MENA
2018年11月07日
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0455MenaRank15.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
(MENAトップはイスラエル!)
2.MENA16カ国の世界競争力ランキング
(表http://menarank.maeda1.jp/15-T01.pdf 参照)
2018年競争力ランキングではMENA19か国のうち16カ国がランク付けされている。MENAトップはイスラエルで同国の世界順位は20位である。同国は昨年に引き続きMENAトップであるが、世界順位は昨年の16位から4ランク下がっている。
イスラエルに続くMENA2位はUAEであるが、世界ランクは27位であり昨年の17位から10ランク落ちている。MENA3位から7位まではカタール(世界ランク30位)、サウジアラビア(同39位)、オマーン(同47位)、バハレーン(同50位)、クウェイト(同54位)と続いており、2位から7位まではGCC諸国が占めている。昨年の世界ランクと比較するとオマーン以外は全て順位が低下している。このようにMENA各国の多くで世界ランクが下がったのは、今年から競争力の評価方法が大きく変わり、「アイデア創造」、「起業文化」などの項目が取り入れられたことが、MENA各国に不利に働いたためと考えられる。
MENA8位以下の国々とその世界ランクはトルコ(世界61位)、ヨルダン(同73位)、モロッコ(同75位)と続きレバノン、チュニジア、イランが世界80位台、アルジェリア及びエジプトが世界90位台に入っている。世界89位のイランは昨年の69位から大幅にランクが落ちている。イエメンは世界140か国中の139位と最低のランクである。
因みに世界ランク1位は米国であり昨年の2位からトップに躍り出ている。昨年1位のスイスは今年4位である。日本はスイスに次ぐ世界5位であり昨年の世界9位から4ランクアップしている。中国は世界28位であり、前年の27位とほぼ同じである。米国、日本のランクアップは競争力評価方法の変更が影響したものと見られる。
(続く)
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前田 高行 〒183-0027
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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2018年11月05日
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0455MenaRank15.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)
アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、
これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム協力機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。
第15回のランキングは、「世界経済フォーラム」(World Economic Forum, 略称WEF)が発表した「Global Competitiveness Report 2018」(世界競争力レポート)についてMENA諸国をとりあげて比較しました。
* WEFホームページ:
* https://www.weforum.org/reports/the-global-competitiveness-report-2017-2018
1.「世界競争力レポート」について
「世界競争力レポート(Global Competitiveness Report)」は、毎冬スイスで開催される「ダボス会議」の主催者として世界に名を知られている「世界経済フォーラム」が2001年から毎年発表しているレポートであり今回で第18回目となる。第1回レポートの対象国は75カ国であったが、その後対象国は増え今回は140カ国となっている。MENAの対象国は16カ国であり、評価対象外となっている国はリビア、シリア、イラク及びパレスチナ自治政府である。
「世界競争力レポート」の総合的な競争力ランキングはコロンビア大学のザビエル・サラ=イ=マーティン教授が開発し2004年に導入された世界競争力指数(Global Competitiveness Index, GCI)が用いられている。GCIは競争力に関する12の分野をもとに設計されており、世界の国々のすべての発展段階における競争力の全体像を示している。
12分野とは、①制度機構(Institutions)、②インフラ(Infrastructure)、③情報通信技術(ICT adoption)、④マクロ経済安定性(Macroeconomic stability)、⑤健康(Health)、⑥技能(skills)、⑦製品市場(Product market)、⑧労働市場(Labour market)、⑨金融システム(Financial system)、⑩市場規模(Market size)、⑪ビジネス・ダイナミズム(Business dynamism)及び⑫イノベーション力(Innovation capability)である。なお今年は評価方法をこれまでと大きく変更しており、その結果、MENAは殆どの国が昨年より世界順位を下げている一方、米国、日本などは順位がアップしている。
(続く)
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2018年10月31日
5.世界および主要地域・国のGDP成長率の推移(2016~2020年)
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-11.pdf 参照)
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-04.pdf 参照)
(世界の平均成長率は3%台後半で推移、中国は6%台を維持!)
(1)世界および主要な地域・国
2016年(実績)から2020年(予測)までの5年間の経済成長率の推移を見ると世界全体では3%台で推移しており今年及び来年は3.7%である。
地域別で見ると2016年に4.9%の成長率を達成したASEAN-5か国はその後も他の地域を大幅に上回る成長率を示し、今年及び来年は5.3%及び5.2%と予測されている。産油国を多く抱えたMENA地域は石油価格によって影響を受けやすく2016年の5.1%が2017年には一転して2.2%に急落、その後は穏やかな成長路線に戻り、2020年には3.0%になると予測されている。
日本の成長率は2016年の1.0%が2017年には1.7%に上昇したが、2018年以降、2020年までは1.1%→0.9%→0.3%と連続して低下する見通しである。日本の成長率は以下に述べるとおりインド、中国にははるかに及ばず、米国、ドイツなどと比べても見劣りする低い水準にとどまっている。
米国の経済は先進国の中でも特に好調であり5年間を通じてほぼ2%台の成長を維持し、特に今年及び来年は2%台後半の成長率が見込まれている。中国は2016年から2020年までの5年間を通じて6%台の高い成長が続くと見られているが、その成長率は2017年の6.9%から年々低下し来年は6.2%と予測されている。これに対してインドは5年間で7.1%(2016年) →6.7%(2017年) →7.3%(2018年) →7.4%(2019年) →7.7%(2020年)と2017年以外は中国の成長率を上回り、2017年を除き毎年7%以上の高い成長を維持している。ロシアは2016年(▲0.2%)はマイナス成長に陥ったが、2017年以降はプラス成長に転じ、2019及び2020年は1.8%の成長率が見込まれている。
(成長率急低下のトルコ、暗雲たれこめるイラン!)
(2)MENA諸国
2018年のGDPがMENA最大のサウジアラビアは原油価格下落の影響を受けて2017年は▲0.9%のマイナス成長に陥った。今年はプラス成長に戻り2020年まで2%前後の成長が見込まれている。サウジアラビアに次ぐMENAのGDP大国トルコは2016年3.2%→2017年7.4%→2018年3.5%と高成長を続けてきたが、来年(0.4%)及び再来年(2.6%)は成長が鈍化する見通しである。
サウジアラビアを含むGCC6か国の平均成長率は2.9%(16年)→0.2%(17年)→2.5%(18年)→3.4%(19年予測)→2.9%(20年予測)と2017年を底に回復すると予測されている。同じ産油国でもイランは2016年には12.5%の高い成長を達成したが、2018年、2019年は2年連続してマイナス成長に陥り、2020年にようやく1.1%のプラス成長に回復する見通しである。
(完)
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2018年10月30日
(MENAで断トツのカタール!)
4.2018年の一人当たりGDP
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-10.pdf 参照)
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03.pdf 参照)
日本の一人当たりGDPは40,106ドル、米国は62,518ドル、ドイツは48,670ドルである。米国は日本の1.6倍、ドイツは1.2倍である。また韓国は32,046ドルであり、米国の2分の1、日本の8割である。BRICsと呼ばれる有力新興国のロシア、中国、インドはそれぞれ10,950ドル、9,633ドル、2,016ドルである。インドは今年7.3%、来年7.4%と中国を上回る高い成長率が見込まれているが(上記1. 2018/2019年の経済成長率参照)、一人当たりGDPはまだまだ低く、中国の5分の1、日本の20分の1、米国の30分の1に過ぎない。
MENA諸国の一人当たりGDPは各国間の格差が極めて大きい。LNGの輸出で潤うカタールの一人当たりGDP67,818ドルは米国をしのぎ日本の1.7倍で世界のトップクラスである。MENAで一人当たりGDPが1万ドルを超える国はカタールのほかUAE(41,476ドル)、イスラエル(41,180ドル)、クウェイト(31,916ドル)、バハレーン(26,532ドル)、サウジアラビア(23,187ドル)、オマーン(19,170ドル)及びレバノン(12,454ドル)の8か国である。
上位7カ国のうちイスラエルを除く6か国はGCC諸国であり、石油あるいは天然ガスの恩恵を受けていることがわかる。特に6か国の中で人口がバハレーンに次いで少ないカタールは他を大きく引き離している。GCC6か国の平均一人当たりGDPは35,017ドルに達する。
しかし同じ産油国でありながらイラン、イラク、アルジェリアなどは一人当たりGDPが5千ドル前後であり、GCCと大きな格差がある。MENAで最も貧しいのはイエメンであり同国の一人当たりGDP(926ドル)は実にカタールの70分の1にとどまっている。
なお一人当たりGDPは各国のGDP総額を人口数で割ったものであるが、IMF統計における計算の母数となる人口についてGCC諸国の場合特に注意すべき点がある。例えばカタールの人口は約278万人(WEO10月版による)で同国の一人当たりGDP67,816ドルは同国のGDP(1,880億ドル。前項参照)をその人数で割ったものである。しかし同国人口のうち80%以上は出稼ぎ労働者が占めており、カタール国籍を有する自国民は50万人足らずと言われる。通常、統計上の人口は国籍を有する者のみが対象で一時的な出稼ぎ労働者は含まないが、カタールの一人当たりGDPには出稼ぎ労働者も含まれており実態を正確には表していないと言える。このことは同じように外国人比率が高いUAE或いはクウェイトについても言えることであり、3分の1が外国人であるサウジアラビアの場合も程度の差はあれ同様である。
このような要素を加味してGDPを算出した統計は見当たらないが、カタール、UAE、クウェイトの実際の一人当たりGDPはIMF公表数値の数倍に達すると考えられ、これら湾岸産油国の一人当たりGDPが世界のトップクラスであることは間違いない。
(続く)
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2018年10月29日
(米国と中国の2カ国だけで世界のGDPの4割!)
3.2018年の各国のGDP (Current Price)
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-09.pdf 参照)
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)
IMFによれば今年の世界のGDP(at Current Price)総額は85兆ドルである。地域別ではEUが19兆ドル、全体の22%を占めている。またASEAN5か国は2.4兆ドル(全体の2.8%)、MENA地域は3.5兆ドル(同4.1%)である。
国別では米国が世界トップの21兆ドルで全世界に占める割合は24%、同国一国だけで世界のGDPの4分の1を生み出している。米国に次ぐGDP大国は中国の13兆ドルであり世界全体の16%を占めている。この2か国が世界でも突出している。日本は5.1兆ドルであるが、米国の4分の1あるいは中国の4割にとどまっている。EUの経済大国ドイツのGDPは4兆ドルであり、EU全体の5分の1を占めている。その他の主な国を見るとインドは2.7兆ドル、韓国1.7兆ドル、ロシア1.6兆ドルなどである。
MENA18カ国(シリアを除く)の中で2018年のGDPが最も大きい国はサウジアラビアの7,700億ドルであり、トルコが7,140億ドルで続いている。この2カ国がMENA全体に占める比率はそれぞれ19%と17%であり、両国はMENA諸国の中では突出している。第3位はUAEの4,330億ドル、第4位イラク(4,300億ドル)はいずれもトルコ或いはサウジアラビアの6割程度にとどまっている。
5位以下11位まではイスラエル(3,660億ドル)、エジプト(2,490億ドル)、イラン(2,310億ドル)、アルジェリア(1,880億ドル)、カタール(1,880億ドル)、クウェイト(1,450億ドル)、モロッコ(1,180億ドル)であり、以上11カ国が年間GDP1千億ドルを超える国々である。UAE、カタール、クウェイトなど人口の少ない産油国がイラン、イラクなど地域の大国とそん色のないGDPを誇っている。
GDPが1千億ドル未満の国は、オマーン(820億ドル)、レバノン(570億ドル)、リビア(430億ドル)、ヨルダン(420億ドル)、チュニジア(420億ドル)、バハレーン(390億ドル)、イエメン(290億ドル)である。MENAでGDPが最も小さいイエメンはサウジアラビアの30分の1である。
(付)2018年のGDP世界上位国とMENA)
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-12.pdf 参照)
2018年のGDPの世界ベストテンは第1位が米国、第2位中国であり、以下3位日本、4位ドイツ、5位英国と続き6位から10位まではフランス、インド、イタリア、ブラジル及びカナダの各国である。
MENA諸国ではサウジアラビアが世界18位に入っており、トルコも19位にランクされている。このほかのMENA諸国は20位以下であり、世界50位以内に入っているのはUAE(世界29位)、イラン(世界30位)、イスラエル(同34位)、エジプト(同45位)、イラク(同50位)の5か国である。
(続く)
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