)、イラク(1.9→1.5→1.3)などがある。またオマーン(5.4→4.7→5.5)およびバハレーン(5.7→5.0→5.4)のようにCPI指数の変動が激しい国もいくつか見受けられる。
CPI指数が上昇した国に比べ、指数が低下した国が多く、また指数の変動が激しい国も少なくないことから、過去3ヵ年で見る限りMENA地域の腐敗度はむしろ悪化したと言える。腐敗と貧困の間に強い相関関係があるとされ、またその背景にイラクやスーダンのように治安の悪化という政治的要因がある。MENA地域全般で腐敗と貧困と治安の悪化という負の連鎖を断ち切ることが求められている。

以上

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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at 12:53 

2008年12月02日

MENA(中東・北アフリカ)22カ国の「男女の格差」(2008年版)


 東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。

 第8回のランキングは世界経済フォーラム(World Economic Forum, WEF)が行った「世界男女格差報告2008(The Global Gender Gap Report 2008)」からMENA諸国をとりあげて比較しました。


1.「世界男女格差報告2008」について
 「世界男女格差報告2008(The Global Gender Gap Report 2008)」(以下「報告書」)を発表した「世界経済フォーラム」(World Economic Forum, WEF)は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利団体であり、毎年1月にスイスのダボスで行われる「ダボス会議」の主催者としてよく知られている。

 「報告書」は世界130カ国を対象に経済、教育、健康、政治の4つの分野について、世界或いは各国の公的機関が公表する男女別のデータに基づき、それぞれの分野の男女間の格差を指数化し順位付けを行ったものである。
(詳しくはWEFホームページhttp://www.weforum.org/en/Communities/Women%20Leaders%20and%20Gender%20Parity/GenderGapNetwork/index.htm参照)


2.比較対象される分野とその内容
 対象とされるのは以下の4つの分野であり、各分野にはそれぞれ二つ乃至五つの比較項目がある。
1. 経済参画分野:経済活動への参加度及び参画の機会(Opportunity)に関する男女格差
   比較項目:(1)労働参加比率、(2)同一労働賃金格差、(3)平均所得格差、
          (4)幹部職比率、(5)専門・技術職比率

2. 教育分野:教育の機会に関する男女格差
   比較項目:(1)識字率、(2)初等教育就学率、(3)中等教育就学率、(4)高等教育就学率

3. 健康・寿命分野:健康と寿命に関する男女格差
   比較項目:(1)新生児男女比率、(2)平均寿命

4. 政治参画分野:政治参画の度合に関する男女格差
   比較項目:(1)女性議員比率、(2)女性閣僚比率、
          (3)過去50年間の女性元首(首相等)在任期間

3.指数化の方法と順位付け
130カ国について上記四つの分野の各比較項目に関する男女それぞれの数値或いは比率のデータを抽出し、この男女のデータについて男性を1とした場合の女性の指数を算定する(最大値は1とする)。この指数の意味は、指数1の場合男女が完全に平等であることを意味しており、指数が低くなればなるほど男女の格差が大きいことを示している。

各比較項目の指数を加重平均したものを、その分野の指数とする。最後に4つの分野の指数を加重平均したものがその国の格差指数であり、130カ国の指数を上位から順に総合順位を付けるのである。(計算例については末尾参照)

4.MENA22ヶ国の男女格差の総合指数とランク
「報告書」は、上記の方法により130カ国のそれぞれの総合指数を算出し順位付けを行ったものである。このうちMENAは22ヶ国中17カ国が順位付けの対象となっており、対象国数は昨年度と同じである。今回も調査対象とならなかったのはレバノン、イラク、リビア、スーダン及びアフガニスタンの5ヶ国である。(詳細は「男女格差指数ランク表」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-8%20Gender%20Gap%20Index,%202008.htm参照)

MENA諸国のトップはイスラエルであり、同国の総合指数は0.6900、世界ランク56位である。イスラエルに続くのはクウェイトの指数0.6358、世界ランク101位である。このようにイスラレル以外のMENA諸国は全て100位以下であり、トップのイスラエルとの格差は大きい。そして本調査の対象国の数が130カ国であることは、クウェイトを含めイスラエル以外のMENA諸国は世界の標準から大きく遅れていることを示している。

クウェイトの次に位置するチュニジアは世界ランク103位であり、第4位以下は、ヨルダン(世界順位104位)、UAE(同105位)、シリア(同107位)、モーリタニア(同110位)、アルジェリア(同111位)、イラン(同116位)、オマーン(同118位)、カタル(同119位)、バハレーン(同121位)、トルコ(同123位)、エジプト(124位)、モロッコ(同125位)、サウジアラビア(同128位)およびイエメン(同130位)であり、イエメンの130位は世界最下位でもある。

このようにMENAは男女格差が世界でも最も大きく、男女平等が最も遅れた地域と評価されている。評価の4分野、即ち経済、教育、健康及び政治のそれぞれにを見ると、いずれの分野でもイスラエルを除き世界順位は低いが、特に経済と政治の両分野の世界ランクが低い。

なお日本は世界順位98位に位置づけられており評価が非常に低い。これは4分野のうち経済(世界102位)及び政治分野(同107位)でのランクの低いことが主たる原因であり、その点ではMENA諸国と似通っている。

5.2007年との比較
 MENA17カ国の中の順位を見ると、ベスト3のイスラエル、クウェイト、チュニジアは前年どおりであり、またワースト3(15位~17位)のモロッコ、サウジアラビア、イエメンも前年と同じである。4位から16位までは順位に変動があるが、前年よりも2ランク以上順位を上げた国は、モーリタニア(前年9位→今年7位)、イラン(同、11位→9位)、オマーン(同、12位→10位)などがある。一方、前年より2ランク以上順位を下げた国は、カタル(8位→11位)、シリア(4位→6位)、バハレーン(10位→12位)の3カ国である。但し世界ランクで見ればMENAの全ての国が昨年よりランクを落としている。MENA全体では明らかに男女平等に関する世界での地位が低下していることを示している。

 昨年と今年の総合指数を各国毎に比較すると、17か国中13カ国は指数がアップしており、昨年より指数が悪化したのはクウェイト、シリア、カタルおよびサウジアラビアの4カ国だけである。このことはMENAの多くの国では男女の格差が是正されていることを示している。それにもかかわらずMENA各国の世界順位が落ちているのは、世界全体では男女格差の是正が進んでおり、MENA地域が世界の向上のペースに追いついていないことを意味している。また前年より指数が落ちた4カ国のうち、3カ国が湾岸産油国である。これら湾岸産油国はオイルブームにより経済が未曾有の活況を呈しているにもかかわらず、調査結果ではこれらの国の女性格差がむしろ広がっていることを示している。これは非常に興味深いことと言えよう。

以上

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2008年11月08日

MENA(中東・北アフリカ)22カ国のビジネス環境(2009年版)


 東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。

 第13回のランキングは、World Bank(世界銀行)の一グループDoing Businessがおこなったビジネス環境に関する世界各国のランキング(Economy Rankings)2009年版についてMENA諸国をとりあげて比較しました。

* Doing Businessのホームページ:http://www.doingbusiness.org/economyrankings/

1.「Economy Rankings – Doing Business」について
「Economy Rankings – Doing Business 2009」は、世界181の国あるいは地域のビジネス環境をランク付けしたものであり、当該国・地域でビジネス活動を行う場合の難易度を知る目安になる。判定は以下の10項目について順位付けを行い、それら10項目の順位の加重平均によって総合順位(Ease of Doing Business)が決められている。

(1) Starting a Business (起業)
(2) Dealing with Licenses(許認可取得)
(3) Employing Workers(雇用)
(4) Registering Property(登記)
(5) Getting Credit(信用取得)
(6) Protecting Investors(投資家保護)
(7) Paying Taxes(徴税)
(8) Trading Across Borders(輸出)
(9) Enforcing Contracts(契約強制力)
(10) Closing a Business(事業終結)

 ランク付けの対象となった国・地域の数は181であるが、そのうちMENAは21カ国及びパレスチナ自治政府の22である。昨年までランク対象外であったバハレーン、カタル及びアフガニスタンは今回の調査で初めてランク付けされた結果、MENA22カ国の中でランク付けされていないのはリビアだけである。

2. 総合順位がMENA諸国で最も高い国はサウジアラビア
(表「ビジネス環境ランキング2009」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-13A%20Doing%20Business%202009.htm参照)
 MENA諸国の中でビジネス環境が最も良い(Ease of Doing Business)とされているのはサウジアラビアであり、同国の世界順位は16位である。 サウジアラビアについでMENAで二番目に高い評価を受けた国はバハレーン(世界順位18位)であるが、同国は今回新たにランク付けされた国の一つである。以下、MENA3位はイスラエル(世界順位30位)、4位カタル(同37位)、5位UAE(同46位)、6位クウェイト(同52位)、7位オマーン(同57位)と続き、イスラエルを別にすれば湾岸産油国が上位を独占している。8位、9位はそれぞれトルコ(世界順位59位)、チュニジア(同73位)であり、この9カ国が世界でも上位グループに入っている。

上記以外のその他MENA12カ国、1組織(パレスチナ自治政府)はビジネス環境としては世界の下位グループにとどまっている。それらを順に列挙すれば10位のイエメン以下、レバノン、ヨルダン、エジプト、モロッコ、パレスチナ自治政府、アルジェリア、シリア、イラン、スーダン、イラク、モーリタニア、アフガニスタンとなる(上述のとおりリビアはランク付けされていない)。MENA最下位グループのスーダン、イラク、アフガニスタンは国内の治安が不安定で行政機構が充分な機能を発揮していないことがビジネス環境の評価を低くしていると考えられる。またシリア、イランのように米国の経済制裁を受けている国は信用取得、投資家保護などの評価が低いためである。

 本調査ではMENA諸国の中でビジネス環境の良いベストスリーにサウジアラビア、バハレーン、イスラエルがランクされており、外国企業の進出が多いトルコ或いは近年ビジネスマンの評価が高いUAE(ドバイ)よりも上位にあり、実際の企業進出やビジネスマンの人気度とは若干趣を異にしている。その理由としては調査項目が許認可取得、登記、投資家保護など法制度的な側面に重点が置かれており実際に制度の運用が円滑に行われているかどうかの評価が不足していること、及び日常的にビジネスを行うための必須条件である治安の安定或いは働きやすさ等の要素が調査対象となっていないことに原因があると考えられる。

従って本ランキングは形式的な面におけるビジネス環境の良否を判定したものと受けとめるべきであろう。そのような事情を理解した上で、調査対象の10項目のうちの主なものについてMENA各国のランクを概観すると以下の通りである。
 
3.主な調査項目毎のランク
(表「ビジネス環境ランキング2009」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-13A%20Doing%20Business%202009.htm参照)
(1)Starting a Business (起業)
 トップはアフガニスタン(世界順位22位、以下同じ)、ついでイスラエル(24位)、サウジアラビア(28位)、チュニジア(37位)、エジプト(41位)、トルコ(43位)の順である。総合順位では最下位のアフガニスタンが本項目でMENAトップとされているのは奇異な感が否めない。一方低いランクにとどまっているのはイラク(175位)、パレスチナ自治政府(166位)、モーリタニア(143位)などアルジェリア(141位)などがある。

(2)Employing Workers(雇用)
 世界順位24位のオマーンがMENAでは最も高いランクである。これに続くのがバハレーン(世界順位26位)、アフガニスタン(同30位)、クウェイト(43位)、サウジアラビア(45位)、UAE(47位)、ヨルダン(52位)となっている。逆に順位が低いのはモロッコ(168位)、イラン(147位)、スーダン(144位)などである。

(3)Getting Credit(信用取得)
 イスラエルは世界順位が第5位であり、信用取得に関してはMENAトップである。イスラエルに続くのがサウジアラビア(59位)、ついでUAEの68位である。MENAの信用取得ランクではイスラエルがずば抜けている。

(4)Paying Taxes(徴税)
 この項目の世界順位はカタルが2位、UAE5位、サウジアラビア7位、オマーン8位、クウェイト9位、バハレーン15位とGCC6カ国がMENAトップを独占しており、また世界的にも最高レベルに評価されている。これら産油国は個人所得税が免除されているほか法人税も非常に低い。この点がビジネス環境として高く評価されているようである。一方イスラエルは世界77位であり税負担のレベルがGCC産油国よりかなり高い。

(5)Closing a Business(事業終結)
 事業を終結する場合の難易度については、カタルが世界31位であり、MENA地域では最も高い評価を得ている。これに続くのがチュニジア(同32位)、イスラエル(同39位)、アルジェリア(49位)、サウジアラビア(57位)である。

4.2009年版と2008年版の比較
(表「ビジネス環境ランキング(2009 vs 2008) http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-13B%20Doing%20Business%202009%20vs%202008.htm参照」
 今年と昨年のランクを比較すると、MENA1位は2年連続してサウジアラビアである。しかも同国の世界ランクは昨年の23位から16位にアップしておりビジネス環境に対する評価が急激に上がっている。昨年MENA2位であったイスラエルは、今年新たに世界18位にランクされたバハレーンに押し下げられ今回は3位となった。

 昨年より順位を上げたのはUAE(MENA順位6位→5位、世界順位68位→46位)である。チュニジア、イエメン、エジプトはMENA順位に変わりはないが、今年新たにランク付けされたバハレーンおよびカタルが上位にあり、これら3カ国は実質的にランクアップしていると言える。ちなみにチュニジアとイエメンの世界ランクはそれぞれ88位→73位、113位→98位と大きく上昇している。

 逆に順位を大きく下げたのはイエメン(MENA順位7位→12位、世界順位85位→99位)のほかレバノン、パレスチナ自治政府などがある。またクウェイトは世界順位が40位から52位に下がっており、またオマーンも同じく昨年の49位から今年は57位に落ちている。GCC諸国のなかでも順位を上げたサウジアラビアおよびUAEとは明暗を分けた形である。

以上

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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