2018年11月15日
(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0455MenaRank15.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
4.MENAの分野別競争力
冒頭に触れた通り世界競争力指数は「制度機構」から「イノベーション力」まで12の分野について世界140カ国を順位付けている。分野毎のMENA各国の世界順位は概略以下のとおりである。
(表http://menarank.maeda1.jp/15-T03.pdf 参照)
(1)
制度機構(Institutions)
MENAトップはUAEで世界順位は19位であり、同国に次ぐのはイスラエル(世界26位)である。MENA3位以下は世界30位台にカタール(同31位)、オマーン(同36位)、サウジアラビア(同39位)が並んでいる。さらにバハレーンが42位であり、これにヨルダン、モロッコ及びクウェイトを加えた9カ国が世界140カ国の上位グループに入っている。9カ国中の6カ国はGCC諸国であり、MENA地域ではGCCが高い競争力を有している。MENA3大国のトルコ、エジプト及びイランの世界順位はそれぞれ71位、102位、121位である。
(参考:日本20位、米国13位、中国65位)
(2)
インフラ(Infrastructure)
UAEは世界15位であり評価が高い。これに次いで世界20位台にイスラエル(20位)、オマーン(24位)、カタール(26位)の3か国がリストアップされている。さらにMENA5位以下はバハレーン(世界30位)、サウジアラビア(同40位)と続き、50位台にはトルコ、クウェイト、モロッコ、エジプトの各国が続いている。
(参考:日本5位、米国9位、中国29位)
(3)
情報通信技術(ICT adoption)
ICTの分野ではUAE(世界6位)及びカタール(同9位)が飛び抜けており、バハレーン(同38位)、イスラエル(同39位)との格差は大きい。他のGCC諸国はサウジアラビアが54位、オマーン61位、クウェイト62位である。またトルコは71位、イラン80位、エジプトは100位である。
なおこの分野では中国がわずかながら米国を上回っている。
(参考:日本3位、米国27位、中国26位)
(4)
マクロ経済の安定性(Macroeconomic stability)
この分野ではUAE、サウジアラビアおよびクウェイトが世界1位に並んでいる。世界有数の産油国であるこれら3カ国は堅調な石油価格のおかげで財政が安定していることが高く評価されたものと思われる。同じGCCの天然ガス生産国カタールは世界40位と前記3か国に後れを取っているが、これは同国がUAE、サウジアラビアなどの経済封鎖を受けていることが影響しているものと見られる。
MENA諸国の中でも非産油国は世界ランクが非常に低く、トルコは116位、イラン117位であり、エジプトは135位と世界140カ国の最低ランク圏に位置づけられている。またGCC加盟国ではあるが、非産油国のバハレーンは財務状態が極めて悪くこの分野の世界ランクは119位とされている。
日本、米国、中国はいずれもこの分野では世界ランクが低く、また日本は中国を下回っている。
(参考:日本41位、米国34位、中国39位)
(5)
健康(Health)
健康分野のMENAトップはイスラエル(世界11位)で、これに続くのがレバノン(世界37位)である。この分野ではGCC各国の世界ランクは高くなく、クウェイトの世界38位がトップであり、カタール(同40位)、サウジアラビア(同64位)、オマーン(65位)、バハレーン(74位)である。他の項目で他のGCC諸国を大きく引き離しているUAEのランクは世界79位と、GCCの中では最も低い。 (参考:日本1位、米国47位、中国44位)
(6)
技能(Skill)
この分野ではイスラエルが世界14位と高い評価を受けており、これに続くバハレーン(世界28位)との格差は大きい。MENA3位以下にはサウジアラビア、オマーン、カタールが世界30位台に並び、UAEは世界53位である。地域の大国トルコ、イラン、エジプトの順位はそれぞれ77位、91位、99位である。
(参考:日本26位、米国3位、中国63位)
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2018年11月14日
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(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
3-2 MENA3カ国と米国・日本・中国の比較(2014年~2018年の推移)
MENAのサウジアラビア、トルコ、UAE3カ国と米国、日本、中国の過去5回の競争力順位を比べてみる。
(図http://menarank.maeda1.jp/15-G01.pdf 参照)
米国の2014年の順位は世界3位であったが、5年間の順位は3位→3位→3位→2位→1位であり、毎回高い競争力を維持するとともに年々その地位がアップ、今回は世界1位に選ばれている。これに対して日本は6位→6位→8位→9位→5位と10位以内を維持しており今回は過去5年間で最高のランクである。
UAEは2014年は世界12位であり、その後の3年間は若干ランクが落ちたものの20位以内をキープしていた。しかし今年はランクが大幅に下落し27位に下がっている。その結果中国との格差がなくなった。因みに中国は5年間を通じて27、28位である。UAEと同じGCCの産油国であるサウジアラビアは2014年は24位であり、中国を上回っていたが、その後は毎年ランクを下げ、2016年には中国に追い抜かれて29位にとどまり、さらに今回は世界39位に陥落している。
トルコの場合2014年の順位は45位であったが、その後51位→55位→53位と3年連続で50位台にと染まっていた。しかし今回(2018年)は61位に下落している。国内経済は安定しているが、隣国シリアの内戦が影を落としており、また米国による経済制裁など対外的な問題を抱えていることがトルコの競争力低下の要因の一つであると思われる。
(続く)
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2018年11月13日
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(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
3.過去5回の順位の推移
3-1 MENA各国の順位の変遷(第14回~第18回)
(表http://menarank.maeda1.jp/15-T02.pdf 参照)
第14回(2014年)から第18回(2018年)までの競争力ランクの推移を見ると、第14回から第16回まではUAEとカタールが連続して世界20位以内に入り、両国で毎年MENAのトップを競っていた。昨年の第17回ではUAEは引き続き20位以内にとどまったが、カタールは25位に落ち、替わってイスラエルがUAEを抜いて16位となりMENAトップの座についた。今年の第18回では前項で述べた通り3か国は一斉に順位を下げ、イスラエルはかろうじて20位になったものの、UAEは27位、カタールも30位に転落している。
これら3カ国に続くのがサウジアラビアであるが、同国は第14回の世界24位以降、毎年連続して順位を下げ今回は世界39位にとどまっている。GCC6カ国の中で過去3年間で唯一順位を上げているのがオマーンである。同国の2014年の世界順位は46位であったが、その後2年連続で順位が落ち2016年には66位までさがった。しかし2017年には62位に回復、今回(2018年)は一挙にランクを15位上げ世界47位と5年前の状態に戻している。バハレーンは40位台を維持し続けてきたが今回は50位にランクを下げ、またクウェイトは2015年の世界34位をピークに4年連続で順位を下げ、今回は5年間で最も低い世界54位となっている。このようにGCC6カ国はいずれも今年の順位が5年前を下回っているもののMENAの上位を独占している。
GCCとイスラエルに次ぐ競争力を維持しているのはトルコであり、2014年以降今回までの世界順位の推移は、45位→51位→55位→53位→61位である。またヨルダンは64位→64位→63位→65位→73位、モロッコは72位→72位→70位→71位→75位とそれぞれ世界60位~70位台を維持している。
5年間を通じて競争力の調査対象国数は137~144カ国でありイスラエルからトルコまでの8カ国は5年間を通じて世界の上位クラスに入っている。上記以外の主な国の順位の変遷を見ると、イランは83位→74位→76位→69位→89位であり昨年69位まで上げた順位が今年は一挙に89位に下落している。またエジプトは119位→116位→115位→100位→94位と、昨年まで万年100位以下であったが、今回は94位にアップし、5年前に比べるとランクが大幅に上昇している。
(続く)
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